離婚した時に共有名義不動産はどうするべき?共有持分だけを処分する方法まで解説

離婚した時に共有名義不動産はどうするべき?共有持分だけを処分する方法まで解説

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夫婦共働き世帯が増えている現状において、マイホームを夫婦の共有名義で購入するという世帯が増えています。

もちろん、夫婦円満に結婚生活を過ごしていくなら何も問題は発生しません。ただ、残念ながら、いろいろな事情で離婚を選択するということもあるでしょう。その場合、離婚によって法的にはまったくの他人になるわけですから、共有名義不動産の処分方法について考える必要が生じます。

もっとも、不動産という財産は資産価値が高く、また、財産分与・住宅ローン(ペアローン)・登記手続きなどの注意事項が少なくないもの。夫婦で使っていた家具・電化製品・小物などのように、簡単に処分できるものではありません。

そこで、今回は、離婚時の共有名義不動産の処分方法についてわかりやすく解説します。あわせて、共有名義のまま不動産を放置をするデメリットや、物件の処遇について元パートナーと冷静に話し合えない状況の対処法も紹介するので、最後までご一読ください。

目次

共有名義不動産を離婚時に名義変更しないと4つのデメリットが生じる

離婚時にはかならず共有名義不動産の処分方法を話し合って決めましょう。

なぜなら、離婚後も共有名義のままの状態がつづくと、次の4つのデメリットが生じるからです。

  1. 元配偶者の合意がなければ処分できない
  2. 共有状態を放置すると相続発生時にトラブルが深刻化する
  3. 不動産の維持費の支払い義務を負担しなければいけない
  4. 住宅ローン残債の一括返済を求められるリスクがある

それでは、離婚後も不動産の共有関係がつづく場合のデメリットについて、それぞれ具体的に見ていきましょう。

共有名義のまま離婚するデメリット1:元配偶者の合意がなければ処分できない

共有名義を解消せずに離婚後も不動産の共有状態がつづく1つ目のデメリットは、元配偶者の合意がなければ処分等をできないという点です。

不動産を売却したり、賃貸・大規模修繕・解体などをする際には、所有者全員の同意がなければいけません。そして、不動産の所有者とは、登記簿上に記載されている名義人のこと。つまり、何をするとしても、原則として共有名義人全員の意思決定がなければスムーズに手続きを進められません(変更行為・管理行為・保存行為ごとに細かい要件が定められている(民法第251条・252条))。

となると、離婚が成立した後も、不動産の処分方法を決める際には、常に元配偶者と話し合わなければいけないということ。離婚後も円満な関係がつづいているのなら支障はないかもしれませんが、元配偶者に連絡をとって顔を合わせるのは面倒だという人の方が多いでしょう。

離婚後も共有名義不動産という楔で関係がつづくと、新たな人生を歩みにくいはず。離婚のタイミングですべての財産関係を清算しておくことをおすすめします。

共有名義のまま離婚するデメリット2:放置すると相続のタイミングでトラブルになりかねない

共有名義を解消せずに離婚後も不動産の共有状態がつづく2つ目のデメリットは、相続などのタイミングで深刻なトラブルに発展するという点です。

離婚後に元配偶者が死亡したとき、元配偶者の子どもなどが不動産の共有持ち分権を相続することになります。たとえば、元配偶者が離婚後に再婚し、子どもをもうけていた場合には、再婚相手と子どもが相続人に。また、元配偶者が再婚をしなかった場合には、元義理の父母・兄弟姉妹が相続人です。

多数の相続人が存在すると、不動産の共有関係が複雑に。売却をするには共有持ち分権の相続人全員に連絡をとらなければいけませんし、所在不明の共有者がいる場合には不在者財産管理人制度などを活用する手間がかかります。労力・時間の負担を考えると、結局転用方法の見つからない”負の遺産”となりかねません。また、相続関係がさらに複雑になると、相続税などをめぐるトラブルも発展し得ることを押さえておきましょう。

このように、将来的にトラブルが深刻化する可能性があることを考えると、離婚後も不動産を共有名義状態にしておくことにはメリットは見当たらないのは明らかです。早期に共有関係を解消して、処分しやすい状況を作り出しておくことをおすすめします。

なお、今後民法等の制度改正によって、不動産の共有者が行方不明の場合の対処法が変更になる可能性が高い状況です。以下のリンク先で詳しく解説しているので、あわせてご一読ください。

不動産の共有者が行方不明の場合はどうする?トラブルを回避して売却するための対処方法を解説

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2021年11月8日

共有名義のまま離婚するデメリット3:維持費が発生する

共有名義を解消せずに離婚後も不動産の共有状態がつづく3つ目のデメリットは、不動産の維持費・コスト負担を強いられるという点です。

土地・建物・マンションなどの不動産は所有しているだけでお金がかかるもの。たとえば、固定資産税・都市計画税・管理コストなどを負担しなければいけないのは、原則として登記簿上の名義人です。また、共有名義不動産が空き家のまま放置されつづけた結果、倒壊などのトラブルが発生した場合には、登記簿上の所有者が法的責任(損害賠償などの民事責任・過失致傷などの刑事責任・空き家管理者としての行政責任等)を追及されるリスクも発生します。

したがって、不動産に居住したり運用して恩恵を受けたりしないのなら、共有名義状態を解消して各種コスト負担・法的責任から解放された状態を作り出すべきでしょう。

共有名義のまま離婚するデメリット4:住宅ローン残債の一括返済を求められるリスクがある

共有名義を解消せずに離婚後も不動産の共有状態がつづく4つ目のデメリットは、住宅ローン残債の一括返済を求められるリスクがあるという点です。

たとえば、住宅ローンを夫婦2人名義で組んだ場合(ペアローン)において、離婚後も住宅ローンの返済をしなければいけない状況では、離婚をした元夫婦が住宅ローン残債について連帯保証人・連帯債務者の関係にあるということ。細かな取り決めは離婚時に協議することができますが、契約者名義を変更しない限りは、金融機関に対しては夫婦2人が返済義務を負いつづけるということになります。

もし、元配偶者が住宅ローンの返済を怠ってしまうと、連帯保証人が住宅ローン残債の一括返済義務を強いられることに。返済できないと信用情報にキズが付いたり(いわゆる”ブラックリスト”のこと)、強制執行が実行されて財産・給与などが差し押さえられたりします。

このように、不動産の共有関係を解消していなければ、物件に居住をしていないにもかかわらず、ある日いきなり数百万円・数千万円の住宅ローンの一括返済義務を求められるということにもなりかねません。甚大な法的リスクを強いられる前に、共有状態を解消する・不動産を売却してしまうなどの方法をご検討ください。

離婚時に共有名義不動産を処分する方法は3つ

以上のようなデメリットが生じることから、離婚に向けた話し合いを進めるなかで、夫婦共有名義で購入した不動産を今後のどのように扱うのかを決めるべきです。可能であれば離婚が成立する前に、どれだけ遅くても離婚が成立して間もない時期に処分してしまう方が、将来的なトラブル回避に役立つでしょう。

離婚時に共有名義不動産を処分する方法は、次の3つです。

  1. 共有名義不動産を第三者に売却して現金化する
  2. 夫婦どちらかが住みつづけるために共有名義から単独名義に変更する
  3. 自分の持ち分だけを不動産買取業者に売却する

夫婦関係を解消にともなって共有名義不動産という大きな価値を有する財産関係の処遇を決する際には、住宅ローンや財産分与などの法律問題が複雑に絡んできます。また、当事者間で冷静に話し合いをするのが難しいケースもあるでしょう。

弁護士・司法書士などの専門家に間に入ってもらった方がスムーズに財産関係の解消までケアできる可能性は高いので、深刻なトラブルに発展する前に専門家までご相談ください。

それでは、離婚時の共有名義不動産の処分方法について、それぞれ具体的に見ていきましょう。

離婚時の共有名義不動産の処分方法1:第三者に売却して現金化する

離婚時の共有名義不動産の1つ目の処分方法は、共有名義不動産を夫婦以外の第三者に売却するというものです。

離婚をきっかけに夫婦双方が新しい拠点に引越しをするという場合、二人で購入したマンション・戸建てが不要になるということもはるはず。「共有名義不動産を手放したい」と希望する夫婦におすすめの方法です。

ただし、離婚時に共有名義不動産を売却する際には、次の注意点を踏まえて手続きを進めなければいけません。

  • 不動産売却後に住宅ローンが残るか否かで処分方法が異なる
  • 共有名義のまま売却するには夫婦二人で手続きを進めなければいけない
  • 共有名義不動産売却後のお金の分け方・負担方法でトラブルにならないように

それでは、共有名義不動産を売却処分する際の注意点について、それぞれ具体的に見ていきましょう。

不動産売却後に住宅ローンが残るか否かで処分方法が異なる

共有名義不動産を売却するときには、住宅ローンが残るか否かで処分方法が異なります

  • 住宅ローン残債<不動産売却価格(アンダーローン):住宅ローン完済扱いになるので、売却手続きと財産分与のみ。
  • 住宅ローン残債>不動産売却価格(オーバーローン):不動産売却後も住宅ローン返済義務が残るので、その処遇を決する必要がある。

したがって、共有名義不動産を第三者に売却する道を選択するのなら、まずは不動産がいくらで売却できるのかをチェックしてみるのがファーストステップです。

不動産一括査定サイトなどを活用すればネット上で不動産評価額の概要を知ることができるので、お試しください。

共有名義不動産の売却価格で住宅ローンを完済できる場合(アンダーローン)

共有名義不動産の売却価格で住宅ローン残債を完済できる状況なら、比較的トラブルが発生しにくい状況です。

不動産売却手続きを共同名義人である夫婦二人で実施、売却によって手にしたお金を住宅ローンの返済に充て、残った売却代金を財産分与で分けるという流れとなります。

もっとも、不動産評価額がどれだけ高値査定されたとしても、買主が見つからなければ現金化をすることができません。そこで、不動産売却を業者に依頼する際には、不動産仲介業者・不動産買取業者のいずれに依頼するのかを注意しましょう。

不動産仲介業者
不動産の購入希望者を見つけるなど、売買契約成立に向けたサポートをしてくれる。市場価格通りに売却できる見込みが高いが、人気エリアに所在している・物件に瑕疵などが存在しないなどの条件を充たさなければ、いつまでも売却できないリスクが存在する。不動産業者との間で締結する仲介契約(媒介契約)の種類に注意が必要(専属専任媒介契約・専任媒介契約・一般媒介契約の三種類)。
不動産買取業者
不動産業者が買主になって不動産を引き取ってくれるのでかならず売却できる。ただし、不動産仲介業者に依頼をする場合よりも売却価格が値引きされることが多いので、住宅ローンを完済できるかを見落とさずにチェックしよう。

たとえば、不動産買取業者に依頼をしても住宅ローンを完済できる査定額なら、最短即日で不動産を現金化できるので、離婚時の清算庶務の負担がかなり軽減されます。これに対して、どれだけ人気物件だとしても、不動産仲介業者に依頼をすると、どうしても「売却できない」「売却までに時間がかかる」というリスクは避けられないでしょう。売却手続きが長期化すれば、その間も住宅ローンの返済に追われることになります。

したがって、各社の査定額や売却可能性などを営業担当者と丁寧に話し合ったうえで、ご夫婦のニーズを叶えられる業者に依頼をするのがおすすめです。

なお、仲介業者と買取業者のどちらに依頼すべきかは、不動産の状況によって異なります。以下のリンク先でも詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。

不動産の売却は「仲介業者」と「買取業者」どちらが良い?それぞれのメリット・デメリットを解説

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2021年7月30日
共有名義不動産を任意売却しても住宅ローンを完済できない場合(オーバーローン)

共有名義物件の売却評価額が住宅ローン残債に満たない場合、そもそも自由に不動産を売却することはできません。金融機関が許可してくれた場合に”任意売却”できるだけだという点を押さえておきましょう。

そして、仮に任意売却が認められたとしても、不動産を売却した後も住宅ローンの返済義務が残ります。つまり、ペアローンを組んでいる場合、夫婦が連帯保証人の関係の状態で住宅ローン返済義務を負うということです。

離婚後も夫婦が共同で住宅ローンを返済しつづけるのは危険でしょう。なぜなら、当事者間で返済方法についてどのような取り決めをしたとしても、金融機関との間で締結した返済条件を履行できないと夫婦双方が住宅ローン残債の一括返済・強制執行などのリスクを負う可能性があるからです。

特に、離婚時には夫婦間で色々な取り決めをしていることが少なくありません。オーバーローンの不動産は財産分与の対象外とはいえ、実質的には清算的財産分与・扶養的財産分与・慰謝料的財産分与の内容に含まれるかたちで、共同名義のままで夫婦のどちらかだけが住宅ローン残債を返済しつづけるという約束をしているというケースもあるでしょう。

しかし、たとえ公正証書で「毎月の住宅ローン残債の支払いは夫が責任を負う」と定めたとしても、共同名義を解消しない限り、妻側も法的に返済義務を負担してることに変わりありません。つまり、夫が住宅ローンを滞納した場合、妻が連帯保証人として金融機関から法的措置をとられる可能性もあるということです。

したがって、離婚時にオーバーローンの共有名義不動産を任意売却後、共同で住宅ローン残債の返済をつづける方法は、将来的なトラブルがさらに泥沼化するリスクが高いのでおすすめできません。

洸太郎
洸太郎

オーバーローンの状況だとしても、「夫婦どちらも不動産の引き取りを拒絶している」「任意売却を認めてもらえない」というケースもあるでしょう。この状況で夫婦の希望を叶えるためには、預貯金・他の財産などを現金化するなどの資金調達によって住宅ローン残債を完済する手段しか残されていません。住宅ローン残債次第ではかなり高額の負担を強いられることになりますが、自力で一括返済してしまえば、少なくとも共有名義不動産をめぐるトラブルから解放されるでしょう。ただし、費用負担については財産分与などで揉め事にならないように丁寧に調整してください。

共有名義のまま売却するには夫婦二人で手続きを進めなければいけない

共有名義不動産を第三者に売却する際には、夫婦二人で売却手続きを進めなければいけないという点に注意が必要です。

離婚原因によっては、パートナーと顔を合わせるのも嫌だという場合もあるでしょう。しかし、二人が不動産の共同所有者である以上、原則として、不動産仲介業者との媒介契約・買主との売買契約・登記移転手続きは二人連名で行わなければいけません(例外的に、一方当事者などに代理権を授与すれば夫婦そろって売却手続きを進める必要がない状況を作り出すことができます)。

また、実印・印鑑登録証明書・住民票などの書類も共有者全員分が必要になるので、スムーズに手続きを進められるように事前に準備をしておきましょう。

なお、代理人として売却手続きを進める際のポイント・注意事項等については、以下のリンク先でも詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。

親名義の不動産を売却する方法はある?状況別に必要な手続きや売却の流れを解説します

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2021年9月1日

共有名義不動産売却後のお金の分け方・負担方法でトラブルにならないように

共有名義不動産を第三者に売却する際には、売却益の分け方や費用の負担割合について話し合うことも忘れないようにしてください。

まず、住宅ローンを完済済みの場合・アンダーローンの場合には、共有名義不動産の売却によって利益が発生することになります。この売却益は、夫婦それぞれが1/2ずつ財産分与によって取得するのが原則です。

ここで注意すべき点は、不動産の売却益を財産分与する際には、不動産の持分割合は関係がないという点。たとえば、1/2ずつ均等に分けても良いですし、当事者間の話し合いによって好きに分けることも可能です。また、共有持ち分割合にしたがって分けても良いですし、頭金を出した方・住宅ローン返済分の負担割合が多い方が全額手にするという方法でも問題ありません。

次に、不動産売却時に発生する費用・コストの負担方法についても明確にしておきましょう。不動産という高額資産を売却するとなると、次のような費用が発生するからです。

譲渡所得税・住民税・復興特別所得税
不動産の売却益(取得費・譲渡費用・特別控除を差し引ける)に対して課される税金のこと。長期譲渡所得(5年以上所有している場合)なら譲渡所得税15%・住民税5%、短期譲渡所得(所有期間5年以下の場合)なら譲渡所得税30%・住民税9%の負担を強いられる(これに加えて、令和19年までは復興特別所得税2.1%が加算される)。ただし、共有名義不動産が居住用物件(マイホーム)である場合には、「No.3302 マイホームを売ったときの特例」によって3,000万円までは非課税として扱われる。
登録免許税
不動産売却時には、所有権移転登記・抵当権抹消登記手続きが必要。買主側が負担するケースもあるが、売主側負担になることも。また、登記手続きには住民票や戸籍謄本が必要なので、これらの発行費用が別途発生する。
仲介手数料
不動産仲介業者に依頼する場合には仲介手数料を支払わなければいけない(買取業者に依頼する場合には不要)。各社仲介手数料の算定基準は異なるが、売主・買主双方が負担するのが一般的。売買契約成立前に確認しておこう。
専門家への依頼料
登記手続きを専門家に依頼する場合、また、離婚をめぐるトラブルを専門家に相談する場合には、弁護士・司法書士などへの依頼料が発生する。相談料などの報酬体系については各専門家までご相談を。

離婚時の共有名義不動産の処分方法2:夫婦どちらかが住みつづけるために共有関係を解消して単独名義にする

離婚時の共有名義不動産の2つ目の処分方法は、夫婦のどちらか一方が当該不動産に住みつづけるというものです。

離婚をしたとしても、せっかく購入した不動産を手放したくないという人も少なくはありません。また、子どもの学校のことや、離婚後の生活費などを考慮したときに、しばらくは慣れた住環境を維持したいと考える世帯があるのももっともでしょう。

ただし、離婚前は夫婦の共有財産であった不動産に離婚後どちらか一方だけが生活をつづけるということは、不動産の名義・住宅ローンの返済などの面においてトラブルが発生しない状況を作り出す必要があるということです。

そこで、離婚後夫婦の一方が当該不動産に居住をつづける場合の手続きの流れ・注意点について、住宅ローン残債の有無に分けて詳しく見ていきましょう。

住宅ローンを完済している場合

住宅ローンを完済しているマイホームに離婚後もどちらかが住みつづける場合、共有名義を解消して単独名義へ変更することをおすすめします

確かに、「住宅ローンのことは考えなくても良いのだから、今すぐ面倒な登記変更手続きをする必要はないのでは?」と思われる人もいるでしょう。

しかし、「自分が生活している不動産が他人との共有名義状態であること」はかなり危険。なぜなら、居住していない共有者も不動産に対して持ち分の範囲内で権利を有しているということになるので、持ち分だけを第三者に売却されたり、保存行為と称していきなり改修工事を実施するなどの嫌がらせを受けたりするリスクを避けられないからです。

仮に円満離婚だったとしても、離婚届を提出した後は”赤の他人”だということを忘れてはいけません。離婚後、新たな人生を歩んでいくときに、離婚をめぐるトラブル要因はできるだけ排除しておくのが適切です。

したがって、住宅ローンを完済している場合でも、離婚が成立したときには、かならず法務局にて不動産の名義変更手続きを行いましょう。なお、財産分与によって不動産の名義変更をする際の必要書類は、登記原因証明書・登記識別情報・固定資産評価証明書・印鑑証明書・住民票・戸籍謄本です。自分で手続きを進めるのが不安な場合には、司法書士などの専門家に依頼をすればスムーズです。

洸太郎
洸太郎

財産分与で不動産を譲渡する場合には、離婚成立後2年以内に登記手続きの変更をする必要があります。この場合には、「離婚を契機とする財産関係の清算」ということで贈与税等は発生しません。ただ、なかには離婚成立後2年以上が経過しても共有関係が継続しているということもあるはず。この場合、財産分与を原因とする名義変更は可能ですが、税務上は贈与として扱われるため、贈与税が課されることになります。離婚で共有名義不動産がある場合には、できるだけ早いタイミングで名義変更手続きを行いましょう。

住宅ローンが残っている場合

住宅ローンが残っている共有名義不動産に離婚後夫婦のどちらかが居住しつづける場合、住宅ローンの返済方法についても配慮を要するため注意が必要です。

次の3つの方法のどれを選択するとしても、乗り越えるべきハードルは少なくありません。

  1. Aが物件から出ていき、Bが物件に居住しつづけるが、住宅ローンはAB共同で返済を継続する。
  2. Bが物件に居住しつづけ、Aが単独で住宅ローンを返済する。
  3. Bが物件に居住しつづけ、Bが単独で住宅ローンを返済する。

①②は居住者と住宅ローンを返済する人にズレがあるパターン、③は居住者と住宅ローン返済者が共通のケースです。①②には法的形式と居住実態に齟齬が生じる点に問題があり、③にはペアローンを組んでいる場合に「住宅ローンの名義変更」という壁をクリアしなければいけないという課題が存在します。

居住者と住宅ローン名義人に齟齬が生じるとトラブルの原因になる(①②)

原則として、住宅ローン返済中の名義変更を金融機関が認めてくれる可能性は高くないのが実情です。となると、不動産・住宅ローンの名義人を共有状態にしたままで夫婦そろって返済を継続する(あるいは、出ていく人が返済を継続する)という方法が現実的な対処法として楽に思えることもあるでしょう。

しかし、居住をしていない人が住宅ローンの返済をつづけるような不安定な状態の物件に住みつづけるのは危険。なぜなら、上述のように、住宅ローンの未納が生じた場合には、金融機関との関係で法的に返済義務を負担している人物が残債の一括返済義務を負担することになりますし、未払いが解消されない状態がつづくと、不動産に設定された担保権が実行されたり、強制執行で換価処分されたりする可能性があるからです。

もちろん、「離婚後不動産から出ていくが、住宅ローンをしっかり返済する」と約束してくれることもあるでしょうし、それを信頼できるような関係がつづくこともあるはず。そのような場合に、名義変更などを一切せずに、元配偶者のことを信用することは間違いではありません。

ただ、住宅ローンを完済するまでに元パートナーの収入事情が変わったり、再婚によって家庭環境が変わったりすることもあるでしょう。仮に公正証書を交わしていたとしても、約束が守られないというリスクは避けられません。

したがって、「法形式と居住実態に齟齬が生じる状態は、原則としておすすめできる状態ではない」とご理解ください。基本的には、居住する人が住宅ローンを返済するというのが理想形です。

住宅ローンが残っている場合は共有名義から単独名義の変更はハードルが高い(③)

「居住する人が住宅ローンを返済するのが理想」とはいっても、住宅ローン返済中の場合には、共有名義から単独名義へ名義変更するのは簡単ではありません

なぜなら、金融機関との間で住宅ローンの借り入れ契約を締結する際には、住宅ローンを組んだ人の収入状況に対する審査をクリアすることが前提となっているからです。つまり、ペアローンの場合には、夫婦二人の収入があるから住宅ローンを組めたわけで、二人のうち一人が名義人から抜けるとなると住宅ローン契約の前提が覆ってしまうため、金融機関からの了承を得られないということになります。

つまり、共有名義から単独名義に変更するためには、単独名義でも住宅ローン残債の返済可能性があることを金融機関に示すのがポイントです。具体的には、次の方法が考えられます。

住宅ローンの組み替え審査を申請する
現在の収入でも住宅ローンの完済見込みがあると判断してもらえれば単独名義への組み替えは可能。収入アップなどの事情が存在する、また、預貯金などを活用して一部繰り上げ返済をして残債額を減らせるのなら、金融機関の担当者に相談しよう。
他社の住宅ローンに借り換える
現在の住宅ローンを他社からの融資で完済し、他社との間で締結した単独名義の住宅ローンを返済する方法。ただし、すでに返済中のため、他社からの借り入れは比較的少額になることが多い。すると、融資条件(利息等)が従来の住宅ローンよりも厳しい内容になる可能性もあるので、返済負担が増えるリスクがある。各社の商品を丁寧に見比べよう。
連帯保証人を追加する
充分な収入がある第三者を連帯保証人に追加すれば、金融機関が承諾してくれる可能性がある。ただし、よほど信頼できる人でなければ人間関係にヒビが入る可能性があるので、親族などに相談を。
洸太郎
洸太郎

離婚をきっかけにマイホームをめぐる金銭トラブルに巻き込まれて生活拠点を失われかねないという人は少なくありません。たとえば、リースバック行政の住宅扶助などの公的支援制度を利用できる場合もあるので、金融機関や市役所の相談窓口までお問い合わせください。また、住宅ローン返済中に滞納が生じるなどの場合には、債務整理などの方法で返済状況を改善することもできます。住宅ローンという大きなお金の工面と離婚後の生活費のことなどで精神的に辛い思いをされているかもしれませんが、生活するための方法は意外と多く用意されているのでご安心ください。

住宅ローンが残っている不動産も財産分与の対象になるので要注意

単独名義に変更して住宅を引き継ぐ場合には、財産分与との関係でも注意しなければいけません。

なぜなら、オーバーローン(共有名義不動産の評価額<住宅ローン残債)なら”マイナス財産”として財産分与の対象外になりますが、アンダーローン(共有名義不動産の評価額>住宅ローン残債)なら”プラス財産”として財産分与の対象となるため、他の財産とあわせて夫婦間で清算を行わなければいけないからです。

たとえば、2,000万円の価値がある不動産の住宅ローンを1,000万円分返済している場合、当該不動産は1,000万円の価値あるプラスの財産だということ。夫婦二人で均等に分けると、本来ならそれぞれが500万円ずつ受け取ることができるはずです。ただ、一方が不動産に居住するということは、出て行く側が500万円分の価値を損することに。したがって、不動産を取得する側が、不動産から出て行く側に500万円支払わなければいけないということになります(他の財産で清算することも可能です)。

離婚時の共有名義不動産の処分方法3:持ち分だけを不動産買取業者に売却する

離婚時の共有名義不動産の3つ目の処分方法は、自分の共有持ち分だけを不動産買取業者に売却して共有名義不動産に起因するトラブル・手間を回避するというものです。

ここまで紹介したように、離婚時に共有名義不動産を処分するには、どの方法を選択するとしてもかなり面倒です。特に、住宅ローン残債がある場合・パートナーとの話し合いが困難な状況にある場合などには、夫婦ふたりで共有関係の解消に向けて手続きを進めるのが難しいでしょう。離婚をきっかけに、「元配偶者の顔も見たくない」「できるだけ早く縁を切ってしまいたい」と考える人は少なくありません。

このように、できるだけ早期に共有名義不動産を処分したい、嫌な思い出しかないマイホームに住むつもりもないという場合には、不動産の共有持ち分を専門に取り扱っている不動産買取業者に依頼をするのがおすすめです。

共有持ち分専門の買取業者は、共有持ち分という権利がもつ財産的価値をそのままの状態で買い取ってくれます。買取業者が引き受けた後は、共有持ち分の売却活動・共有物分割請求訴訟などの方法で持ち分をさらに転売することになりますが、これは元所有者とは一切関係なく行われるものです。

ただし、共有持ち分だけの買取では、不動産市場で一般的に売却する際の査定額通りには売却はできず、多少の値引きをされることが多いということも押さえておきましょう。「できるだけ高値で売却したい」という方は、以下のリンク先で紹介している複数の業者に査定依頼を出し、もっとも条件の良い業者をご選択ください。

【全国対応】共有持分を高く売却したい人におすすめの不動産買取業者15選

【全国対応】共有持分を高く売却したい人におすすめの不動産買取業者17選

2021年8月1日

共有名義不動産の処分は離婚成立前がおすすめ

離婚をするとき、夫婦間で清算しなければいけないことはたくさんあります。関係性がこじれて、まともな話し合いもできないなか、財産関係の処理や新生活に向けた準備をするのは大変でしょう。そのなかでも、共有名義不動産の処分は特に注意事項が多く、また、すぐに希望通りの解決を望めるわけでないので、離婚当事者にとって大きな負担となるものです。

ただ、だからこそ、離婚時の共有名義不動産の処分方法は早い段階で話し合いを進めてください。面倒だからといって共有状態のまま放置をつづけてしまうと、固定資産税の負担だけではなく、住宅ローンの扱いやその他の法的紛争にも発展しかねません。

まずは、「自分が離婚後どのような生活がしたいのか」「不動産に住みつづけたいのか、手放したいのか」「住宅ローンを返済できるだけの経済力があるのか否か」などについて、丁寧にパートナーと話し合いをしましょう。そして、“もっとも将来的なトラブルが起きにくい選択肢”を採用するのがおすすめです。

また、夫婦関係が破綻し、もはや顔を合わせることもできないほど深刻な状況なら、共有名義不動産の処遇について話し合うためにわざわざ無理をする必要はありません。共有持ち分専門の買取業者があなたの助けになるはずです。

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ABOUTこの記事をかいた人

30代、フリーランスライター・翻訳家。マイホーム購入のタイミングで不動産に興味をもつ。現在は関西の山奥で田舎暮らしを満喫しながら、めぼしい中古物件をリサーチする毎日。不動産関連の知識を深めながら、国内外問わず良い物件との出会いを待ち望んでいます。