事故物件の売却相場は安い?高く売るためのポイントと売却時の注意点を徹底解説

事故物件の売却相場は安い?高く売るためのポイントと売却時の注意点を徹底解説

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「人が亡くなった不動産物件の売却相場はどの程度下がるの?」「買主は事故物件かどうかを気にするだろうから、できれば隠して売却したい…」など、所有している不動産物件で人が亡くなった場合、売却・賃貸などの不動産取引に対してどのような影響を及ぼすのかについて、不動産所有者側が不安を抱えるのは当然です。

その一方で、「事故物件には住みたくない」「売却価格・賃料が安いなら事故物件でも気にしない」「事故物件でも良いから値引きをして欲しい」など、取引の相手方にとっても、取引目的物である不動産が事故物件か否かは関心を集める重要ポイントとなっています。

このように、不動産取引の場面では、「当該物件において人が亡くなっているかどうか」が取引の成否・条件を左右する要因となるもの。当然のことながら、売却価格・取引の手続きで問題が露見することもあるでしょう。

そこで、今回は、事故物件であることが売却相場にどのような影響を生み出すのかについて解説します。あわせて、事故物件売却時の注意点、「事故物件の売却をできるだけスムーズに達成したい」と希望する売主にとって有用な事故物件専門の不動産業者についても紹介するので、最後までご一読のうえ、実際の取引にお役立てください。

洸太郎
洸太郎

「売買契約・賃貸借契約などの目的物がどのような性質を備えているか」が契約内容を構成するかについては争いがありますが、不動産という価値の高い目的物であること・人が死んでいるか否かという多くの人が気にするであろう要素であることを前提にすると、”事故物件性”を隠して取引をすること自体に問題があるのは明らかでしょう。そのため、事故物件を取引する際には事実上・ルール上の規制が及ぶことになるので、慎重に取引を進めなければいけません。

事故物件の売却相場とは

まずは、事故物件の売却相場について紹介します。

「事故物件なんだから値引きされて当然」「普通に売却するときの半分以下の価格にしかならないのでは?」など、事故物件の売却相場に対しては色々な先入観を抱いている方も多いはず。

ただ、事故物件売却の実情はそこまで深刻なものでもありません。また、事故物件の売却相場に対して画一的な基準が設定されているわけでもないということを押さえておきましょう。

そもそも”事故物件”とはどのような不動産のこと?定義・種類について

話の前提を明確にするために、事故物件がどのような不動産を指すのかについて確認しましょう。事故物件とはどのようなものかを理解する際には、不動産物件が抱えている”瑕疵”の種類(いわゆる”訳あり物件”の種別)に注目するのがポイントです。

瑕疵(かし)とは、欠点・欠陥・問題点という意味の法律用語のこと。事故物件や訳あり物件と言われる不動産は、「何かしらの瑕疵がある」状態だからこそ、事故物件・訳あり物件と呼ばれることになります。

そして、一般的に、“瑕疵”は次の3種類に区別されるものです。

  1. 物理的瑕疵
  2. 法律的瑕疵
  3. 心理的瑕疵

それでは、瑕疵の意味について、それぞれ具体的に見ていきましょう。

訳あり物件の種別1:物理的瑕疵

物理的瑕疵とは、土地・建物それ自体が物理的な欠陥・欠点を抱えていることです。

たとえば、以下の事情が不動産に存在する場合には、「物理的瑕疵」があると評価されることになります。

不動産の物理的瑕疵の具体例
・シロアリ被害
・壁のひび割れや建材の腐食
・雨漏り
・排水管や給水管の損傷、詰まり
・アスベスト、耐震強度基準不足
・土壌汚染、塩害
・地中に地中障害物(ゴミ・廃棄物・廃材など)が残存している
・地盤が緩い、地盤沈下のおそれがあるなど

このように、物理的瑕疵は目で見て明らかな場合だけではなく、外部からは見えないものも含まれます

また、たとえば、建材にアスベストを使用している場合や耐震強度基準に満たない場合など、次で紹介する”法律的瑕疵”と重複する内容が含まれる点にもご注意ください。

訳あり物件の種別2:法律的瑕疵

法律的瑕疵とは、土地・建物が法律上の問題・トラブルを抱えていることです。

スーパーで食材を購入する場合とは異なり、重要な資産価値を有する不動産それ自体及び不動産取引に対しては数々の法規制が及びます。

したがって、以下のような事情が存在する場合には、各種法規制に反する”法律的瑕疵”が存在すると判断されざるを得ません。

不動産の法律的瑕疵の具体例
消防法違反:設置義務違反・設備の劣化(火災報知器・スプリンクラー・防火扉・避難はしごなどの防災設備等)など
都市計画法違反:市街化調整区域における無許可建造物など
建築基準法違反:建物の安全基準・摂動義務・容積率・建蔽率等の各種規制違反など
文化財保護法違反:周知の埋蔵文化財包蔵地における届出義務違反など
農地法違反:権利移転や転用時に課される義務違反など

これらはあくまでも具体例でしかなく、不動産取引に対しては実際にはさらに多数の法規制が及ぶのが実情です。

また、不動産に対する各種法規制は年々改正が実施されるため、たとえば、「建物新築時は適法だったが、その後の法律・条例の改正によって”既存不適格物件”になってしまった」という場合も含まれます。

したがって、不動産を取引する際には、かならず専門業者などに依頼をして、法律違反状態がない状態で適法に取引を進められるかをチェックしてもらいましょう

なお、法律的瑕疵を含む物件の売却を検討している方は、以下のリンク先で専門業者を数社紹介しているので、ぜひご活用ください。

【全国対応】再建築不可物件を高く売却したい人におすすめの不動産買取業者14選

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2021年8月1日

訳あり物件の種別3:心理的瑕疵

心理的瑕疵とは、買主が抵抗感・嫌悪感などのネガティブな印象をもつであろうことが想定される心理的な欠陥・欠点のこと

つまり、今回のテーマである事故物件とは、心理的瑕疵が存在する不動産のことです。

事故物件・心理的瑕疵についての明確な定義はない

そもそも、心理的瑕疵とはどのようなものか、事故物件とは何を指すのかについて、法律上の定義は存在しません

あくまでも、「買主が抵抗感・嫌悪感を抱くのか」という観点から判断されるもののため、たとえば、「ある買主にとっては気になるが、別の買主にとっては気にしない」というパターンもあり得ます。

心理的瑕疵の具体例は多種多様

つまり、心理的瑕疵が存在するかどうかは、結局実際の具体的な取引の場面で問題になるもの。個人差もありますし、男性と女性で感じ方が違うという可能性もあるでしょう。

一般的には、次のような事情が存在する場合に、心理的瑕疵が存在する事故物件だと判断されることになります。

不動産の心理的瑕疵の具体例
・不動産物件内における事故死(自殺・殺人・変死・その他転落転倒などの事故死)
・不動産物件内における自然死(病死・老死・孤独死・突然死など)
・不動産物件の周辺で殺人事件などの凶悪事件・死亡事故・社会を騒がすようなトラブルが発生した
・不動産物件の周辺に抵抗感のある施設が存在する(墓地・心霊スポット・パチンコ屋・刑務所・原子力発電所・騒音や汚染が懸念される工場など)
・不動産物件の周辺に指定暴力団・半グレなどの事務所が所在する

注目すべきポイントは、不動産物件自体に問題がある場合だけではなく、近隣施設や周囲の環境も心理的瑕疵の存否に影響するという点です。

また、「人が死んだ」という事実だけに注目すると同列に扱われがちですが、たとえば日常生活に起こりうる不慮の事故(誤嚥や階段から落ちるの転倒事故など)と、殺人事件では、買主・借主の感じ方が違って当然でしょう。

以上のように、心理的瑕疵が存在するか否かは取引当事者間の扱い方だけではなく、「実際にどのような心理的瑕疵事象が発生したか」という実態にも踏み込まざるを得ないもの。取引終了後に法的問題が生じないように、慎重に手続きを進める必要があると考えられます。

洸太郎
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事故物件の取り扱いに対する社会的な問題意識が顕在化・また円滑な不動産取引実現のために、令和2年2月に国土交通省管轄で「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」が設置されました。売主側が果たすべき調査義務・告知義務の範囲などについて今まさに検討が進められている段階なので、不動産の処分を検討している方は今後の流れに注目しておきましょう。

参照:「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました(国土交通省HP)

事故物件だからといって一律に売却相場が低下するわけではない

事故物件の相場は、一般的な市場売却価格・賃料相場の20%~30%割引といわれることが多いです。

ただ、ここまでの説明を踏まえると、あくまでも不動産取引の当事者間における認識が大きく影響するものである以上、事故物件の売却相場も画一的な基準で語ることはできないということ。たとえば、「事故物件だから売却相場が大幅に下落する」「事故物件だから借主が見つからない」というわけではありません。

その一方で、心理的瑕疵の状況次第では、売却相場が50%以上割引になることも覚悟しておきましょう。たとえば、世間を騒がせるほどの凶悪な殺人事件が起きた物件などは、売却相場から大幅に割り引かれても仕方がありません。

大切なのは、心理的瑕疵を含めて事故物件の状態に対して正当な金銭的価値が設定されることです。状況を改善して土地・建物の魅力を市場にアピールできれば、売却相場の下落をある程度は防げるでしょう。

不動産の売却相場を決める要素は”心理的瑕疵”以外にも多数存在する

心理的瑕疵が不動産物件の売却価格に一定の影響を及ぼすのは当然ですが、心理的瑕疵以外にも売却相場を左右する要因は多数存在します。

そもそも、人は毎日たくさん亡くなっていますし、稀有な出来事ではありません。過去に遡って人が亡くなっている物件か否かだけで売却価格が左右されるとなると、実際多くの不動産が心理的瑕疵的要因を抱えていることになるでしょう。

たとえば、電車などの交通便・道路の込み具合・近隣にスーパーや小学校があるかなどの立地条件・都市部へのアクセスのしやすさ・建物の築年数・構造など、物件の売却価格を決定する要素には際限がありません。

また、法律的瑕疵を抱えている物件は大規模改修が必要なケースがあるため、状況次第では事故物件よりも市場価格が下落することもあるはずです。

このように、不動産の売却価格はひとつだけの要因で決まるわけではなく、複合的な要素を買主・借主がどのように判断するかによって決定されるもの。「事故物件だから売れない・値引きせざるを得ない」と諦める必要はないのでご安心ください。

事故物件を売却するときのポイントは6つ

ここまで紹介したことをまとめると、「不動産の売買・賃貸において事故物件であるか否かは重要な要素になると同時に、事故物件であることだけをもって不動産物件の売却相場が決定されるわけではない」ということになります。

つまり、事故物件を売却・賃貸する場合でも、所有者側の意向を可能な限り反映させるように努力する作業は欠かせないということ。ポイントを押さえれば、事故物件を不動産取引に乗せることは可能です。

そこで、ここからは事故物件を売却するときのポイント・注意点を6つ紹介します。

  1. 告知義務を遵守する
  2. 売却前に清掃・リフォームをする
  3. 更地にする
  4. 値引き希望に柔軟に対応する
  5. 告知義務が消滅するのを待つ
  6. 事故物件専門業者に買い取ってもらう

それでは、事故物件の売却相場をできるだけ下げないため、事故物件取引時に所有者側の希望が最大限反映されるようにするためのポイントについて、それぞれ具体的に見ていきましょう。

事故物件売却のポイント1:告知義務を遵守する

事故物件売却時の1つ目のポイントは、告知義務の遵守です。告知義務を果たしていなければ、仮に売却相場通りの価格で物件を売ることができたとしても、後から損害賠償請求という形でお金を返さなければいけなくなってしまいます。

一般的に事故物件に該当すると評価されるような事情(心理的瑕疵要因)が存在する場合には、売買契約・賃貸借契約が締結される前の段階で、買い手・借り手に対して当該事情を知らせる義務が発生することに。

そして、もし、告知義務を果たさないまま契約を締結し、契約締結後に「当該心理的瑕疵の存在を知っていれば契約をしなかった・契約条件を交渉した」と買主が主張することになると、売主・貸主には瑕疵担保責任(契約不適合責任)が発生し、契約の解除無効・取消し・損害賠償責任を負担しなければいけなくなります。場合によっては詐欺罪で立件されるおそれもあるでしょう。

したがって、事故物件を取引するときには、かならず告知義務を果たして適法に手続きを進めるようにしてください。

なお、不動産を売却・賃貸する場合には仲介業者などに依頼するのが一般的ですが、依頼を受けた不動産仲介業者の宅地建物取引士が”重要事項説明”に含まれる心理的瑕疵要因について告知義務違反をした場合には、宅建業法違反として指示処分・業務停止処分・免許取消処分を受ける可能性もあるという重要なポイントです。

洸太郎
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ただし、心理的瑕疵に該当する要因はケースバイケース。何から何まで売主・貸主側が調査したうえで告知義務を果たさなければいけないとなると、瑕疵担保責任の範囲が不相当に拡大されて、結果的に不動産取引自体に過度なリスクが課されることになりかねません。そこで、「どこまでの範囲の心理的瑕疵に告知義務が発生するのか」が問題となります。

事故物件の告知義務をめぐる裁判例を紹介

売主・貸主側が告知義務を果たさなかったために裁判にまで発展したケースは少なくありません。

なかには、「告知義務を果たしたと勘違いしていた」「告知義務が課される事情だとは思わなかった」という過失のような案件も存在するため、事故物件の売却・賃貸を検討している方は注意が必要です。

その一方で、告知義務は過去すべての心理的瑕疵等について発生するわけではないということも押さえておきましょう。一定期間で告知義務が消滅するという判断が下された事案、所有者を転々とすることによって過去の心理的瑕疵が軽減されると判断した事案など、実に多様な結果となっています。

神戸地方裁判所平成28年7月29日判決
7年前に発生した強盗殺人事件について告知義務違反が認められた事例。損害賠償金額1,735万円と認定。物件の売買契約時に、買主側から「不動産において事件・事故がなかったか」の確認をされた際に、売主側が「何もない」と答えていた。なお、売主自身が強盗殺人事件の被害者の子どもであったため、事件についての存在は認識していたと考えられる。
東京地方裁判所平成20年4月28日判決
賃貸用中古マンション1棟を売却したが、前所有者が飛び降り自殺していた事情を告げなかったため、告知義務違反が認められた事例。心理的瑕疵要因が発生したのは、転売時の約2年1カ月前。
大阪地方裁判所平成11年2月18日判決
約2年前に自殺事案が発生した建物を取り壊した後、当該土地上に建物を新築して売却したケースで、売主側の告知義務は存在しないと認定した。心理的瑕疵要因が建物と土地に与える影響の違いがあることが注目ポイント。
東京地方裁判所平成19年8月10日
単身居住用賃貸物件において自殺事案が発生した場合、次の賃借人に対しては告知義務がある。その一方で、その次の賃借人については、前の賃借人がかなり短期間で退去したなどの特別の事情が存在しない限り、告知義務は発生しないと判断。居住用賃貸物件の告知義務がどこまでつづくのか、どのような事情があれば告知義務が遮断されるのかが注目ポイント。

このように、事故物件の心理的瑕疵にかんする告知義務が発生する範囲は、心理的瑕疵の程度・内容、いつ心理的瑕疵要因が発生したか(何年前か)、土地・建物をどのような目的で利用するのか、建物が建て壊されているのか、何回所有権・賃借関係が移転しているのかなど、個別の取引事情を総合的に考慮して判断されることになります。

したがって、これから不動産の売却・賃貸を検討している所有者は、かならず不動産業者や弁護士・司法書士・宅地建物取引業者などの専門家に相談をして、告知義務をどこまで果たすべきなのか等についてアドバイスを求めましょう。

洸太郎
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告知義務の発生範囲は非常に判断が難しいケースが少なくありません。たとえば、マンションで飛び降り自殺事案が発生した場合、専有部分・共用部分で発生したのか、ベランダ・共用玄関・エレベーター・廊下などの住み心地に影響する箇所で発生したのか、落下地点はどこなのかなど、総合的に事情が斟酌されます。売主だけで判断できるものではないので、プロのアドバイスが不可欠です。

事故物件の告知義務についてのガイドラインが新設

以上のように、事故物件の告知義務の範囲・存否については、個別事情が大きく関わってくることになります。

ただ、このように事案ごとに告知義務の範囲が異なるとなると、売主側・貸主側がいつ契約適合責任(瑕疵担保責任)を追及されるか分からない不安定な状況に置かれるため、不動産市場の流通性が阻害されるおそれが。また、単身高齢者が賃貸物件に入居しにくくなるというリスクも避けられません。

そこで、令和3年10月、国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課は「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を発表し、事故物件の告知義務についての具体的指針を決定しました。

なお、あくまでも行政側が不動産取引の円滑性確保のために作成したものなので、法的強制力は存在しません。そのため、当該ガイドラインを遵守したとしても、場合によっては契約適合責任(瑕疵担保責任)を追及される可能性がある点にはご注意ください。

宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインにおいて定められた内容は以下の通りです。事故物件取引時の目安として参考にしてください。

告知義務が発生する可能性が高い代表例
①取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合
②事件性・周知性・社会に与えた影響等が特に高い場合
③買主・借主から事案の有無について問われた場合
④買主・借主が事案について知っておくべき特段の事情が存在する場合
⑤他殺(殺人・強盗殺人など)
⑥自殺
⑦不慮の事故以外の事故死
⑧火災による死亡
⑨原因が明らかではない死亡
⑩孤独死
⑪原則として告知義務が発生しない自然死・不慮の事故死でも、長期間物件内に遺体が放置された場合
告知義務が発生しない可能性が高い代表例
・取引対象不動産で発生した自然死
・取引対象不動産で発覚した日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)
・賃貸借契約では、上述⑤~⑪に該当する心理的瑕疵要因についても、3年程度経過で告知義務が消滅する
・取引対象不動産の隣接住戸や通常使用しない共用部分で⑤~⑪の事情が発生しても特殊清掃が行われた場合には告知義務は消滅する

買主・借主が教えて欲しいと言った場合、深刻な心理的瑕疵要因を伝えなければ後から買主・借主が抵抗感を示すことが容易に想定される場合(⑤~⑪)などについては告知義務が発生していると考えられるので、取引前に相手方に心理的瑕疵要因について伝えるべきでしょう。

確かに、賃貸借契約では3年で告知義務が消滅する・特殊清掃を実施した場合に一定範囲の告知義務が消滅するなど、例外的に心理的瑕疵要因を表に出す必要がない場面は存在しますが、あくまでも「買主・借主が当該心理的瑕疵要因が存在する事故物件についてどのように考えるか」が重要です。

「国土交通省のガイドラインが絶対」ではなく、当事者間でどのようなプロセスを経て不動産取引についての合意が形成されるかが最重要視されるポイントなので、実際の取引の場面では、専門家に隠すことなく事情を説明して判断を仰ぎましょう

洸太郎
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告知義務を果たすためには、売主側・宅地建物取引業者側で情報収集などの調査活動をする必要があります。もちろん、客観的に発生した事象をすべてパーフェクトにリスト化することはできないので、「過失なく最大限の調査を尽くした」という状態までの情報収集活動を要することに(原則として、自発的な調査活動やインターネット検索等の作業までは不要とされています。なぜなら、宅地建物取引業者には物件状況等報告書等への記載義務が課されているからです)。そのためにも、売主側が専門業者等に依頼する場合には、被害者・遺族などのプライバシーにも配慮しつつも、知っていることを正直に話さなければいけません

事故物件情報は意外と簡単に検索できるので告知義務は素直に果たすべき

売主側に告知義務が課されているとはいっても、「できるだけ隠して市場の売却相場通りに売ってしまいたい」と感じるのは人として当然の感情です。

しかし、事故物件であることを隠し通すのは事実上不可能。なぜなら、一般の人でも簡単に事故物件情報にアクセスできる世の中だからです。

たとえば、「大島てる」に代表される事故物件公示サイトを利用すれば、多くの事故物件情報が見つかります。また、購入希望物件の情報をインターネットで検索するだけで、簡単に事故・事件等に関連したニュースソースに行き当たるでしょう。さらに、物件の外観や名前に変更があったり、売却相場よりも低く売りに出されているという徴憑からも、事故物件の可能性をうかがい知ることができます。

つまり、成約前・成約後に取引対象の不動産が事故物件であることは簡単に発覚する状態だということ。後から判明しても法的問題に発展するだけなので、最初から素直に告知義務を果たすべきでしょう。

事故物件売却のポイント2:売却前に清掃・リフォームをする

事故物件売却時の2つ目のポイントは、売却前に清掃・リフォームをするというものです。

たとえば、マンション内で孤独死などが発生した場合、壁紙やフローリングが汚損されていたり、臭いが部屋全体についてしまっていたりすることもあるでしょう。

そのままの状態ではとても一般的な売却相場通りには成約できないため、特殊清掃・ハウスクリーニングや大規模リフォームをして心理的瑕疵要因の痕跡を消してしまうのがポイントです。また、成約後に買主負担で大規模修繕を加えることを前提として、売却価格について多少値下げ交渉するのも選択肢のひとつ。

もちろん、事故物件について特殊清掃を実施したからといって告知義務が消滅するわけではありません。事案の概要・死因・発覚時期・特殊清掃の実施時期について、告知義務が課されている範囲内で伝えてください。

事故物件売却のポイント3:更地にする

事故物件売却時の3つ目のポイントは、建物を壊して更地にして土地だけで売却するというものです。

ここまで紹介したように、建物内部等で心理的瑕疵要因が発生した場合、特に対象不動産を売却する際には長期的に告知義務が課されることになります。

確かに「事故物件か否かを気にしない」という買主は一定数存在するものの、実際の市場動向を考えたとき、「事故物件を気にする」というターゲット層を最初から失ってしまうのは成約を目指すにあたってデメリットでしかありません。

それならば、建物自体は取り壊して、土地という不動産のみを売却するのも選択肢のひとつでしょう。

特に、戸建て住宅で孤独死が発生し、長期間遺体が発見されなかった場合には、物件全体に悪臭がついてしまっていることも。特殊清掃などでは心理的瑕疵要因を隠し切れないような場合に、更地にするという選択肢は有効です。

事故物件売却のポイント4:値引き希望に柔軟に対応する

事故物件売却時の4つ目のポイントは、値引き交渉には柔軟に対応するということです。

不動産の売却を検討する際は、多くの人が不動産業者と媒介契約等を締結するはず。担当してくれる業者が営業活動等をするなかで、事故物件であることが判明すると購入希望者との交渉が頓挫することは少なくありません。

そこで、事故物件であることを承知のうえで少しでも購買意欲を見せてくれる希望者が現れた場合には、できるだけ柔軟に値引き交渉へ応じるのがおすすめ。やや不適切な表現をするなら、事故物件所有者には「餌にかかった獲物をやり過ごす余裕はない」からです。

そもそも、事故物件であることについて何の工夫もしなければ、売却相場の半額でも買主が見つからないことも珍しいことではありません。売却できるチャンスがあるなら積極的な姿勢で機会を掴み取りましょう。

事故物件売却のポイント5:告知義務が消滅するのを待つ

事故物件売却時の5つ目のポイントは、告知義務が消滅するのを待つというものです。

先ほど紹介した国土交通省発表の宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインでは、一定の条件を充たす場合には告知義務自体が発生しない・消滅するとされています。

また、心理的瑕疵要因が発覚してから時間をおいて売却活動を開始すれば、「これだけ時間が経っているのなら事故物件かどうかは気にならない」と感じる人の数も増えていくはずです。

「事故物件なんてできるだけはやく手放してしまいたい」と感じるのも当然ですが、少し時間を置くだけで意外と売却相場からそう乖離しない価格での成約を実現できる可能性もあるので、焦らずに売却活動を進めることをおすすめします。

事故物件売却のポイント6:事故物件専門業者に買い取ってもらう

事故物件売却時の6つ目のポイントとして、事故物件専門業者に買い取ってもらう方法が挙げられます。

たとえば、物件を広く扱うベーシックな不動産業者でも、事故物件は取り扱ってくれるはず。しかし、充分なノウハウがあるわけでもありませんし、そもそも買い手がなかなか見つからないという前提のなか、一般の不動産業者が営業活動に力を入れてくれる確証もありません。これでは、「せっかく不動産業者に売却活動を依頼したのにいつまでも売りに出したまま。固定資産税や維持費が負担になるだけ」という状態になりかねないでしょう。

そこでおすすめなのが、事故物件専門業者に事故物件をそのまま買い取ってもらうという方法です。事故物件専門業者自身が買主になってくれるので、「買い手が見つからない」という不条理から解放されますし、コストが発生するはずの売れない不動産を今すぐに現金化できます。

ただ、事故物件買取専門業者ならどの業者でも良いというわけではありません。以下の業者選びのポイントを参考に、自分の希望条件を充たす業者を見つけてください。

  1. 複数業者に査定依頼を出す
  2. 事故物件買取実績に注目(そもそも公表していない業者もいるので要注意)
  3. ネットなどで口コミ・評判をチェック
  4. 担当者との相性

残念ながら、不動産業者に買取を依頼する場合、どうしても市場における売却相場よりも低い見積もり額が提示されるのが一般的です。

ただ、売却できなければ入ってくるお金はゼロ。そればかりか、管理コストが毎月・毎年発生しつづけるため、負の遺産になりかねません。

事故物件所有者にとって、「今すぐに一定額で売却できる」ことは大きなメリットのはず。一般市場における売却活動に疲れてしまった・買い手が見つかるか不安だという人は、事故物件買取専門業者の力を頼って負担から解放されてはいかがでしょうか?

なお、訳あり物件の買取業者の選び方、おすすめの事故物件専門買取業者については、以下のリンク先でも詳しく紹介しています。あわせてご一読ください。

【全国対応】訳あり物件(事故物件)を高く売却したい人におすすめの不動産買取業者15選

【全国対応】訳あり物件(事故物件)を高く売却したい人におすすめの不動産買取業者15選

2021年8月1日

事故物件の売却相場が気になる所有者は専門業者に相談しよう

事故物件の売却相場は流動的です。それぞれの買主が何についてどこまで関心を抱くかにばらつきがあるため、画一的な基準で事故物件の売却相場を語ることはできません。

だからこそ、事故物件の売却・賃貸を検討する際には、不動産業者・宅地建物取引業者などの専門家のアドバイスが不可欠です。告知義務等の注意点の多い事故物件の売却活動を、できるだけ売主側の希望に沿う形で進めてくれるでしょう。

ただ、事故物件の成約は簡単ではありません。どうしても、「この値段なら買っても良い」「事故物件かどうかは気にならない」という買主を見つけるのは簡単ではないからです。

したがって、事故物件を早々に手放してしまいたい、事故物件を抱えていること自体に負担を感じているなどという場合には、事故物件買取専門業者の力を頼りましょう。事故物件買取専門業者は苦労の多い事故物件所有者を助けてくれる力強い味方なので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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ABOUTこの記事をかいた人

30代、フリーランスライター・翻訳家。マイホーム購入のタイミングで不動産に興味をもつ。現在は関西の山奥で田舎暮らしを満喫しながら、めぼしい中古物件をリサーチする毎日。不動産関連の知識を深めながら、国内外問わず良い物件との出会いを待ち望んでいます。