築30年の一戸建て住宅でも不動産市場で売却できます。ただし、標準的な居住用物件の場合、築20年を超えたタイミングで建物自体の資産価値がゼロになるので、土地の市場価格をベースに売却価格が決まるのが一般的です。
とはいえ、築30年の戸建て住宅のなかにも、耐久性に問題がなくまだまだ住める物件や、駅チカ・知名度が高い・大型商業施設へのアクセス良好などの好条件を兼ね備えた建物も多数存在します。このように、築30年の戸建て住宅に付加価値的要素があるなら、中古不動産市場において高値成約を目指すのも不可能ではないでしょう。
そこで、今回は、築30年の一戸建て住宅を売却する方法5つを解説します。あわせて、築30年超の戸建て住宅が不動産市場で敬遠される理由やデメリットの克服方法、どうしても買主が見つからないときの代替手段なども紹介するので、さいごまでご一読ください。
目次
- 1 築30年の一戸建てを売却するのが難しい理由3つ
- 2 築30年の一戸建てを売却する方法5つ
- 3 築30年の一戸建てを高額売却するコツ4つ
- 4 築30年の一戸建て住宅売却時の注意点6つ
- 5 築30年超の戸建て住宅の早期売却は築古物件の取扱いに慣れた不動産業者へご相談を
築30年の一戸建てを売却するのが難しい理由3つ
一般的に、築30年の一戸建て住宅は売却が難しいと言われています。その理由は以下3点です。
- 築30年超の一戸建ては建物自体の資産価値がゼロに近い
- 築30年超の一戸建ては新耐震基準・2000年基準を満たしていない危険性がある
- 築30年超の一戸建ては瑕疵などのトラブルを抱えている可能性がある
どのような不動産を売却する場合でも、中古不動産市場における取引で成果を上げたいなら、物件の特性を踏まえたうえで適切な売却戦略を練る必要があります。特に、築古物件のような数々の懸念材料を抱える物件を売りに出す場合には、不動産市場にアプローチする姿勢は慎重であるべきです。
まずは、築30年の一戸建て住宅が不動産市場でどのように受け取られるかを正しく理解したうえで、所有物件の特徴に応じた処分方法を検討しましょう。
1.一戸建ては耐用年数22年を超えると資産価値が消滅するから
画像引用:中古住宅流通、リフォーム市場の現状 – 国土交通省HP
築30年を超える一戸建て住宅は建物の資産価値がゼロに近い状態になっているのがほとんどです。
中古住宅の購入者は、市場に出回っている不動産の現在の資産価値だけではなく、将来の売却可能額も視野に入れて購入の是非を判断します。そして、高いお金を払って不動産という資産を購入する以上、「売買契約の目的物はできるだけ資産価値が高い方が良い」と考える人が多いのが実情です。
したがって、資産価値がゼロに近い築30年の建物は中古不動産市場で不人気物件として扱われるため、売却が難しくなると考えられます。
一戸建て住宅の売却相場の変遷
それでは、一戸建て住宅の築年数に応じた売却相場について具体的に見ていきましょう。
居住用建物(木造戸建て住宅)の売却相場は、「22年の減価償却年数」を基準に算出されるのが一般的です。
戸建て住宅の築年数 | 標準的な売却相場 |
---|---|
築年数0年~5年 | 購入価格の7割以上 |
築年数5年~10年 | 購入価格の5割~7割程度 |
築年数10年~15年 | 購入価格の2割~5割程度 |
築年数15年~20年 | 購入価格の1割~2割程度 |
築年数20年~30年 | ほぼ0円~購入価格の1割程度 |
築年数30年~40年 | ほぼ0円~購入価格の1割程度 |
築年数40年~50年 | ほぼ0円~購入価格の1割程度 |
築年数50年超 | ほぼ0円~購入価格の1割程度 |
つまり、築年数20年を超えると、築30年であろうが、あるいは築40年・築50年であろうが、「建物の資産価値」はこれ以上下がる余地がないレベルにまで下落するということです(もちろん、現実問題として「住めるかどうか」という意味では差があります)。
したがって、「中古の戸建て住宅を購入して10年後に売却したい」というように、将来的な転売を想定して不動産を手に入れたいと希望する購買層からは築30年の戸建て住宅は敬遠されるでしょう。
もちろん、リノベーションや修繕工事を実施して建物の資産価値を向上させた後に高値成約を目指すのも間違いではありませんが、費用倒れになるリスクがあるのでご注意ください。
2.築30年の一戸建ては現在の耐震基準を満たしていない可能性があるから
築30年を超える一戸建て住宅のなかには、現行の新耐震基準を満たしていない物件が存在するので、安全面への懸念から中古不動産市場で買い手が見つかりにくい状況におちいります。
地震の多い日本では、定期的に建築基準法が改正されて、建物の構造や建材などについてさまざまな基準がアップデートされているのが実情です。そして、築古物件の安全性との関係における重要な改正ポイントとして「耐震基準」が挙げられます。
そして、以下のように、1981年及び2000年の建築基準法改正で耐震基準について大きな制度変更がありました。そのため、築40年超の一戸建て住宅は建築確認時に新耐震基準を満たしていない可能性が高いですし、築30年の一戸建て住宅でさえ「2000年基準」の要件をクリアしていないのが実情です。
- 旧耐震基準(建築確認日が1981年以前)
- 旧耐震基準は、震度5強程度の「中規模地震」に数度見舞われても建物が「損傷しない」ような許容応力度計算(一次設計)が中心の耐震設計のこと。中規模地震が起こっても損傷・倒壊の危険性はありませんが、震度6以上の地震を想定した建材強度になっていないので、東日本大震災のような大規模地震が発生したときに建物に大きな欠損・崩落のリスクが付きまとう。
- 新耐震基準(建築確認日が1981年~2000年)
- 新耐震基準は、阪神淡路大震災クラスに匹敵する震度6強~7程度の「大規模地震」に見舞われても建物が「倒壊・崩壊しない」ような保有水平耐力計算(二次設計)が中心の耐震設計のこと。建物が変形(損傷)することによって大地震のエネルギーを緩和し、最悪の結末である「倒壊」だけは避けられるようになっている。ただし、2000年基準のような「地盤を含めた建築物のバランス」という観点は欠落しているので要注意。
- 2000年基準(建築確認日が2000年以降)
- 2000年の建築基準法及び住宅の品質確保の促進等に関する法律の改正では、阪神淡路大震災による被害を受けて、木造住宅の安全性を確保する目的で「2000年基準」が設定された。従来の新耐震基準と建物強度は同レベルに設定されているが、地盤に応じた基礎の設計・接合部の金具取り付け・偏りのない耐力壁の配置などの検査項目が追加されて、新耐震基準以上に大地震への耐久可能性が高められている。
数十年以内に「南海トラフ巨大地震・首都直下地震」などの大地震が発生すると予測されている今日において、「住宅の安全性」は中古不動産市場において重要な検討項目のひとつです。
したがって、築30年超の一戸建て住宅の高値売却を希望するなら、耐震診断・ホームインスペクションなどにより耐震基準適合証明書を取得して住宅の安全性を証明するのが適切な方法だと考えられます。
また、一戸建て住宅の状況や売却方針次第では、耐震工事を実施して建物強度を高めたり、逆に、解体工事を実施して更地として売却するのも選択肢のひとつです。
なお、耐震性の懸念を払拭するためのコストを投下するのが面倒なら、現況のまま不動産買取業者に引き取り依頼をするとスムーズでしょう。
3.築30年の一戸建ては建物が傷み・トラブルを抱えている可能性が高いから
築年数が増えるにつれて、建物な何かしらのトラブルを抱えるようになります。
つまり、新築物件・築浅物件と比べると懸念材料が多いため、中古不動産市場では購入希望者が集まりにくいのが実情です。
築30年を超える一戸建て住宅が抱える代表的なトラブル要因として、以下のようなものが挙げられます。
- 構造上の欠陥リスク
- 法規制上の課題や近隣との法的紛争リスク
- 健康被害を生じる懸念
築30年の一戸建て住宅売却の障害になり得る構造上の欠陥
築30年超の築古の一戸建てになると、経年劣化等が原因で以下のような構造面の脆弱性が露見するおそれがあります。
- 屋根や外壁の劣化による雨漏りやカビの繁殖
- 外壁下地や屋根材の劣化による耐久性・耐風性の低下
- 建物の基礎やコンクリートの毀損による地盤沈下
- 断熱材の施工不良による結露やシロアリ被害
- 水道管や排水管などの水回りや配線設備の劣化 など
まず、購買層からの構造上の懸念を払拭したいなら、ホームインスペクション等を実施して戸建て住宅の安全性を証明するのが有効な手段です。「築30年超の築古物件だが構造上は何も問題がないので安心して住める」とアピールできれば、仲介業者経由である程度の高値売却が可能でしょう。
これに対して、構造上の理由で欠陥住宅に該当する場合、中古不動産市場における高値売却を目指すなら、購入者自身で物件の劣化・損傷の修繕工事等を実施する必要があるでしょう。
ただし、修繕工事等を実施して戸建て住宅が万全の状態を回復したとしても、投下コストを回収できるだけの成約価格になる保証はありません。
したがって、費用倒れのリスクを回避したいのなら、瑕疵を残した現状のまま訳あり物件買取業者に引き取ってもらうか、建物を解体して更地として売却するしかないでしょう(ただし、解体費用の回収見込みが別途問題となります)。
築30年の一戸建て住宅売却の障害になり得る法的リスク
築30年超の一戸建ての場合、建物建設時とは周辺環境や法律の適用状況に変化があるため、以下のような法的リスクが売却の障壁になります。
- 建蔽率違反や採光不良などの違法建築物
- 建築後の法改正・都市計画による既存不適格建築物
- 接道条件を満たさない再建築不可物件
- アスベスト(石綿)などが使用されている
- 土地・建物を複数人で共有している
- 隣接地との境界が確定されていない など
建物が抱える法律上のトラブルは不動産購入者に引き継がれるため、法的問題がある戸建て住宅は不動産市場において敬遠されます。
もちろん、市場相場通りの成約を目指して現所有者の責任で法律紛争等を解決してから売りに出すのも間違いではありませんが、ここに挙げた法律問題を完全に克服するにはかなりの時間・労力・費用の負担を避けられません。
したがって、法律的な懸念事項を抱える築30年の戸建て住宅の売却を希望するなら、高値での取引を期待するのではなく、「処分時期の前倒し」を最優先に考えて訳あり物件買取業者に相談するのが適切だと考えられます。
築30年の一戸建て住宅売却の障害になり得る健康被害問題
築30年を超える築古物件は、以下のような健康被害の問題を抱えている可能性があります。
- シックハウス症候群
- カビ・ダニ・PM2.5・SPMなどによる健康被害
- 戸建て住宅の傾斜による片頭痛・自律神経の乱れ など
購入希望者が健康・健全な住環境を欲するのは当たり前のことです。
したがって、健康被害の懸念を生じる戸建てを適正価格で売却するなら、売主側の責任でシックハウス症候群等の対策工事を実施するべきだと考えられます。また、費用負担をする経済的余裕がないなら、不動産買取業者に相談するとスムーズでしょう。
【注目!】築30年の戸建て住宅は中古不動産市場で相当数取引されている
画像引用:令和3年度 住宅市場動向調査報告書 – 国土交通省住宅局
ここまで紹介したように、築30年超の戸建て住宅はさまざまな原因で売却しにくいと言われていますが、実際の取引状況を確認すると、戸建て・マンション問わず、築30年程度の築年数であれば相当数の取引事例が存在することが分かります。
たとえば、令和3年度に売却された既存中古戸建て住宅の建築時期の分布状況は以下の通りです。
建築時期 | 築年数 | 購入者の割合 |
---|---|---|
平成27年~ | ~5年 | 14.8% |
平成17年~平成26年 | 5年~15年 | 18.3% |
平成7年~平成16年 | 16年~25年 | 21.0% |
昭和60年~平成6年 | 26年~35年 | 20.3% |
昭和50年~昭和59年 | 36年~45年 | 9.3% |
~昭和49年 | 46年~ | 16.3% |
令和3年度に売却された中古戸建て住宅の平均築後年数は23.0年で、築年数16年~35年がコア層になっています。
したがって、「築30年の戸建て住宅はそもそも売れない」などと悲観的になる必要はないので、築古物件の販売実績豊富な仲介業者をパートナーに選んで、中古不動産市場から向けられる不安感を丁寧に払拭しながら適切な売却戦略を展開しましょう。
築30年の一戸建てを売却する方法5つ
築30年の一戸建て住宅を売却するときには、以下5つから建物の状況・オーナーの希望に適した方法を選択しましょう。
- 不動産仲介業者に依頼して好条件で購入してくれる買主を探す
- 築30年の戸建て住宅を「古家付き土地」として低価格で売りに出す
- 築30年の戸建て住宅は解体して「更地」として売却する
- 空き家バンクに登録して購入希望者の登場を気長に待つ
- 不動産買取業者・訳あり物件買取業者に相談して今すぐ売却処分する
1.不動産仲介業者に築30年の一軒家売却を依頼をする
「可能な限り好条件の売買契約を実現したい」と希望するなら、築30年の戸建て住宅売却は不動産仲介業者に依頼するのがおすすめです。
仲介業者は、売主・貸主の依頼を受けて、一般不動産市場から条件に見合った買主・借主を探す役割を担います。売買契約書の作成や当事者間の条件折衝だけではなく、広告宣伝活動や内覧サポートなどにも力を入れてくれるので、仲介業者経由で戸建て住宅を売りに出せば、売主側はほとんど負担なく希望条件での成約を実現できるでしょう。
ただし、仲介業者経由で戸建て住宅の売買契約が成立した場合には、成功報酬として以下の範囲で仲介手数料が発生する点に注意が必要です(宅地建物取引業法第46条、「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」第2条)。また、戸建て住宅を好条件で売却するには、調査費用・ハウスクリーニング費用などの負担も避けられません。
築30年の戸建て住宅の売値・買値 | 仲介手数料の上限額 |
---|---|
200万円以下 | 成約価格の5%(+ 消費税) |
200万円超400万円以下 | 成約価格の4%(+ 消費税) |
400万円超 | 成約価格の3%(+ 消費税) |
つまり、「仲介業者経由に依頼すれば、市場相場(あるいはそれ以上)の高額で築30年の一戸建ての売却を目指せますが、取引コストが上乗せされるので、手元に残る金額は売却価格から目減りする」ということです。早期の成約実現を目指すなら、築古戸建て住宅の販売実績豊富な仲介業者を厳選するか、仲介契約(媒介契約)の内容を吟味する必要があります。
「購入希望者が見つからず徒に売却期間が伸びるのを避けたい」「売却費用が膨れ上がるのを避けたいので今すぐに一戸建て物件を手放したい」と希望するなら、不動産買取業者に相談するとスムーズでしょう。
また、仲介業者のなかには、一定期間売却活動を展開しても購入者が現れなかった場合に備えて、買取保証サービスを提供している業者も少なくありません。「一般の不動産市場での売れ行きを確認した後に買取にシフトするのもアリ」と考えるなら、付帯サービスが充実した不動産仲介業者を選びましょう。
- 築30年の戸建てを仲介業者経由で売却するメリット
- ・中古不動産市場の相場以上の高値売却を目指しやすい
・築古物件の販売ノウハウ豊富な業者に相談すれば丁寧な売却サポートを受けられる - 築30年の戸建てを仲介業者経由で売却するデメリット
- ・売り出し価格などの条件次第では買い手が見つからず売却活動長期化リスクを避けられない
・媒介契約の内容に注意しなければ仲介業者がやる気を出してくれない
・仲介手数料や管理コストを差し引きすると買取業者への即時売却と利益が変わらない可能性がある
2.築30年の一軒家を古家付き土地として売却する
所有物件がさまざまなトラブル因子を抱えているために高額売却を期待できない場合には、「古家付き土地」として売却すると買い手が見つかりやすいでしょう。
「古家付き土地」とは、築30年超の戸建て住宅のような資産価値がゼロに近い物件が付属した土地のことです。取引対象物はあくまでも「土地」と扱われます。
築30年の一戸建てを「古家付き土地」として売却する場合、「建物の資産価値はゼロ、土地のみの市場相場」で売り出し価格を決定するのが一般的です。
これによって、「築古物件購入後に好み通りにリフォームやリノベーションを実施したい」「古民家風の建物を使ってカフェなどを経営したい」「購入後に建物を解体してマイホームを新築したい」など、購入後の使用用途についてさまざまな希望を有する購買層をターゲットにできるでしょう。売主側も、リフォーム工事費用や解体工事費用を節約して売却できるのでお財布にも優しいと考えられます。
以下のメリット・デメリットを総合的に考慮して、古家付き土地として売却すべきかを仲介業者と相談しましょう。
- 築30年の戸建てを古家付き土地として売却するメリット
- ・昨今のリノベブームに対応できるので販促ターゲットを拡大しやすい
・建物の解体費用や依頼負担が買主負担になる
・土地にかかる固定資産税・都市計画税の優遇措置を受けられるので買いやすい
・住宅ローン審査に通りやすいので購入のハードルが下がる - 築30年の戸建てを古家付き土地として売却するデメリット
- ・売価から解体費用・リフォーム費用などがディスカウントされるリスクがある
・「新築用の土地だけが欲しい」という購買層がターゲットから外れる可能性がる
・契約不適合責任(瑕疵担保責任)を追及されるリスクがある
3.築30年の一戸建てを解体して土地のみで売却する
築30年の戸建て住宅が抱える欠陥が深刻で、リノベーションやリフォーム工事程度では居住できるレベルまで回復できない状況なら、建物を解体して更地として売却するのも選択肢のひとつです。
「古家付き土地」として売却するときとは異なり解体費用を売主側で負担しなければいけませんが、「新築マイホーム用の住宅用地だけが欲しい」という購買層だけにフォーカスできるので、売却活動を効率的に進めやすいでしょう。
解体工事のメリット・デメリットや所在エリアの需要動向などを総合的に考慮して、所有物件にとって適切な売却方法を選択してください。
- 築30年の戸建てを解体して売却するメリット
- ・使用用途が限られる築古物件が存在するよりも土地だけの方が流通しやすい
・成約に至るまでの建物管理コストや所有者責任・倒壊リスクを回避できる
・土地面積や需要状況次第では分筆して売却することも可能 - 築30年の戸建てを解体して売却するデメリット
- ・固定資産税と都市計画税の軽減特例の対象外になるので税負担が重くなる
・解体費用や残置物の処分費用が発生する
・建物滅失登記の手続き負担が発生する
・建物を取り壊すと取り返しがつかず、リノベやリフォーム希望者が販促ターゲットから外れる
4.空き家バンクに登録して築30年の戸建て住宅の購入者を待つ
「仲介業者に相談しても築30年の戸建て住宅がなかなか売れない」「買取業者に廉価で引き取ってもらうのはもったいない」という状況なら、空き家バンクに登録して気長に購入希望者を募るのも選択肢のひとつでしょう。
空き家バンクとは、全国の自治体が運営するマッチングプラットフォームのことです。登録されている物件情報を閲覧した購入希望者・賃借希望者からの問い合わせを受けて、当事者間で直接売却・賃貸交渉を行うシステムになっています。戸建て住宅所在エリアの空き家バンクについては「全国地方公共団体空き家・空き地情報サイトリンク集」から検索してください。
不動産業者は営利目的で戸建て売却を請け負いますが、自治体運営の空き家バンクは地域復興や空き家対策などの公益目的でサイトを運営しているので、不動産購入希望者を売主自身で厳選しやすいです。
問い合わせがない限り戸建て住宅は所有し続けなければいけませんが、“気持ちの良い取引”を最優先にするなら空き家バンクへの登録をご検討ください。
- 築30年の戸建て住宅を空き家バンクで売却するメリット
- ・仲介手数料や調査費用の負担を避けられる
・誰に売るかを売主自身だけで決められる
・移住ブームの恩恵で田舎や僻地の戸建て住宅でも売却市場に乗せやすい
・自治体の補助金制度をオプション化して購入希望者を募れる - 築30年の戸建て住宅を空き家バンクで売却するデメリット
- ・当事者間で条件交渉や手続き進行を進める必要がある
・司法書士や弁護士への依頼料が別途発生する
・杜撰な取引をすると契約不適合責任を追及されるリスクがある
・積極的な営業活動はできないのでいつ買主が現れるか分からない
参照:「全国版空き家・空き地バンク」について – 国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課
5.不動産買取業者に築30年の一戸建てを引き取ってもらう
築30年の戸建て住宅は築年数だけで敬遠されかねませんし、損傷や劣化具合を克服できないまま中古市場に乗せても購入希望者が現れずに「出回り物件」化するおそれもあります。
まず、信頼できる仲介業者に依頼しても3カ月以内で成約に至らない場合には、現況のまま売却するのが難しいと理解してください。
そのうえで、売却活動を継続する余裕がなかったり、有効活用や解体・リフォームをする選択肢が排除されているのなら、不動産買取業者・訳あり物件買取業者に相談するのがおすすめです。
なぜなら、不動産買取業者は依頼物件を現所のまま即時引き取ってくれるので、戸建て住宅の管理・維持負担から今すぐ解放されるだけではなく、“負の遺産”と化した築30年の戸建て住宅の現金化にも成功するからです。
したがって、築30年の一戸建てを売却するスピード感を最優先にするなら、買取業者への依頼が最適と言えるでしょう。
- 築30年の戸建てを不動産買取業者に売却するメリット
- ・築古物件が抱える瑕疵やトラブルそのままで売却できる
・最短即日で売却手続きが完了するので手間がかからない
・戸建ての管理コストや所有者責任、ストレスから今すぐ免れられる
・買取が決まったら今すぐまとまった現金が手元に入ってくる - 築30年の戸建てを不動産買取業者に売却するデメリット
- ・売却相場から数割ディスカウントされた査定額が提示される
・収益化を諦めると大きなビジネスチャンスを失うリスクがある
築30年の一戸建てを高額売却するコツ4つ
築30年を超える一戸建て住宅は、現況のまま売りに出しても高値で取引するのは難しいでしょう。
ただし、以下4点に留意するだけで、築30年の戸建て住宅とは思えないほど高額での成約を目指せます。
- 売却相場や類似物件との比較において不自然な売り出し価格は設定しない
- ホームインスペクション等を実施して築30年の築古物件でも安心感をアピールする
- 築30年以上の一戸建て売却に強い不動産仲介業者を厳選する
- 専属専任媒介契約で築30年の戸建て住宅を積極的に宣伝広告してもらう
1.市場調査をして類似物件と同程度の価格を設定する
不動産所有者が「土地・建物はできるだけ高額で売却したい」と考えるのは当然です。
しかし、売主の希望だけを反映した売り出し価格ではいつまでも購入希望者は現れません。なぜなら、中古不動産市場には売却相場が存在するため、物件の特性を踏まえた適正範囲で値付けされていなければ購買層から見向きもされないからです。
したがって、築30年を超えるような築古戸建てだからこそ、以下の要素を総合的に考慮して冷静な売り出し価格を最初から設定することが高値成約実現に繋がると考えられます。
- 同条件の建物(築年数・立地条件・敷地面積など)の売り出し価格や成約価格(REINS Market Informationが有用です)
- 土地の実勢価格・地価公示価格・相続税評価額(路線価)(土地総合情報システムが参考になります)
- 複数の仲介業者から得られた査定価格
- リノベーションや解体工事などに投下した費用 など
希望価格と売却相場に乖離がある場合、売主の意向が成約価格に反映される可能性は低いです。
最初から無難な価格設定をするか、「高値売却よりも早期処分」に戦略変更して不動産買取業者に相談するのが適切でしょう。

「最初は高めの売り出し価格を設定して、市場動向をチェックしながら段階的に値下げをする」という手段は高値成約を目指すうえで悪手です。なぜなら、購入希望者は流通している不動産の情報を随時確認しているので、更なる値下げを期待して問い合わせに至らないからです。最初から適正価格を設定して、売却活動期間の長期化を回避しましょう。
2.ホームインスペクションの実施・既存住宅瑕疵担保責任保険への加入で安全性を証明する
築30年超の戸建て住宅のような築古物件を売却するときには、不動産の安全性を証明するためにホームインスペクション(住宅診断)を実施するのがおすすめです。施工・劣化状況などの客観的な安全性が証明できれば、購買層の安心感も高まるでしょう。
また、厳しいホームインスペクションを受けた中古不動産は、既存住宅瑕疵担保責任保険への加入も選択肢に入ります。これによって、築30年の一戸建て売却後の契約不適合責任へのリスクヘッジになるだけではなく、「既存住宅瑕疵担保責任保険に加入できる程度に安全性が高い建物だ」というアピールにも繋がります。
したがって、築30年の一戸建てを出来るだけ高値で売却したいなら、住宅保証機構・株式会社日本住宅保証検査機構(JIO)などの住宅瑕疵担保責任保険法人に相談するか、全国のホームインスペクター(住宅診断士)にお問い合わせください(住宅診断士は「NPO法人 日本ホームインスペクターズ協会HP」から確認できます)。
- 築30年の戸建て売却時にホームインスペクション等を実施するメリット
- ・中古不動産市場からの信頼感が増す
・売却後に発覚した瑕疵にまつわる損害賠償責任や修繕費用などをまかなえる - 築30年の戸建て売却時にホームインスペクション等を実施するデメリット
- ・検査実施費用や既存住宅瑕疵担保責任保険料の負担が発生する
・検査をクリアできないと瑕疵担保保険に加入できない(旧耐震基準物件など)
・業者によってインスペクション項目や調査方法が異なるため100%の保証ではない
なお、既存住宅売買瑕疵保険の詳細については、国土交通省HPの「既存住宅売買瑕疵保険について」よりご確認ください。
3.築古物件の売却ノウハウを有する不動産仲介業者に依頼する
築30年の一戸建て住宅の高値売却を目指すなら、築古物件の販売実績・ノウハウが豊富な不動産仲介業者を選ぶのが肝心です。なぜなら、仲介業者ごとに取扱い物件や顧客層・得意とする販売ジャンルが異なるので、ミスマッチが起こると所有物件のスムーズな成約が実現しないおそれが高いからです。
物件の所在エリアや特質次第で仲介業者選びの基準は異なりますが、一般的には、築30年の戸建て売却の依頼先は以下のような仲介業者がおすすめだと言われています。
- 物件所在エリアのリアルタイムの市場動向に詳しい
- 全国展開の大手仲介業者ではなく、地域密着型の中小仲介業者
- 付帯サービスが充実している(インテリアレンタル・ハウスクリーニング・売却保証など)
- HPなどに掲載されている築古物件の販売実績が豊富
- 築古物件売却についての良いレビュー・口コミ評判が集められている
- 熱意のある営業担当者がいる
- 行政処分などを受けた履歴がない
このような築古物件の取扱いに強い仲介業者を見つけるには、不動産一括査定サイトを活用して複数業者の特徴を見比べる方法が有用です。24時間無料でインターネットから利用できるので、信頼できるパートナー選びにご活用ください。
4.築30年の戸建て売却の営業活動に力を入れて欲しいなら専属専任媒介契約を選択する
築30年の一戸建て住宅の売却成果を真に求めるなら、不動産仲介業者との間で締結する「仲介契約・媒介契約」の内容に注意しなければいけません。
なぜなら、仲介契約の内容は以下3種類に区別されるところ、専属専任媒介契約が不動産仲介業者の営業意欲を促進するものであり、専任媒介契約・一般媒介契約は仲介業者のやる気を削ぐ危険性があるからです。
媒介契約ごとの相違点 | 専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 |
---|---|---|---|
同時に依頼できる仲介業者数 | 1社のみ | 1社のみ | 複数業者可 |
直接取引の可否 | ✕ | 〇 | 〇 |
依頼物件のレインズへの登録義務 | 必須 | 必須 | 任意 |
仲介契約の契約期間 | 3カ月 | 3カ月 | 任意 |
販売状況の報告頻度 | 1週間に1回以上 | 2週間に1回以上 | 任意 |
不動産業者側から見ると、専属専任媒介契約の場合、依頼を受けた築30年の一戸建てが成約に至ったときの仲介手数料をかならず獲得できる点でメリットが大きいです。つまり、報告義務や契約期間について厳格なルール設定がされている代わりに、仲介契約の有効期間内に成果を上げれば確実な売上げになるということです。
これに対して、専任媒介契約では直接取引が許されていますし、一般媒介契約では他社に問い合わせを奪われるリスクがあります。
したがって、営業活動・広告活動に力を入れてもらうためには、仲介業者との間で締結する契約内容は「専属専任媒介契約」が最適だと言えるでしょう。
築30年の一戸建て住宅売却時の注意点6つ
さいごに、築30年超の一戸建て住宅の売却活動で押さえるべき6つの注意点について確認していきましょう。
- 契約不適合責任(瑕疵担保責任)への配慮
- 売却手続き円滑化のための事前準備(家財道具や不用品の撤去など)
- リノベやリフォーム・解体工事などで投下した費用の回収可能性
- 築古物件が抱えがちな法的問題の克服難易度の高さ
- 売却時期が遅れることによって発生するコスト負担や所有者責任の重さ
- 売却以外の処分方法を検討する柔軟さ(収益化や有効活用など)
1.築30年の一戸建て売却は後から契約不適合責任(瑕疵担保責任)を追及されるリスクがある
築30年のような築古の一戸建て住宅を売却するときには、売却後に契約不適合責任(瑕疵担保責任)を追及される危険性があるので、事前にケアをしておくことが重要な作業となります。
契約不適合責任は2020年の民法改正で瑕疵担保責任から名称された売主に課される責任のことです。売買や請負の目的物に、契約時には想定していなかったような瑕疵(数量・種類・品質などの齟齬、従来「隠れた瑕疵」と呼ばれていたもののこと。)が存在することが目的物引渡し後に明らかになった場合に、売主は以下のような法的責任を追及されます。
- 履行の追完請求(支柱がシロアリ被害にあっているときの修繕工事など)
- 代金の減額請求(亀裂が入った排水管の取り換え工事費用相当額を返還してもらうなど)
- 損害賠償請求(天井の亀裂による雨漏りが原因で家財等に生じた被害分の弁償など)
- 契約解除(履行追完などで対処できない場合に限る)
中古の戸建て住宅の売買の場合、契約不適合責任を追及される可能性があるのは、「買主が契約不適合に相当する事情があることを知ってから1年以内」です(民法第566条)。つまり、状況次第では一戸建て住宅を引き渡してから数年が経過してもなお、契約不適合責任を追及され得る不安定な立場に置かれるということを意味します。
したがって、築30年の一戸建て住宅を売却するときには、事前にホームインスペクションを実施して売主・買主間で不動産の性質について共通認識を形成しておいたり、売買契約書のなかに「契約不適合責任の全部免責条項」を掲げてリスクヘッジしておくのがおすすめです。
参照:住宅業界に関連する民法改正の主要ポイント – 国土交通省HP
2.築30年の戸建て売却の円滑化を目指すなら家財・不用品の処分は必須
築30年の一戸建て住宅の売却活動をスムーズに済ませたいなら、家財道具や不用品などは事前に処分するべきです。
たとえば、解体工事を実施して更地として売却する場合、解体業者は建物自体の取り壊し・廃材の処分は担当してくれますが、家具や不用品・物置などは引き取ってはくれません。家財等が搬出された後でなければ解体工事をスタートできないので、これでは円滑な売却手続きの妨げになるでしょう。
また、仲介業者経由で一般向けに売り出す場合でも、古い家具や電化製品などは内覧時の印象を悪くするので処分しておいた方が無難です。室内に何もない方が空間を広く見せれますし、もし見栄えを良くしたいなら仲介業者の付帯サービス(ホームステージングやインテリアのレンタルなど)を利用すれば良いだけです。
したがって、築30年の一戸建て住宅を売却処分するなら、事前に中古品の買取業者や遺品整理業者に相談して引き取ってもらう方法などをご検討ください。
3.築30年の戸建て売却では費用倒れリスクに注意しよう
仲介業者経由で一戸建て住宅を高値で売却するためには、リフォーム工事や耐震工事などを要する場合があります。また、更地として売却するにも解体工事が必要ですし、アスベストなどのトラブル要因を抱える場合には除去工事を避けられないでしょう。
このように、築古物件を売却する前に事前準備を要する場合には、そのために必要なコストに注意しなければいけません。なぜなら、確かに仲介業者経由で売却すれば売却相場通りの成約を実現できる可能性があるものの、市場動向やタイミング次第では投下コストを回収できずに準備をした分だけ損失になる危険性があるからです。
物件の所在エリアや規模・状況によって費用感は異なりますが、工事ごとに発生するコストについては以下をご参照ください。
標準的なリフォーム・リノベーション費用
戸建て住宅の場合、フルリフォームをすると1,000万円以上の費用が発生することも少なくありません。
また、欠陥部分だけの修繕工事でも、箇所によって以下のような工賃が発生するのが一般的です。
修繕箇所 | リフォーム価格相場 |
---|---|
システムキッチン | 50万円~100万円程度 |
トイレ | 10万円~50万円程度 |
風呂・浴室 | 50万円~150万円程度 |
壁紙の張り替え | 1,000~2,000円/㎡程度 |
フローリングの張り替え | 2万円~5万円/畳程度 |
間取り変更工事 | 10万円~数百万円 |
外壁の修繕 | 張り替えで最大300万円程度 |
屋根の修繕 | 葺き替えで最大200万円程度 |
築30年の一戸建ての売価の最低ラインは「土地のみの査定額」です。建物をどれだけ住みよい環境にしたとしても、建物自体の資産価値が大幅に上昇することは期待しにくいのが実情です。
したがって、リフォーム工事・リノベーション工事実施後に売却するときには、かならず仲介業者に費用の回収可能性を相談したうえで、工事実施の是非・工事の範囲を決定しましょう。
その他の工事費用
築30年の一戸建て売却時に想定される諸工事の費用相場は以下の通りです。建物の状況や依頼する業者によって費用体系は異なる点にご留意ください。
工事の施工項目 | 費用相場 |
---|---|
解体工事 | 3万円~5万円/坪程度(木造住宅の場合) |
庭木の伐採・伐根 | 数万円/本 |
庭石の撤去 | 30円~40円/1kg程度 |
耐震補強工事 | 150万円前後(築30年の場合) |
アスベスト除去工事 | 1万円~8万円/1㎡程度 |
シックハウス症候群対策工事 | 30万円~100万円程度 |
地中埋設物の撤去費用 | 1万円~2万円/㎡程度 |
これらの費用負担を煩わしく感じるなら、不動産買取業者・訳あり物件買取業者に相談するのがおすすめです。築30年の戸建て住宅がどのようなトラブルを抱えていたとしても、トラブル要因込みで現況のまま買い取ってくれるでしょう。
4.築30年の戸建て住宅が抱える法律問題を独力で克服するのは難易度が高い
築30年の一戸建て住宅が法律的な問題で売却しにくい場合には、所有者自身の責任でトラブルを克服して売却しやすい状況を作り出すのも間違いではないでしょう。
しかし、以下で紹介するような解決方法は途方もない時間や労力を要するため、土地・建物の早期売却を希望するならおすすめできません。
築30年の戸建て住宅を所有し続ける負担・責任から早期に逃れるためにも、訳あり物件買取業者に相談をして即時引き取りをご検討ください。
再建築不可物件に該当する一戸建ての売却方法
接道義務違反などが原因で再建築不可物件に該当する場合、建物を取り壊して更地として売却する方法はおすすめできません。
なぜなら、「建物を新築できない土地」として売りに出さざるを得ないため、購入希望者が現れない可能性が高いからです。
したがって、再建築不可物件を売却する場合には、以下の方法が適切だと考えられます。
- 隣地所有者に買い取ってもらう
- (違反状態を改善できるなら)隣接地を購入してからまとめて売却する
- 自治体に相談して接道義務を満たすように道路を改修してもらう
隣接地との境界が不明瞭な一戸建ての売却方法
築年数が古い物件の場合、隣接地との境界が曖昧で所有権の範囲を明確化できないケースが散見されます。
所有権の範囲が不明確だと売り出し価格を決定できないだけではなく、将来的な法的争訟リスクを懸念して購買層から嫌われるでしょう。
境界トラブルの解決方法は以下の通りです。信頼できる仲介業者なら土地家屋調査士などを紹介してくれるでしょう。
- 隣接地の所有者と共同して土地家屋調査士に境界確定手続きを依頼する
- 境界問題センター(土地家屋調査士会)のADRを頼る
- 法務局の筆界特定制度を利用する
- 民事調停・民事裁判で境界を確定する
- 額縁分筆で境界確定紛争を回避する
共有関係が複雑な一戸建ての売却方法
築30年の一戸建て住宅を複数人で共有している場合、不動産を売却するには共有者全員の合意が必要なので、売却手続きが円滑進まない危険性があります。
共有名義不動産を円滑に売却する方法は以下の通りです。いずれの方法も難しい状況なら、共有持分権だけを訳あり物件買取業者に引き取ってもらうのがスムーズでしょう。
- 共有者から一人を選出して売却活動の代理権を授与する
- 共有名義人間で取引して単独所有状態を作り出す
- (連絡の取れない共有者が居るなら)不在者財産管理人制度・失踪宣告制度を活用する
5.築30年の戸建ての高値成約に固執すると売却時期が遅れるだけ
高額売却に固執し過ぎると、築30年の一戸建て住宅を手放す時期がどんどん遅れて、さまざまな費用負担・所有者責任に悩まされるリスクがあります。
そもそも、不動産は所有者になるだけで負担・責任が発生するものです。売却予定の使い道のない不動産を維持し続けると、以下のストレス要因に苛まれることになるので、高値成約は意識し過ぎないようにしましょう。
- 固定資産税やメンテナンス費用・光熱費・火災保険料などの経済的負担
- 不動産をめぐる事故・事件発生時に問われる民事責任・刑事責任
- 管理が行き届かず「特定空き家」に指定された場合に行政から科されるペナルティ
- 近隣住民からの苦情 など
したがって、不動産仲介業者に依頼してから3カ月~半年程度が経過しても中古市場からの反応がない場合には、高値成約を諦めて買取業者に引き取ってもらうのが適切だと考えられます。
6.成約見込みの薄い築30年の戸建物件は売却以外の選択肢も視野に入れよう
「仲介業者に依頼してもなかなか売れないが、買取業者に引き取ってもらうのはもったいない」と感じるなら、以下のような売却処分以外の方法をご検討ください。
- 買主ではなく借主を探して賃料収入を得る
- アパート経営や太陽光発電などの収益化を目指す
- NPOや近親者に無償譲渡・寄付をして有効活用してもらう
- 別荘やセカンドハウスと割り切って使い続ける
築30年超の戸建て住宅の早期売却は築古物件の取扱いに慣れた不動産業者へご相談を
築30年の一戸建て住宅は売却が難しいと言われますが、状況に応じて工夫を凝らせば希望に近い条件で買い取ってもらえます。
ただし、効率良く売却活動を実施したり、リフォーム工事等の要否を判断したりするには、専門業者への相談が不可欠です。
不動産一括査定サイトなどを有効活用して、所有物件売却を任せられるパートナーを厳選してください。
その一方で、「生涯住み続けるための中古住宅を探している」「建物にガタがきたら自分でリフォーム工事を実施して住み続けたい」というように、将来的な転売を視野に入れていない購買層にとっては、「築30年の建物は今以上に資産価値が下落するリスクがない」という意味でメリットが大きい物件と言えます。つまり、売却相場が低廉な築30年の戸建て住宅でも購買意欲があるターゲットにフォーカスできれば十分売却可能だということです。築古物件の販売に強い仲介業者に依頼をして高値成約を目指しましょう。