不動産の共有者が行方不明の場合はどうする?トラブルを回避して売却するための対処方法を解説

不動産の共有者が行方不明の場合はどうする?トラブルを回避して売却するための対処方法を解説

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不動産は単独所有もできますが、複数人で共有することも可能です。そして、すべての共有者が自ら進んで不動産を共有形式で所有するわけではなく、相続が発生したタイミングでルールに則って共有状態が発生することもあります。

ただ、土地・建物などの不動産を共有名義で保持している場合、当該不動産を売却等の手続きに乗せるためには、「共有者全員の同意が必要」というのがルール。つまり、登記簿に登録されている共有者が行方不明になっているなど所在が分からない場合には、共有者全員の意思表示を明確にできないということ、いつまでも売却等の処分行為ができなくなってしまいます。このままでは、不動産の活用方法についてトラブルに発展しかねないでしょう。

そこで、今回は、建物・土地の権利者が所在不明の場合の4つの対応方法を解説します。また、共有関係不動産の市場における流動性を高めることを目的として、「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」が提言され、近い将来、共有関係をめぐる改正民法が施行される予定(2021年(令和3年)4月28日公布済)です。この点についても分かりやすく紹介するので、あわせて参考にしてください。

洸太郎
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現行民法では共有物に対する3つの処分行為類型が設定されており、どの行為類型に該当するかによって共有者に求められる要件が異なっています(変更行為は全員の同意・管理行為は持ち分の過半数・保存行為は単独でも可)。ただ、変更行為と管理行為の区別は曖昧で、遠方の居住者がいる場合や行方不明の共有者がいる場合などに、積極的に共有物の処分行為に踏み切れないという問題が生じました。今回の民法改正により、軽微変更・占有者の変更・管理者の選任・短期使用権の設定について持ち分過半数ルールが明文化されるとともに、共有物使用者に対して善管注意義務・対価償還義務が課されるなどの変更が加えられているため、共有関係にあるトラブル・不自由感は一定程度軽減されると考えられます。

目次

不動産の共有者が行方不明の場合の対処法は4つ

土地・建物などの不動産の共有者が行方不明の場合、物件の売却・賃貸・リフォームなどを進めることができません。

そこで、共有名義の不動産を処分する場合には、行方不明者が存在することへの対処法に踏み出す必要があります。

現行の法制度のもとで考えられる対処法は次の4つです。

  1. 登記簿等から共有者を調査する
  2. 不在者財産管理人の選定を申し立てる
  3. 失踪宣告を申し立てる
  4. 自分の持ち分だけを処分する

それでは、不動産の共有者が行方不明の場合の現行法制度における対処法について、それぞれ具体的に見ていきましょう。

不動産の共有者が所在不明の場合の対応1:登記簿等から共有者を調査する

不動産の共有者が所在不明の場合における1つ目の対処法は、行方不明の共有者を追跡調査する方法です。

地道な作業になりますが、行方不明の共有者を見つけることができれば、共有者本人の意思表示が明確になるので処分等の手続き・持ち分の買取交渉などを進められます。

もちろん、どこにいるのか分からない行方不明の共有者を闇雲に探すのではありません。登記簿・住民票・戸籍を調査することによって、現在の不動産共有者の所在を明らかにしていくことになります。

ただし、行方不明の共有者追跡調査する場合には、次のポイントに留意しなければいけません。

  1. 登記情報がかなり古い場合、主たる所有者名義に加えて「他共有者〇〇名」という概略的な記載がされているケースがある。この場合、更正登記の手続きを踏む必要があるが、追跡調査を進めるのは困難になる。
  2. 行方不明の共有名義人の住民票・戸籍を取得するためには、役所に足を運んで、「自己の権利行使・義務履行のために必要性があること」を示さなければいけない。必要な手続きについては、各自治体の窓口への問い合わせを要する。
  3. 行方不明の共有者がすでに転居している場合には、住民票の除票を確認しなければいけない。ただし、除票には自治体ごとに保存期限が定められているため、転居が昔過ぎると追跡調査が困難になる。
  4. 行方不明の共有者の死亡が明らかになった場合には、その推定相続人の住民票・戸籍に基づいて所在を調査し、連絡を取らなければいけない。さらに死亡が発覚した場合や遠方への転居が発覚した場合には調査に困難を要する。
  5. 法人が不動産の共有名義人のケースでは、登記簿上の本店・主たる事務所などの場所を手がかりに代表者の所在を調査することになる。
  6. 行方不明の共有者の所在が判明したとしても、どれだけ連絡をしても音信不通のままで、事実上調査がストップすることもあり得る。弁護士・司法書士などの専門家に依頼するのが現実的。
  7. 行方不明の共有者・その相続人が見つかった場合でも、共有名義の不動産の処遇について争いが生じるケースがある。訴訟等に発展した場合には、現物分割・競売分割・価格賠償付きの分割などの方法で共有名義不動産の処遇を決することになる(最高裁判所判決昭和62年4月22日最高裁判所判決平成8年10月31日

探偵でもない素人にとって終わりが見えない追跡調査はかなりの負担のはず。また、行方不明の共有者が死亡・音信不通の場合には調査が難航するのは容易に想定されます。

したがって、不動産の共有者が行方不明で売却処分などを進められない状況なら、弁護士・司法書士などの専門家に調査依頼を出しつつ、同時に、以下で紹介する別の対処法を検討するのが現実的でしょう。

洸太郎
洸太郎

不動産の共有者が行方不明の場合、「共有者を見つけること」と「共有者を見つけてから持ち分等について交渉をすること」とは別問題。共有者が見つかっても処分方法などについて法的トラブルに発展するリスクも高いため、素人判断で共有者探索をスタートすると、かえって解決に時間・負担がかかることにもなり得る点に注意が必要です。

不動産の共有者が所在不明の場合の対応2:不在者財産管理人の選定を申し立てる

不動産の共有者が所在不明の場合における2つ目の対処法は、不在者財産管理人制度を活用する方法です。

不在者財産管理人とは、行方不明者などの所在が分からない人(不在者)の代わりに財産を管理する人のこと(民法第25条1項)。不在者財産管理人を選定すれば、家庭裁判所の許可を得られる限りにおいて、行方不明の共有者の不動産持ち分を売却することができます(民法第27条3項民法第28条)。

つまり、「共有不動産の売却処分等には共有者全員の同意が必要である」という原則を維持したまま、行方不明者が存在するデメリットを不在者財産管理人の選定によってカバーしようとするもの。一定の手続きが必要となるため労力はかかりますが、今現在許されている対処法としては最も現実的な対処法だと考えられます。

洸太郎
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不在者財産管理人が何の制限もなくすべての行為を当然にできるとなると、行方不明者だけではなく他の共有者の利益が害されるリスクが。そこで、不在者財産管理人には財産目録作成義務・善管注意義務が課されたり、保存行為・代理権の範囲(財産の性質を超えない程度の改良行為など)を超える処分行為等をする際には家庭裁判所の許可を要するなどのルールが設定されています。

不在者財産管理人選定の流れ

不動産の共有者が行方不明の場合に、誰かが勝手に不在者財産管理人を決めてくれるわけではありません。

利害関係人(配偶者・相続人・債権者・共有者など)または検察官が、不在者の従来の住所地・居所地の家庭裁判所に対して、以下の必要書類を提出して申立てをする必要があります。

  • 申立書及び必要な添付書類
  • 不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 不在者の戸籍附票
  • 財産管理人候補者の住民票または戸籍附票
  • 不在の事実を証する資料
  • 不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書、預貯金及び有価証券の残高がわかる書類(通帳写し、残高証明書等)など)
  • (利害関係人が申し立てる際には)申立人の利害関係を証する資料(戸籍謄本・不動産の権利証など)

不在者財産管理人になるために必要な資格要件は定められていないので、利害関係者以外の人物なら誰でもなることができます。ただし、上述のように不在者財産管理人にはいくつもの義務が課され、また、各種手続きを円滑に遂行する必要があるため、弁護士・司法書士などが選任されるのが一般的です。

また、不在者財産管理人制度を利用するためには、申立て費用として収入印紙800円分・連絡用の郵便切手・不在者の財産から報酬を捻出できないおそれがある場合の予納金が必要となります(民法第29条)。

なお、手続きの詳細や具体的な申立て方法については、「不在者財産管理人選任(裁判所HP)」をご参照いただくか、司法書士などの専門家まで直接お問い合わせください。

不動産の共有者が所在不明の場合の対応3:失踪宣告を申し立てる

不動産の共有者が所在不明の場合における3つ目の対処法は、失踪宣告制度を活用することです。

失踪宣告とは、所定の要件を充たす場合に、生死不明の行方不明者を法律上死亡したと扱うための制度のこと。失踪宣告で不動産の行方不明共有者の死亡が確定すれば、行方不明の共有者の相続人に対して不動産の処分等について同意を求めることができますし、相続人が存在しない場合には他の共有者に持ち分が帰属することになるので、所在が判明している共有者だけで不動産の処分を決定できるようになります。

つまり、失踪宣告制度では「共有不動産の売却処分等には共有者全員の同意が必要である」という原則は維持されているものの、行方不明者を死亡したと扱うことによって、所在不明が原因で停滞している現実問題・法律問題をひとつ先のステップに進めることが可能だということです。

失踪宣告には2種類の制度が用意されている

民法上、失踪宣告には2つの制度が用意されています。

普通失踪
不在者の生死が7年間明らかでないときに利用できる失踪宣告(民法第30条1項)。7年が経過したときに死亡の効力が発生する(民法第31条)。
特別失踪(危難失踪)
戦争・船舶の沈没・その他災害などの危難に遭った人が、戦争終了時・船舶沈没時・その他危難が去ってから1年間生死不明の場合に利用できる失踪宣告(民法第30条2項)。死亡の効力が発生するのは、戦争終了時などの危難が去ったとき(民法第31条)。

もっとも、一定期間生死不明の状態が続いたとしても、失踪宣告によって死亡が確定した後に、生きていることが判明することもあるはずです。また、失踪宣告の前提となったタイミングとは別の時期に死亡していたことが明らかになる場合もあるでしょう。

この場合には、裁判所は失踪宣告を取り消すことになります(民法第32条1項)。

洸太郎
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失踪宣告による死亡の効果が発生する時期が問題になる理由は、相続や他の処分行為との兼ね合いのため。たとえば、失踪宣告後に行方不明者の生存が明らかになった場合には元行方不明者のために財産関係を巻き戻す必要がありますが、失踪宣告を利用した側は生きていることを知らなかった(善意)だったわけですから、その人たちの利害関係にも配慮しなければいけません。このように、失効宣告によってその後の財産関係が形成される一方で、いつ取消しが行われてもおかしくない状況のため、死亡の効力が発生するタイミングには重要な意味があると考えられます(民法第32条2項)。

失踪宣告申し立ての流れ

失踪宣告制度を利用するためには、利害関係人(不在者の配偶者・相続人にあたる者・財産管理人・受遺者など失踪宣告を求めるについての法律上の利害関係を有する者・不動産の共有者など)が、不在者の従来の住所地・居所地の家庭裁判所に対して、以下の必要書類を提出して申立てをする必要があります。

  • 申立書及び必要な添付書類
  • 不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 不在者の戸籍附票
  • 失踪を証する資料
  • 申立人の利害関係を証する資料(戸籍謄本の全部事項証明書、不動産の権利証・登記簿など)

以上の必要書類を添付して申し立てをした後は、家庭裁判所調査官によって具体的事案の内容等について調査が行われます。その後、裁判所が一定期間(普通失踪なら3カ月以上、特別失踪(危難失踪)なら1カ月以上)を定めて、官報への掲載・裁判所掲示板に失踪宣告の申し立てがあった旨が公表されることに。当該期間内に、不在者本人・不在者の生存を知っている人からの届出がない場合に、家庭裁判所によって失踪宣告がなされるという流れです。

また、失踪宣告が行われた場合には、戸籍法に基づく届出義務が課されているので、審判書謄本・確定証明書をあわせて市区町村役場に届出をしてください。

洸太郎
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失踪宣告を利用する際には、収入印紙800円分・連絡用の郵便切手・官報公告料4,816円の費用が発生します。詳しくは、「失踪宣告(裁判所HP)」をご参照のうえ、管轄の家庭裁判所までお問い合わせください。

不動産の共有者が所在不明の場合の対応4:自分の持ち分だけを処分する

不動産の共有者が所在不明の場合における4つ目の対処法は、自分の持ち分だけを売却処分するという方法です。

不動産の共有者が行方不明で色々な物事が頓挫している現状、そして、行方不明の共有者がいる場合の対処法についてのここまでの説明を踏まえたとき、ご自身が抱えている次の2つの課題が見えてくるのではないでしょうか?

①登記簿上に行方不明の共有者が存在するのが原因で現実的な対応が何ひとつできない
②現行法制度を活用して問題を解決するとしても、手続きの内容が複雑で面倒

実は、不動産を共有している場合でも、自分の持ち分だけを売却することができます。なぜなら、不動産の共有持ち分権にも財産的な価値が認められるからです。

ただし、普通に建物・土地・マンションなどを売却するときのように、一般の不動産市場において広く買い手希望者を募ったところで買主が見つからないのは当然のこと。なぜなら、共有持ち分権だけを取得したところで、行方不明者が存在する状態なら自分で住むこともできなければ、転売等の処分をすることさえ不可能だからです。

そこで、自分の共有持ち分権だけを売却する場合には、共有持ち分の買取を専門に取り扱っている不動産業者に依頼するのがおすすめだと考えられます。不動産業者が買主になってくれるので、媒介契約等を締結して一般市場から買主を探すという手間を省略することが可能です。

ただし、不動産の共有持ち分権だけを売却する場合、どうしても売却価格は低く査定されるというデメリットは避けられません。たとえば、3人が3等分の持分割合で不動産を共有している場合、自分の1/3の共有持ち分を専門業者に売却したとしても、不動産全体の査定額の1/3がそのまま手に入るわけではないということ。なぜなら、買取をした不動産業者が、今後追跡調査・不在者財産管理人制度・失踪宣告制度の手順を担当することになるため、その作業に必要なコストが差し引かれるからです。

したがって、共有持ち分の買取専門業者に買取依頼をする場合には、「現在及び将来にわたって自分が負担しなければいけない労力」「売却価額が多少ディスカウントされること」を天秤にかけて採否を検討してください

民法改正によって不動産の共有者が行方不明の場合の売却処分等がスムーズに進められる

令和5年4月28日までに、「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」に基づく関連法制度の改正が施行される予定です。これによって、所有者不明土地の増加によって停滞していた不動産市場において、取引の円滑化が進められることになります。

この改正によって目指されるのは次の4点。改正後は、不動産市場の流動性が高まるだけではなく、トラブルの種をはらむ不動産を早々に手放せるようになります。

  1. 行方不明の所有者・共有者への対処コストの削減(戸籍や住民票の収集にかかる手間・現地訪問の負担など)
  2. 所有者不明で管理が行き届かない不動産の減少(公共事業への活用など)
  3. 共有者が多数存在する場合の合意形成プロセスの簡略化
  4. 所有者不明土地が多く存在する現状においてさらに相続・遺贈が繰り返され、ねずみ算式に権利不明の土地が増えることを予防

それでは、不動産の共有者が行方不明のトラブル回避のために新設される対処法や、制度全体として予定されているトラブル予防法について、具体的に見ていきましょう。

洸太郎
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令和5年が改正制度の施行時期とされていますが、現在行方不明の共有者トラブルを抱えている方も、施行後は新ルールを利用できる可能性があります。行方不明者が存在する現状の負担に耐えられるのなら、新制度がスタートするまでは現行制度の対処法に踏み出さず、新制度施行を待つのも選択肢のひとつでしょう。

行方不明の不動産共有者の持ち分を買い取る

たとえば、不動産を共有している人のなかに複数人の行方不明者がいる場合、不在者財産管理人制度を利用するとなると、複数人それぞれについて制度を申し立てなければいけないため、手続きの手間・費用負担が重くなります。

そこで、行方不明者の持ち分を強制的に買い取ることができる制度が設けられました(改正民法第262条の2)。

買い取りを希望する他の共有名義人は、裁判所に請求をして、買取価格を決定してもらいます。そして、裁判所が決定した価額を供託することによって代金の支払いとみなされ、行方不明者との間の共有関係を解消できるという流れです。

共有関係を解消できれば、所在が判明している共有者の間(もしくは単独)で、不動産を所有しつづけることも、その後売却活動を行うことも可能となります。行方不明者の存在が原因で不動産の処分方法を検討できないという事態から解放されるでしょう。

ただし、現在行方不明の共有者が現れる可能性もゼロではないため、裁判所に請求をしてからは最低でも3カ月以上の公告期間が設けられる点にはご注意ください。

行方不明の不動産共有分の持ち分をあわせて第三者に売却する

行方不明の共有者が存在する不動産について、すでに売却したい第三者が見つかっていることもあるでしょう。この場合に、わざわざ行方が判明している共有者の元に登記を移転して、ふたたび売買契約に基づいて移転登記手続きを経るのは手続き上煩雑です。

そこで、すでに第三者への売却が決まっている場合には、行方不明の共有者・所在が判明している共有者すべての持ち分をあわせて第三者に移転できるという制度が定められました(改正民法第262条の3)。

裁判所への申し立て後、所定の公告期間を経れば、裁判所から交付される証明書によって第三者への移転登記が可能となります。

洸太郎
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注意すべきポイントは、すべての行方不明者についてこの制度を利用できるわけではないというところ。具体的には、所在等不明共有者の持ち分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合)において、相続開始の時から10年を経過していないときには、行方不明者関連の持ち分を強制的に買い取ることはできません(改正民法第262条の2第3項)。この場合には、判明した相続人との間で遺産分割の手続きを粛々と進めていくことになります。

不動産の共有者が行方不明時のトラブル予防策も制度改正には盛り込まれている

すでに不動産の共同所有者のなかに行方不明者がいる場合の解決策にかんする改正案はここまで紹介した通りですが、制度設計をする以上は、不動産の共有者のなかに行方不明者が発生しないように予防策を整備しておくことも重要です。

このニーズを踏まえて、今回の所有者不明土地をめぐる制度改革では、次の4点の予防案が改正案が盛り込まれています。

所有者不明土地の発生を予防する方策1:相続登記の申請義務化
不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務付ける。正当な理由なく申請漏れをした場合には、過料の罰則が科せられる。ただし、現行の登記申請制度のままでは相続によって不動産を取得した人に過度な負担を強いることになるため、死亡届提出時に相続登記の必要性について自治体窓口で啓発活動が行われること以外にも、次の3つの補完制度が用意される予定。

  1. 相続人申請登記制度を新設:法定相続人であることを申し出るだけで、後は登記官が職権で報告的登記を済ませてくれる。相続登記申請時における手続き負担を大幅に軽減可能。
  2. 登録免許税の負担軽減
  3. 所有不動産記録証明制度を新設:自己または特定人物が名義人になっている不動産の一覧証明書が発行される。これによって、登記の登録漏れ防止が達成されるとともに、故人の所有する不動産の所在が明らかになる。
所有者不明土地の発生を予防する方策2:登記名義人の死亡等の事実の公示制度
登記名義人が生きているのか死んでいるのかさえ明らかになれば、不動産の共有者が行方不明の場合の対処法を検討しやすくなる。新制度では、登記官が住基ネットなどの他サービス・制度を利用して、職権で登記簿に死亡の旨を符号で表示することが検討されている。
所有者不明土地の発生を予防する方策3:住所変更登記の申請義務化
登記名義人に対して、住所等の変更が生じた場合、2年以内に変更登記の申請をすることを義務付ける。正当な理由なく申請漏れが発覚した場合には、過料の罰則が定められる。また、住民基本台帳ネットワークシステム、法人・商業登記システムを活用して住所等の変更が発覚した場合に、登記官が職権で変更登記をする方策についても検討が進められている。これにより、不動産の共有者が行方不明になったときでも、追跡調査がしやすくなる。
所有者不明土地の発生を予防する方策4:相続等により取得した土地所有権を国庫に帰属させる制度の創設
相続・遺贈などを原因として不動産を取得する場合でも、相続人が不動産の所有を望まない、早々に手放してしまいたいと考えるケースは少なくない。そこで、一定の要件を充たす(管理コストが膨大ではない等)場合につき、権利者が手放したいと考える不動産を国庫に帰属させる方策が検討されている。

以上のように、不動産の所有関係・登記制度・共有者行方不明などのトラブルに対しては、今後複数制度を横断する形で抜本的な改正が行われる予定です。

現在抱えている共有者行方不明という不動産トラブルへの直接的な解決策にはなりませんが、今後の人生において不動産を取得するとき、相続が発生するときのために、業界の動向には注目しておきましょう。

洸太郎
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他にも、ライフライン確保のための相隣関係規定の見直し、遺産分割協議が長期(10年程度以上)未了の状態への対応など、関係法制度の改正が予定されています。不動産トラブルを抱えている方、今後相続が発生しそうな方は、いちど司法書士・弁護士などの専門家に相談をして、事前にトラブル回避のために動き出しておくことを強くおすすめします。

不動産の共有者が行方不明などのトラブルが発生した場合に不動産買取業者を頼るべき3つの理由

「制度が改正されるまで待っていられない」「追跡調査・不在者財産管理人制度・失踪宣告制度などに時間をかけている暇はない」という人は、共有持ち分の買取を専門に取り扱っている不動産業者に相談するのがおすすめ

なぜなら、共有持ち分の買取専門業者に任せれば、次の3つのメリットが得られるからです。

  1. 手続き・時間・労力・費用などのあらゆる負担から解放される
  2. 塩漬けされた不動産の共有持ち分を今すぐ現金化できる
  3. 不動産に関連するあらゆるトラブル・法的責任から解放される

それでは、共有持ち分を専門業者に買い取ってもらうメリットについて、それぞれ具体的に見ていきましょう。

なお、共有持ち分を専門に買取してくれるおすすめの不動産業者については、以下のリンク先において複数社紹介しています。買取査定を出すときにお役立てください。

【全国対応】共有持分を高く売却したい人におすすめの不動産買取業者15選

【全国対応】共有持分を高く売却したい人におすすめの不動産買取業者17選

2021年8月1日

不動産買取業者を頼るべき理由1:行方不明者対策に必要な負担から解放される

自分の共有持ち分だけを売却すれば、行方不明者の調査などに必要な手間・コストなどの負担からすべて解放されます。

ここまで紹介したように、不動産の共有者に行方不明者が存在する場合、共有者の居所の調査・不在者財産管理人制度・失踪宣告制度を真正面から踏み切るとなると、かなりの負担が発生するのは明らかです。しかも、素人だけでは手続きを進めるのは困難でしょうから、司法書士・弁護士などへの依頼は不可欠。高額の依頼料も発生するでしょう。

しかし、不動産買取業者に買取を依頼すれば、これらの負担からすべて解放されます。持ち分を譲り渡した後、不動産業者側でこれらの手続きを進めることになりますが、共有持ち分を譲り渡した元共有者にとっては無関係な話です。

したがって、すべての手続き負担から解放された状態で煩わしい共有関係から離脱できるといえるでしょう。

不動産買取業者を頼るべき理由2:今すぐ現金化できる

共有持ち分を業者に売却すれば、今すぐ査定額を現金化できるというメリットも生じます。

そもそも、共有者を発見する、もしくは、不在者財産管理人制度などの補完制度を利用して共有状態の不動産を売却するまでにはかなりの労力が必要です。売買契約を成立させて実際に現金を手にするまでには相当の月日が必要でしょう。また、代金の支払い方法が分割払いになった場合には、なかなか全額の支払いを受けることはできません。

その一方で、不動産の共有持ち分だけを一般の不動産市場で売却するのは不可能に近いのが実情。なぜなら、共有状態の不動産を購入したいと考える一般人はほとんど存在しないからです。

この袋小路の状態において、共有持ち分を専門に買い取る不動産業者に依頼をすれば、「今すぐ売却できる」「今すぐに現金化できる」という結果が得られます。いつまでも現金化できない、いつまでも維持費から解放されないなどという“負の遺産”を”プラスの資産”に転換できる点で魅力的だと考えられるでしょう。

不動産買取業者を頼るべき理由3:所有者責任から解放される

共有状態であるとはいえ、不動産の所有権を有しているということは、所有者としての法的責任が発生するということです。

たとえば、共有状態の誰も住んでいない建物が倒壊して近隣住民などに被害が生じた場合、民事上の損害賠償責任を負担しなければいけません。また、明らかに家屋の損傷が進んでいる状態であるにもかかわらずこれを放置して、その結果、第三者が怪我をするなどの事態におちいった場合、刑事責任を問われる可能性もあるでしょう。他にも、放置した空き家に不法投棄をされたり、悪臭や治安悪化の原因になるなど、数多くのトラブル要因が考えられます。

これらのデメリットを回避するには、定期的に不動産を管理・巡回し、清掃・ハウスクリーニングなどを実施しなければいけません。処分できない塩漬けの不動産でも、所有者である以上は、常に一定の責任・義務に晒されるということです。

ただ、共有持ち分を売却してしまえば、その時点で共有持ち分の所有権が買取業者に移転するため、一切の所有者責任から解放されます。特に、損害賠償責任や刑事責任は、不動産の売価とは比較にならないほどの損失をもたらすもの。早期に所有者責任から逃れられることの意義は計り知れないものです。

洸太郎
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不動産の共有持ち分だけを売却する際には、かならず複数の専門業者に査定依頼を出してください。物件の状態や共有関係の複雑さ(業者によって蓄積しているノウハウが異なるため、複雑さのレベル認定も異なる可能性があります)などの総合的な事情から、各社の査定額にかなりの差が出ることが少なくないからです。その際には、土地の相続税路線価・建物の固定資産税評価額などの客観指標と持分割合を掛け合わせて、査定額が適正なものであるかも確認しましょう。

不動産の共有者が行方不明ならすみやかに専門家・専門業者に相談しよう

所有者不明の不動産が増えていることに対する問題意識は社会的に共有されつつあります。これを受けて、近い将来多くの法改正が実施され、行方不明の共有者が存在する不動産に縛りつけられている人も、比較的手間をかけずに共有トラブルから解放されるようになるでしょう。

しかし、少なくとも今現在は、不動産の共有者が行方不明の場合には、追跡調査・不在者財産管理人制度・失踪宣告制度を活用するしかない状況です。真正面から共有不動産をめぐるトラブルを解決しようとすると、かなりの負担を強いられるのは間違いありません

そこで、不動産の共有者が行方不明で困っているのなら、自分の共有持ち分だけを売却して共有関係からの離脱を目指すのがおすすめの方法です。共有持ち分の買い取りを専門に扱っている不動産業者はたくさんあるので、複数社に査定依頼を出したうえで、自分の条件に適した専門会社に助けを求めましょう。

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30代、フリーランスライター・翻訳家。マイホーム購入のタイミングで不動産に興味をもつ。現在は関西の山奥で田舎暮らしを満喫しながら、めぼしい中古物件をリサーチする毎日。不動産関連の知識を深めながら、国内外問わず良い物件との出会いを待ち望んでいます。