土地とは異なり、マンションなどの建物は時間の経過とともに不動産としての価値が劣化します。
そして、マンションの場合には、「築20年を経過したタイミングで資産価値が大幅に下落する」と言われているので、築30年のマンションについて”不動産としての資産価値”を全面的にアピールして売却を行うのは簡単ではないのが実情です。
もっとも、資産価値が下落するからといって居住が不可能になるというわけではありません。実際、耐震構造などの技術が進化していることから、築30年、築40年のマンションも充分住むことができます。
そこで今回は、築30年を超えるマンション売却を満足のいく形で成功させるためのコツを紹介します。ポイントを押さえれば築30年のマンションでも高値で売却できる可能性は残されているので、ぜひ最後まで参考にしてください。
目次
- 1 築30年のマンションでも買主は見つかる
- 2 築30年のマンション売却のコツは6つ
- 3 築30年のマンション売却を成功に導く注意点は2つ
- 4 築30年のマンション売却は信頼できる不動産業者と戦略を練ろう
築30年のマンションでも買主は見つかる
まずは、築30年のマンションでも充分に売却対象になるという点を押さえていきます。
「古いマンションだから売れるはずはない」という誤解を払拭して、前向きな気持ちでマンション売却に向き合いましょう。
築30年のマンションは耐用年数の範囲内
マンションには”建物耐用年数”という考え方が当てはまります。耐用年数とは、建物の寿命のこと。管理状況や構造にも左右されますが、「建物自体がいつまでもつのか」「どれくらいの期間快適に居住できるのか」の指針となる考え方です。
耐用年数には次の2つの視点に分けられ、築30年のマンションはいずれの条件も充たします。
- 法定耐用年数
- 減価償却費の算出基礎となる耐用年数のこと。一般的な居住用マンションの法定耐用年数は47年。
- 物理的耐用年数
- 実際に不動産物件に居住できる耐用年数の目安のこと。環境要因にも左右されるが、一般的にはマンションの物理的耐用年数は60年が目安とされる。
つまり、築30年のマンションは法定耐用年数・物理的耐用年数のいずれにおいても範囲内だということです。資産価値は下落するかもしれませんが、築30年でも問題なく居住できる物件は多いので、売却の可能性は決して低くありません。
築30年の中古マンションの市場動向を確認しよう
「築30年でもマンション売却できる」とはいっても、せっかく売却する以上は、できるだけ高い価額での成約を実現したいもの。その一方で、中古マンションの売却価格を左右する資産価値は年々下落するという実情があります。
そこで、築30年のマンションの売却動向を確認していきましょう。
成約される中古マンションの築年数は古くなっている
近年、中古マンションの成約状況には一定の特徴が見られます。それは、成約される中古マンションの築年数が古くなっているという点です。
次の表は、首都圏の中古マンションの成約状況を年度別に表したものです。
年度 | 成約された中古マンションの平均築年数 |
---|---|
2012年 | 18.97年 |
2013年 | 19.27年 |
2014年 | 19.63年 |
2015年 | 20.13年 |
2016年 | 20.26年 |
2017年 | 20.70年 |
2018年 | 21.00年 |
2019年 | 21.64年 |
2020年 | 21.99年 |
参考:首都圏不動産流通市場の動向(2020年)(東日本レインズ)
ここから分かるように、売却される中古マンションの平均築年数は近年どんどん古くなっており、しかも、その平均築年数は約22年です。つまり、築30年の物件は平均値よりは古いものの、中古マンション市場の圏外というわけではありません。
これは、1981年以降適用されている新耐震基準により、市場に流通している中古マンションの品質が向上していることが1つの原因だと考えられます。
したがって、築30年のマンション売却は充分可能です。
中古マンションの資産価値は年々下落する
つづいて、中古マンションの資産価値がどの程度下落していくのかを確認していきましょう。
次の表は、首都圏における中古マンション市場を築年数から分析したものです。
築年数 | 価格 | 面積 | ㎡単価 |
---|---|---|---|
築0年~5年 | 5,883万円 | 66.73㎡ | 88.16万円 |
築6年~10年 | 5,071万円 | 67.37㎡ | 75.28万円 |
築11年~15年 | 4,484万円 | 71.34㎡ | 62.86万円 |
築16年~20年 | 4,174万円 | 72.65㎡ | 57.46万円 |
築21年~25年 | 3,202万円 | 68.22㎡ | 46.93万円 |
築26年~30年 | 1,884万円 | 60.58㎡ | 31.09万円 |
築31年~ | 1,904万円 | 57.14㎡ | 33.33万円 |
参考:築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)(東日本レインズ)
ここから分かるように、中古マンションの価格は築20年・築30年のタイミングでがくんと下落幅が大きくなります。特に、築30年の段階では、築浅物件の約30%相当の成約額です。
つまり、築30年のマンションは資産価値を全面にアピールするのは難しいということが分かります。したがって、築30年超のマンション売却を企図するのなら、資産価値とは違ったアプローチで戦略を立てるのが重要です。
築30年のマンション売却のコツは6つ
それでは、一般的には市場価値が落ちているといわれる築30年のマンション売却を成功させるコツについて見ていきましょう。
具体的には、次の6つのポイントです。
- 信頼できる不動産業者を選ぶ
- 相場との乖離がないように事前調査する
- リフォーム・ハウスクリーニングで清潔感を出す
- 付加価値を提示する
- 築30年だからこその強みをアピールする
- 内覧時には丁寧に対応する
それでは、項目ごとに詳しく見ていきましょう。
築30年のマンション売却のコツ1:信頼できる不動産業者を選ぶ
築30年のマンション売却を成功させるためには、信頼できる不動産業者を選ぶのが重要です。
もちろん、マンション売却は売主個人だけで行うこともできます。しかし、そもそも不動産売却は普通のモノの売り買いとは違って手続きが特殊ですし、1回あたりの売買で動く金額も高額です。特に、築30年のマンション売却をするときには、何の工夫もしなければ資産価値の低さだけが目立って売却できないおそれがあることも見逃せません。
したがって、特に築30年のマンション売却を検討する際には、信頼できる不動産業者を選ぶようにしましょう。
築30年のマンション売却に適した不動産業者を選ぶなら、次のポイントを押さえるのがおすすめです。
- 中古マンションの売却ノウハウがある業者を選ぶ
- 1件ごとの特徴を踏まえて丁寧に営業・広告活動をしてくれる業者を選ぶ
- 付帯サービスの充実度も欠かさずチェックする
- 不動産業者の業態・契約内容にも配慮して業者選びをする
その他、不動産業者選びのコツについては、以下のリンク先で詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
築30年のマンション売却はノウハウのある業者を選ぶのがおすすめ
築30年のマンション売却は、中古マンション売却のノウハウを蓄積している不動産業者に任せましょう。
実は、不動産業者ごとに得意・不得意があります。たとえば、新築戸建てをメインに取り扱っている業者に中古マンションの売却を依頼しても売却までの流れが効率的に進まないのは明らかです。
特に、築30年のマンションの場合には、売却時に表層リフォームやリノベーションが選択肢に入ることになります。すると、ノウハウの豊富な業者の方が幅広い選択肢を売主に提示できるはずです。
したがって、不動産業者を選ぶときには、かならず業者のHPや口コミなどを参考にして、築年数の古い中古マンションの販売実績が豊富な業者に注目しましょう。

不動産業者を選ぶときには、チラシや広告を参考にするのも間違いではありませんが、まずはインターネットで簡単にアクセスできる”一括査定サイト”を利用するのがおすすめです。一度に複数の業者を選び出すことができますし、各社の実績やアピールポイントを踏まえながら、同時に査定額を見比べられるでしょう。
1件ごとの特徴を踏まえて丁寧に営業・広告活動をしてくれる業者を選ぶ
築30年のマンション売却を任せるなら、1件ごとの特徴を踏まえて丁寧な営業・広告活動を展開してくれる不動産業者を選びましょう。
なぜなら、新築・築浅中古物件やブランド力のあるエリア地域の物件なら客観的な条件面等を掲載するだけで買い手がつく可能性が高いですが、築30年の物件については売主側から積極的な広告・営業活動を行わなければ買い手の関心を集めることができないからです。
たとえば、一括査定サイトなどを利用して依頼する業者に目星をつけたのなら、訪問査定の際に業者や営業担当者の雰囲気を把握してください。話口調や熱心さなど、対面でしか判断できないことも少なくないはずです。
また、どのような形で営業活動をかけるのか、築30年のマンション物件に対してどのようなアプローチで顧客を集めるのかなど、今後の展望についても話を聞いてみましょう。

実は、築年数にかかわらず、不動産売買の成功のカギを握るのは営業担当者といっても過言ではありません。売却を依頼してから成約に至るまでの数カ月~1年以上の期間との付き合いになるわけですから、売主のストレスになるような担当者がついてしまうと、こちら側のニーズなども伝えにくいはず。「どこに頼んでも同じだろう」と油断せず、しっかりと会社・人を見極める姿勢を大切にしてください。
付帯サービスが充実している不動産業者を選ぶ
築30年の中古マンション売却を依頼する業者を選ぶのなら、付帯サービスの充実度にも注目しましょう。
特に、築30年のマンション売却を検討する場合には、希望売却時期までに買い手が見つからなかったり、物件のメンテナンスに都度コストが発生したりする可能性があります。修繕積立金の負担も軽くはないでしょう。
不動産業者のなかには、次のような付帯サービスを提供してくれる場合があるので、ご自身の物件売却に役立ちそうなものがあるかご確認ください。
- 売却保証制度
- 売却希望時期までに買主が見つからなかったときには、不動産業者が事前に予定した金額でマンションの買取をしてくれる。
- ホームインスペクション(建物検査)
- 給排水管の状態や雨漏りなど、劣化損傷が激しい部分のチェックをしてくれる。
- 立て替え払い制度
- 希望時期までに入金されない場合に、資金繋ぎのために業者が諸費用を立て替えてくれる
このような付帯サービスを利用すれば、売主側で負担しなければいけないコストを大幅に削減することができるはず。築30年のマンション売却には”途中で何が起こるか分からない”というデメリットもあるので、充実した付帯サービスで臨機応変に対応するようにしましょう。
不動産業者を選ぶときには業態・契約内容にも配慮しよう
築30年のマンション売却を希望する場合には、パートナーとして選ぶ不動産業者の業態・どのような契約内容を締結するのかにも注意してください。
なぜなら、一言に「不動産業者」とはいっても、実態や契約内容によって依頼できる内容や売却までの流れが大幅に違ってくるからです。
まずは買取業者・仲介業者のどちらかを選ぶ
まずは、どの業態の不動産業者に売却を依頼するのかを決めましょう。
不動産業者は、大別すると次の2つに分けられます。
- 買取業者
- 不動産業者が直接物件を買い取ってくれる。買主探しに時間をとられないので入金までがはやい。
- 仲介業者
- 不動産業者が買主を探してくれる。希望条件での買取を実現しやすいので比較的高値で売却しやすい
一般的には、「はやく売りたい売りたいなら買取業者」「高く売りたいなら仲介業者」という選び方になりますが、築30年のマンション売却の場合には、”売却可能性”という視点を欠かすことができません。
なぜなら、築30年のマンションでも一定の市場価値は認められるものの、やはり築浅物件に比べると買い手が見つかりにくいという現実からは目を背けられない以上、「買主が見つからなかったときにどうするのか」というリスクマネジメントは意識しておくべきだからです。
この点、買取業者に依頼をすれば(比較的低額になるとはいえ)かならず築30年のマンションは売却できますし、仲介業者に依頼する場合でも売却保証制度が備わっているところならば”売却できない”という事態を避けることができます。
したがって、築30年のマンションを売却するのなら、業態・付帯サービス・物件の状況からみた売却可能性などを総合的に考慮して、買取業者・仲介業者のいずれに依頼するのかを決めましょう。
なお、買取業者・仲介業者については、以下のリンク先において詳しく解説しています。あわせてご参照ください。
仲介業者に依頼するなら媒介契約の内容に留意する
仲介業者に依頼をする場合には、業者との間でどのような契約内容(媒介契約の種類)を締結するのかにも注意しましょう。
一般的に、仲介業者との間で結ぶ媒介契約は次の3種類に区別されます。
- 専属専任媒介契約
- 1社の不動産業者にしか依頼できない。直接取引も不可。
- 専任媒介契約
- 1社の不動産業者にしか依頼できない。直接取引は可。
- 一般媒介契約
- 複数の不動産業者に同時並行で依頼できる。直接取引も可。
築30年のマンション売却では、どの媒介契約を締結するかが非常に重要になります。
たとえば、「できるだけ幅広い範囲から買主を探したい」と希望して一般媒介契約を締結したとしましょう。確かに、複数業者に依頼できる分、各業者が抱えている潜在的な買主がターゲットになるので、売却できる可能性は高くなりそうにも思えます。
しかし、一般媒介契約では、どれだけ営業活動に力を入れたとしても、自社に仲介手数料が入ってこないというリスクがあるため、各社が率先して広告・営業活動に力を入れてくれないというデメリットがあります。
すると、売主側の積極的な営業活動が不可欠の築30年の物件を市場でアピールすることができず、結局買い手が見つからないという状況においこまれかねません。
その一方で、専属専任媒介契約なら、1社の営業活動の範囲内でしか買い手を募れないというデメリットがある反面、売却活動を引き受けた不動産業者は自社利益のために熱心に仕事をしてくれる可能性が高いという特徴があります。築30年の物件固有のアピールポイントも積極的に打ち出してくれるでしょう。
したがって、築30年のマンション売却を成功させるためには、契約後に各社が展開する営業活動・広告活動なども考慮して、適切な媒介契約を締結するのが不可欠だと考えられます。
なお、媒介契約の種類・特徴については、以下のリンク先において詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
築30年のマンション売却のコツ2:相場との乖離がないように事前調査する
築30年のマンションを売却するときには、相場価格との乖離がない売却価格を設定するのがポイント。なぜなら、立地条件・広さなどの客観的条件を前提にしてあまりに相場との違いがあると、買い手が見つからないからです。
そのためには、次の3つの方法で事前に相場をしっかりと調査するようにしましょう。
- レインズを利用して成約価格をチェックする
- 大手ポータルサイトで売出価格をチェックする
- 不動産一括査定サイトで複数業者から机上査定を受ける
それでは、相場の確認方法についてそれぞれ見ていきましょう。

相場観を確認する際には「成約価格」「売出価格」に注目するのがポイントです。成約価格とは、実際に売買契約が成立したときの価格のこと。これに対して、売出価格とは、売主側が提示している価格のことです。通常、売主が提示した売出価格をベースに交渉が進み、最終的に一定割合減額された結果、成約が成立することになります。したがって、成約価格と売出価格には差が生じる点に注意しましょう。
レインズを利用して成約価格をチェックする
REINS(レインズ)とは、国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営・管理する不動産流通標準情報システムのことです。
成約した物件の売却価格をベースに検索できるので、リアルタイムな市場傾向を知ることができます。
所在地・周辺地域・築年数・成約時期などから売却予定の築30年マンションと類似物件を探して、実際の成約価格を調査しましょう。
大手ポータルサイトで売出価格をチェックする
大手ポータルサイトを利用すれば、マンションの”売出価格”を確認することができます。
SUUMO(スーモ)・LIFULL HOME’S・at home(アットホーム)などのポータルサイトなら、レインズよりも詳細に中古物件の市場動向が分かります。特に、同一マンション内で売り出し中のものがあれば、値付けの参考になるはずです。
もっとも、大手ポータルサイトに掲載されているのは”成約価格”ではありません。売出価格通りに売却できることは稀なので、あくまでも参考程度にお考えください。

大手ポータルサイトでは、自動シミュレーションサービスを提供している場合があります。これは、マンション名などを入力するだけでAIが中古物件の売却額を自動で計算してくれるというものです。もっとも、リアルタイムのデータ解析能力に絶大な信憑性があるわけではないという点にご注意ください。
不動産一括査定サイトで複数業者から机上査定を受ける
不動産一括査定サイトを利用すれば、複数の不動産業者からの机上査定を受けることができます。
机上査定とは、マンションの築年数・立地条件などの客観的データを前提にして各不動産業者が算出する”一応の査定額”のこと。不動産業者選びに役立つだけではなく、売却価格のイメージをつかむのにも役立ちます。
もっとも、机上査定は実際に物件を見ずに計算されるものなので、訪問査定の結果、査定額は当然のように変化します。
そして、築30年のマンション売却では、いくつかのコツを押さえて机上査定額よりも高い値付けでの売却を成立させるのが目標です。マンションのメンテナンスだけではなく、信頼できるパートナーを選んで、戦略的に売却手続きを進めていきましょう。
築30年のマンション売却のコツ3:リフォーム・ハウスクリーニングで清潔感を出す
築30年のマンションを売却するときには、リフォーム・ハウスクリーニングなどによって物件の状態を高く保つのがポイントです。
そもそも、築浅物件とは違って、築30年になっている以上は、ある程度の経年劣化・傷み・汚れがついているのは仕方がありません。築30年の物件の購入を希望している人も、その点は折り込み済みです。
そのうえで、「築年数に比べて管理状態が良いか」「築30年なのに高い品質が保たれているか」という点が重視され、買主の購買意欲につながることになります。つまり、「築年数30年=古い・汚い」という先入観を払拭するのがポイントです。
したがって、築古物件を売却するときには、リフォーム・ハウスクリーニングなどを実施することで清潔感のある状態を買主にアピールすることをこころがけましょう。

不動産業者によっては、ハウスクリーニングや定期的なメンテナンスチェックを無料で対応してくれる場合があります。売主負担ではなく業者負担でコストカットにつながるので、上手に付帯サービスを活用して物件の状態を高品質に保ちましょう。
築30年のマンション売却のコツ4:付加価値を提示する
マンションだけにかかわらず、戸建てを販売するときも、「築年数」という条件を無視することはできません。つまり、築30年のマンションを売却する以上は、その築年数の古さが市場においてネガティブに評価されること自体はしっかりと受け入れましょう。
そのうえで、築30年のマンション売却を成功させるためには、築年数30年というデメリットポイントからくる低評価をカバーできるほどの付加価値をアピールすることが重要となります。
具体的には、次のようなメリットを営業・広告の段階で全面に押し出すのが効果的です。
- 立地条件(駅近・人気エリア・地位が高い・学校などの周辺環境)
- 間取りが良い
- デザイン性・希少性に優れている
このように、買い手にとって分かりやすいメリット・付加価値を提示できれば、多数あふれる不動産の売却情報のなかから買い手の興味・関心を惹きやすいと考えられます。
もちろん、不動産売却素人の売主にとって、どのような情報が買い手側の注目を集めやすいか判断するのは簡単ではありません。
だからこそ、1案件ごとの特徴を丁寧にアピールしてくれる誠実な不動産業者・営業担当者をパートナーにするのが重要だと考えられます。ぜひ、上述のポイントを押さえて、相性の良い業者にマンション売却を依頼してください。
築30年のマンション売却のコツ5:築30年だからこその強みをアピールする
築30年のマンション売却を成功させるためには、築浅物件にはない築30年だからこその独自のアピールポイントを強調するのが効果的です。
買主側から見た築30年のマンション特有のメリットは次の6つです。
- 値崩れ・資産価値の大幅下落のおそれがない
- 購入額・税金の負担が少ない
- 新耐震基準をクリアしている
- 築浅物件よりも低額でより良い居住環境が手に入る
- マンション全体の管理実態を把握できる
- 買主の好きなようにリフォームできる
昨今、不動産市場においても買主側のニーズは多様化しており、「新しい物件ほど良い」という固定観念は失われつつあります。つまり、これらの買主側のメリットをアピールすれば、一定のニーズをもった顧客層を満足させられるはずです。
それでは、築30年のマンションだからこそのメリットについてそれぞれ見ていきましょう。
築30年のマンションは値崩れ・資産価値の大幅下落のおそれがない
マンション・戸建ての建物は土地と違って経年劣化によって年々資産価値が減少しますが、下落率が大きいのは新築~築20年までの間です。
つまり、「築30年のマンションは資産価値が0になる」という特徴が、ここではメリットとして作用することになります。具体的には、築30年のマンションは大幅な値崩れの心配がないので、将来的に売却をする際にも比較的購入額に近い価額で売却できる可能性があるということです。
特に、今はリノベーション物件やDIYの流行によって、築古物件の魅力・価値が再認識している時代。資産価値の下落率が低いということは投資対象としての価値も見出せるので、買主側に積極的にアピールしやすいと考えられます。
築30年のマンションは購入額・税金の負担が少ない
築30年のマンションは購入額も固定資産税の負担も少なくて済むので、買主側の節約にも役立つというメリットがあります。
まず、築浅物件に比べて築30年のマンションの購入額がリーズナブルなのは言うまでもありません。資産価値が低くなる分、市場における売却価額が廉価になるのは当然でしょう。
次に、固定資産税とは、土地・建物に対して賦課される税金のことです。築30年の中古マンションの場合には、建物部分の資産価値が大幅に下落しているのが通常なので、これを基礎に算出される固定資産税も低額に抑えられます。
特に、固定資産税は毎年数万円~数十万円の支払い義務を課せられるもの。家計にとって大きな負担となります。これが節約できるのは買主側として大きなメリットです。
したがって、築30年のマンション売却の際には、低コスト・低維持費で不動産が手に入るというメリットをアピールしましょう。

固定資産税の算出方法は複雑です。経年減価補正率・軽減措置・負担調整率などにも左右されますし、3年ごとに固定資産税評価額が見直されるなど、確実な見通しを立てるのは簡単ではありません。したがって、買主にアピールする際には、不動産業者に丁寧に税金額を算出してもらったうえで、コストの低さを正確に伝えるようにしてください。
築30年のマンションは新耐震基準を充たした安全な物件
築30年のマンションは新耐震基準を充たしている物件が多いので、新築・築浅物件と同様に頑丈な構造の可能性が高いです。
旧耐震基準から新耐震基準に変更があったのが1981年6月。つまり、2021年現在を基準にすると、約40年前には建物に求められる耐震構造のレベルは高くなっているということです。
つまり、築30年のマンションと築浅物件とでは耐震構造にさほど大きな違いはありません(建築基準法関連法令の改正は順次行われているので、まったく同じというわけではない点にご注意ください。それでも、1981年の前後の違いは充分価値があると考えられます)。
したがって、「古い建物だから危ない」という考え方は築30年のマンションには当てはまらず耐震性を備えた物件が多いことから、適切な管理状況とあわせて安全性をアピールすることは可能です。
築30年のマンションは低額でより良い居住環境を手に入れやすい
築30年のマンションなら築浅物件に比べて低額でより良い居住環境を手に入れやすいというメリットが得られます。
たとえば、新築物件・築浅物件と同じ値段を出さなくても、築30年の物件なら買主のニーズをみたす間取りの物件が手に入りやすいでしょう。「物件の新しさ」という要素さえ諦めれば低予算で想像以上の物件に手が届くということを大きなメリットだと考える買い手は少なくはありません。住宅ローンを組むとしても、毎月の負担もかなり抑えられるはずです。
また、昨今の開発ブームでは、郊外に新築マンションが建設されることが多いため、築30年のマンションは意外と好立地に所在していることが多いという実情も。低コストでアクセス良好の物件が手に入るのは買主にとって歓迎すべきポイントでしょう。
築30年のマンションは管理実態などを把握しやすい
築30年のマンションならこれまでの管理実態などを売主から聞き取りやすいというメリットが得られます。
たとえば、マンションに居住する以上は、分譲の範囲内のことだけではなく、マンション全体の修繕計画(それにともなった修繕積立金の負担)にも責任が発生します。この点、長年居住していた売主から立て替え可能性やこれまでの修繕の経緯なども聴取できるので、今後の見立てについて具体的なイメージをつかみやすいでしょう。
また、共用部分(廊下・エントランス・ゴミ置き場・駐輪場など)の状況や管理組合の雰囲気も分かるので、入居してから想定外のトラブルや懸念にぶつかるリスクも軽減できます。
したがって、マンション全体の歴史が事前に分かる、そして、今後の展望も把握しやすいというメリットをアピールするのがおすすめです。
築30年のマンションなら買主の好きなようにリフォームできる
築30年のマンションの場合、一切の修繕・リフォームがない状況でそのまま住み続けるには傷みや劣化が気になるところです。
もちろん、売主側で事前にある程度の修繕を加えても問題はありませんが、買主のなかには「自分好みに手を加えたい」と希望する人もいるでしょう。
そこで、築30年のマンション売却では、購入後に好みの住環境にリフォームできる点をアピールするのがおすすめです。
特に、近年ではDIYやリノベーションが流行りになっています。壁紙やフローリングだけの表層リフォームや大規模なリノベーションをすれば、オリジナルの住まいを手に入れられるでしょう(もちろん、改修の範囲は許可が得られる範囲に限られます)。
築30年のマンション売却のコツ6:内覧時には丁寧に対応する
築30年のマンション売却を成功に導くためには、内覧時の対応にも注意しましょう。なぜなら、買い手側からすると「どのような人が30年間この物件に居住していたのか」という点が物件への評価に大きく関わるからです。たとえば、売主が杜撰・横柄な対応をする人だと、物件自体へのイメージも悪くなるのは当然のことだと考えられます。
したがって、購入希望者が内覧に訪れたときには、次のポイントを押さえて良い印象を抱いてもらうようにこころがけましょう。
- 内覧前にハウスクリーニングに入ってもらう
- 物件内の整理整頓をこころがける(できるだけモノを減らす)
- 水回り・壁紙など、劣化が分かりやすい箇所は念入りに清掃する
- 窓を開けて部屋全体を明るく、快適な環境にする(においにも注意)
- 新しいスリッパを用意する
- 物件の情報など、購入希望者からの質問に答えられるように事前準備をする
- エントランスやエレベーターなど、共用部分の清潔感も意識する(ゴミなどは片づけておく)
不動産業者のなかには、ホームステージング用のアイテムの無料貸し出し・内覧時のために私物の無料預かりなどの付帯サービスが整っている場合もあります。
内覧時の印象が良いほど購買意欲は高まると考えられるので、「自分が買主だったらどのようなところが気になるだろう」「どう接してもらえれば好印象だろう」と想像して、おもてなしの精神を発揮してください。

築30年のマンションを売却する以上、内覧時にはかならず物件のデメリットポイントも伝えるようにしてください。あまりに良いことばかり伝えてしまうと、逆に不信感を抱かれかねないからです。したがって、ネガティブ要素を上手にフォローしながら説明するためにも、営業担当者に同席してもらうのがおすすめです。
築30年のマンション売却を成功に導く注意点は2つ
築30年のマンションでも「築年数を超える価値がある」と買い手側に納得させることができれば高値で売却できますが、とはいえ不動産売買は”タイミング・買主との出会い”という運の要素が影響することを否めません。
特に、築30年の物件ではどうして”築年数”というデメリットポイントが原因で成約には至らない可能性も。しかし、なかなか成約に至らないとしても、次の2つの注意点は忘れないでください。
- 賃貸には出さない
- リフォーム・修繕に費用をかけすぎない
売りに出しているのに成約に至らないと、熱心な売主ほど試行錯誤してしまうものです。しかし、これらの行為によってマンション売却が成功から遠ざかることになってしまいます。
それでは、それぞれの注意点について詳しく見ていきましょう。

この他にも、マンション売却をする以上は、譲渡所得税・控除制度などの税制度についても事前に把握しておく必要があります。信頼できる不動産業者に任せれば売却後の税金のことも事前に丁寧に解説してくれるので、できれば個人で売却を行うのではなく、ノウハウを蓄積している業者に依頼をして売却を進めましょう。
賃貸には出さない
買い手がなかなか見つからないとしても、売却予定のマンションを賃貸に出すのは避けてください。
なぜなら、日本の法制度上、一度賃貸借契約を締結してしまうと借主の立場が強く保護されることになるので、簡単に出て行ってもらうことができなくなるからです。
また、賃貸に出すことによって、物件はその分かならず劣化します。敷金などで十分に補填できる保証はありませんし、賃貸に出していたこと自体が購入希望者にマイナスの印象をもたれる要因になりかねません。
さらに、賃貸に出している途中で排水管・給湯器などの設備面に不良が生じると貸主側に修繕義務が発生するので、想定外の出費を迫られることも。また、築30年の物件では簡単に借主が見つかるとも限らず、結果として空室のまま物件が宙に浮くリスクさえあります。
つまり、「賃貸に出していなかったら売却できたのに、賃貸に出してしまったがために売買が成立しなかった」という状況になりかねないということです。
したがって、将来的にマンション売却をすることが確定しているのなら、目先の家賃収入に欲を出すのではなく、売却に向けた活動にのみ集中するのが賢明だと考えられます。
リフォームに費用をかけ過ぎない
築30年のマンション売却では匙加減が難しいポイントになりますが、売主側でリフォームに着手し過ぎるのはおすすめできません。なぜなら、修繕のたびに費用がかかりますし、補修等にかかった修繕費をすべて売却価格に反映できる確証もないので、最終的には”費用倒れ”になるリスクがあるからです。
とはいえ、一切改修作業を行わなければ、購入者側の納得を得るのも簡単ではないでしょう。
そこで、どのラインまで物件の状況を整えれば市場で買い手がつく状態になるのかを業者側と相談するのがおすすめです。たとえば、壁紙やフローリングなどの表層リフォームだけで十分なのか、劣化が激しい配管まで修繕を施す必要があるのかなど、売主側としてどこまでの負担をすべきなのかを話し合いましょう。
したがって、不動産業者に依頼をするまでは最低限のメンテナンスをするにとどめ、業者とコミュニケーションをとるなかで、リフォームの程度について決めるのがおすすめです。
築30年のマンション売却は信頼できる不動産業者と戦略を練ろう
一般的には売却が難しいと言われる築30年のマンションですが、戦略次第では売主側も満足できる売却価格での成約を実現できます。
そのためには、中古マンションの売却実績・ノウハウのある業者への依頼が不可欠。最新の市場動向に精通した不動産業者に、古くなった物件のアピールポイントを見出してもらって、熱心に営業をかけてもらいましょう。
したがって、築30年のマンション売却を成功させるためには、信頼できるパートナーを見つけるのがスタートラインです。ネットの一括査定サイトなどを活用して、あなたの大切な資産の行く末を任せられる不動産業者を見つけてください。
ここまでで築30年のマンションでも十分買い手が見つかることが分かりました。もっとも、すでに資産価値が減少しているため、築浅物件と同じ目線で販売してしまうと築年数に応じた価格でしか売却ができません。したがって、築30年のマンションでもできるだけ有利に売却するための戦略を立てられるかが重要となります。