不動産売却の媒介契約の3つの種類はどれを選ぶべき?「専属」「専任」「一般」それぞれの特徴を徹底解説

不動産売却の媒介契約の3つの種類はどれを選ぶべき?「専属」「専任」「一般」それぞれの特徴を徹底解説

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初めての不動産売却。分からない事だらけで不安な気持ちになってしまうのは無理もありません。ブランドバッグを売るのとは違って、売却価格は数百万、数千万ですから、慎重になってしまうのは当然でしょう。

さて、不動産(戸建、マンション、アパート等全て)を仲介で売却する際には、売りたい人と不動産業者の間で「仲介契約」を結ぶ事が義務付けられています。これは、売主側が著しく不利益を被らないように保護し、取引の安全や流通の円滑化を図る為に導入されています。

この仲介契約には種類が3つあります。

  • 「専属専任媒介契約」
  • 「専任媒介契約」
  • 「一般媒介契約」

これらにはそれぞれメリット・デメリット存在しますが、基本的には不動産業者は自分達の利益が最大限になる事が前提ですから、全てを詳細に説明してくれるとは限りません。それぞれに良い点も悪い点もあるのですが、しっかりと全ての詳細を理解した上で、お客さん自身が契約方法を決定するのが一番です。

ここでは、実際に不動産業者に勤めている筆者が、出来る限り分かりやすく中立な立場で、この3つの媒介契約について解説していきます。

SHINJI
SHINJI

不動産会社に対して悪徳なイメージを持っている人は少なくありません。しかし、商活動を行っている以上、出来る限り利益が最大化される方向に沿って取引を進めるのは自然の事だと僕は考えています。今回は、不動産会社に勤めている僕が、これを読んだ人が損せず大事なお家を売却して頂きたいので、中立な目線で媒介契約の違いをお伝えしていきたいと思います。

3つの媒介契約の特徴を徹底解説

まずは簡単に、3つの媒介契約の内容にどんな違いがあるのか?簡単に項目を出すと以下の5点です。

仲介契約を締結できる会社数
仲介契約を他の会社と契約しても良いかどうか。
自分で買主を見つけて直接取引
自分でも販売活動を行い、直接買主を見つけても良いかどうか。
指定流通機構(レインズ)への登録義務
不動産会社が物件情報を閲覧出来るサービスへの登録が義務付けられているかどうか。不動産流通標準情報システムとも言う。
契約期間の定め
契約期間に制限があるかどうか。
販売状況の報告義務
今どんな販売活動を行っているのか?反響はどのようなものなのか?を報告する義務があるかどうか。

この中で重要になるのが、「他社と仲介契約を締結出来るのか?」「販売状況の報告があるかどうか?」の2点です。それぞれの項目を媒介契約ごとにまとめた表が以下になります。

  専属専任媒介契約 専任媒介契約 一般媒介契約
締結できる会社数 1社のみ 1社のみ 複数社可能
直接取引 不可 可能 可能
指定流通機構への登録義務 必須 必須 任意
契約期間の定め 3ヶ月以内 3ヶ月以内 なし(※原則3ヶ月)
販売状況の報告義務 1週間に1回以上 2週間に1回以上 なし

上記の表を見ていただければ、何となくそれぞれの媒介契約の違いが分かると思います。

これらの媒介契約は、国土交通省が定めた標準的な契約条項で、「標準媒介契約約款」に詳細が書かれています。
参考:宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款 – 国土交通省

ここから先は、「標準媒介契約約款」を参照の基、それぞれの特徴を深堀して解説していきましょう。

専属専任媒介契約の特徴

不動産会社が一番契約して欲しいのが、この「専属専任媒介契約」です。

改めて、専属専任媒介契約の項目を見ていただきましょう。

  • 仲介契約を締結できる会社数:1社のみ
  • 自分で買主を見つけて直接取引:不可
  • 指定流通機構(レインズ)への登録義務:必須
  • 契約期間の定め:3ヶ月以内
  • 販売状況の報告義務:1週間に1回以上

仲介契約をその1社だけに限定し、自分自身で買主を見つける事が出来ない契約方法です。

不動産会社が一番やる気を出す契約方法

何故、不動産会社が一番契約して欲しいのかというと、売主側からも買主側からも手数料をもらえる確率が最も高い契約だからです。

不動産仲介業者の主な収入源は「仲介手数料」です。仲介手数料は、言葉の通りで、仲介してあげる事の手数料としてもらう費用ですが、それは売却する側、購入する側どちらからにも請求して良いものです。(これを両手仲介と言います)

専属専任媒介契約は、仲介契約が出来るのがその会社のみですし、自分で買主を見つけて直接取引する事も出来ませんので、売買どちらの契約もその会社が携わる必要があります。ですから、最も儲かる契約方法といっても過言ではないのです。

一方で、売主側への縛りが強い契約方法ですから、契約期間を「3ヶ月以内」としています。(更新する事は可能ですが、自動更新は出来ず、その都度改めて契約を結ばなければなりません)

その為、不動産会社はこの期間中に出来る限り早く物件に興味を持っている見込み客を見つける必要がありますので、早く売れる可能性の高い契約方法という一面も持っているのです。

「囲い込み」が行われる可能性もある契約方法

一番儲かる契約方法と書きましたが、それはあくまで媒介契約を結んだ会社が買主を見つける事が出来ればの話。

指定流通機構(レインズ)への登録が義務と書きましたが、これは不動産業者なら誰でも閲覧可能な「不動産情報総合サービス」で、他の業者のお客さんが物件を買いたいと言って連絡をしてくる事もあります。この場合、買主側から報酬(仲介手数料)を得る事が出来るのは、買い手を見つけたのは他の業者です。

このような状況で、その業者のお客さんに買わせないように、「もう既に買い手が見つかってしまったんです」と嘘を言う事を「囲い込み」と言います。これで引き延ばして、自分達で購入希望者を見つける事が出来れば両手仲介が成立するからです。

専任媒介契約を受けた不動産会社が、このように故意に情報を隠蔽し、独占する事は法律で禁じられていますが、実際の所気付くのが難しい行為でもあります。自分自身で他の不動産業者を訪ね、「この物件を内見してみたいんですけど、問い合わせしてもらっても良いですか?」と聞く事も出来ますが、そこまで不信感がある状態だったら、早めに契約解除を申し出た方が良いかもしれません。

この囲い込みは、あくまで「そういった事が起こる可能性がある」という話で、実際に今の時代にガッツリそれをやってる会社は(ほぼほぼ)いないと言われています。気にしすぎは良くないですが、知識として入れておく分には良いでしょう。

専任媒介契約の特徴

専属専任媒介よりもやや緩いが、他の業者に依頼する事は出来ない専任媒介契約。

専任媒介契約の各項目を見直してみましょう。

  • 仲介契約を締結できる会社数:1社のみ
  • 自分で買主を見つけて直接取引:可能
  • 指定流通機構(レインズ)への登録義務:必須
  • 契約期間の定め:3ヶ月以内
  • 販売状況の報告義務:2週間に1回以上

自分で買主を見つけて直接取引が認められている部分が、専属専任媒介契約との大きな違いです。

自分でも販売活動をしてもOK

専属専任媒介契約との大きな違いがこの、「自分で販売活動をしても大丈夫か」という点です。

確かに、売却物件の敷地内に立て看板などを立てて、自分で問い合わせを受けたりするなど、自身の活動で買主を見つける事が出来れば、その分早く売却する事が出来ます。しかし、不動産の売買契約は非常に複雑で、重要事項説明や告知義務、瑕疵担保責任など、不動産事業に携わった事がなければ、契約書の内容を理解するのも難しいでしょう。

自分自身で司法書士などに契約書作成などを頼んで進める事も出来ない訳ではないですが、現実問題厳しいと言わざる得ません。という事で、基本的には信頼できる不動産仲介業者を見つける事が出来たのであれば、専属専任媒介契約で進めるのが良いでしょう。

一般媒介契約の特徴

最後に一般媒介契約の解説です。売主側からすると、複数社と契約出来るので有利に感じるかもしれませんが、一概にもそうとは言い切れません。

まずは、一般媒介契約の項目を改めてみてみましょう。

  • 仲介契約を締結できる会社数:複数社
  • 自分で買主を見つけて直接取引:可能
  • 指定流通機構(レインズ)への登録義務:任意
  • 契約期間の定め:なし(※原則3ヶ月)
  • 販売状況の報告義務:なし

複数社に依頼できる一方で、レインズへの登録が任意であったり、販売活動の報告義務もないので、業者側からすると一生懸命活動しなくても良い媒介契約という側面もあります。

多くの見込み客にアプローチ出来る媒介契約

一般媒介契約は、複数の不動産会社と契約出来るのので、多くの見込み客にアプローチする事が出来る契約です。

それぞれの不動産会社には、居住用の家や投資物件を探している見込み客がいます。その人達は、良い物件が見つからないか定期的に懇意にしている不動産業者に足を運びますし、そのお客さんの求めている物件を紹介してあげたいという気持ちも不動産会社にはあるので、紹介出来る物件のストックが多ければ多い程、不動産業者は助かるのです。

気合を入れて販売活動をする事はない

一方で、一般媒介契約の場合、気合を入れて販売活動をしません。いや、言い切る事は出来ないですが、ほとんどしないと言っていいでしょう。

販売活動とは「綺麗な販売図面を作る」「広告費をかけてチラシを撒いたり、不動産情報サイトに掲載する」などを指しますが、これをする為には人件費や広告費など実費がかかります。しかし、お金をかけたとしても、それより先に他の不動産会社がお客さんを見つけてしまったら、その労力とお金がパーになってしまうのです。

そんな事から、一般媒介契約で出てくる不動産には、力を入れて販売活動を行う会社が少ないという現状なのです。

近隣住民に売却を知られたくない場合はアリ

長い間住んでいた実家を手放そうと思った時、近隣住民に不動産を売却する事を知られたくない人もいるでしょう。しかし、「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」は契約をした時点で、指定流通機構(レインズ)への登録が義務付けられており、登録した時点である程度の人の目に触れる事になります。

周りに知られたくないから、専任契約でも「レインズに登録するのはやめてもらえませんか?」と伝える方もいらっしゃいますが、これは登録義務を怠った事になり、宅建業法違反に問われてしまう為、不動産業者は従う事が出来ません。損害賠償請求を起こされる可能性だってあるのです。

ですから、もしも近隣住民(親戚などにも)に内緒で売却活動を進めたい場合は、一般媒介契約が無難というケースもあるのです。

「専属」「専任」「一般」どの媒介契約を選ぶべき?

それぞれの媒介契約の詳細を説明しましたが、では実際に不動産を売却する際、どの媒介契約を選ぶべきなのでしょうか?それぞれに良い点・悪い点がありますので、一概にこれが良いと言う事は出来ず、売却したい人や物件の状況によって、選ぶべき媒介契約は異なります。

ここでは、それぞれの媒介契約をどんな状況で選べば良いのかについて解説します。

好立地で築浅の綺麗な物件であれば「一般媒介契約」

好立地で築浅の綺麗なマンション、戸建ての場合、何もしなくても買いたい人が集まってくる可能性が高いですよね。その場合は、多くの集客チャネルを持てる一般媒介契約がおすすめです。

ただし、「好立地・築浅・綺麗」というのはつまり「需要がある物件」と言う事ですが、売主側の判断でそれを見極めるのが難しいケースもあります。まずは、不動産一括査定サイトに申し込み、色々な仲介業者に物件の評価と査定価格を聞き、そこから販売戦略を立てるのでも問題ないでしょう。

築古で売れるか分からない物件であれば「専任媒介契約」

続いて、築古で売れるか分からない物件であれば、「専任媒介契約」もしくは「専属専任媒介契約」をおすすめします。

先ほど説明した通り、一般媒介契約ですと販売活動の報告義務がありませんから、値段の低い売れるか分からないような物件を一般媒介で契約してお願いしても、積極的に客付けしてくれるとは考えにくいです。

また、価格が低ければ低い程、仲介手数料も低くなってしまいますので、その点で見ても、一般媒介ですと買主を見つけるのが難航するでしょう。不動産の価値は、時間が経てば経つほど下がってしまいます。売却を決めた日から出来る限り早く買主を見つける事が、不動産売却において最も重要です。

どの媒介契約を選ぶにせよ、なかなか売れない物件というのはどうしても出てきます。その場合、不動産会社が直接買取を行う、「不動産買取」を選択肢のひとつとして考えておくのも重要です。「買取と仲介の違い」は下記記事にまとめてありますので、参考にしてください。

不動産の売却は「仲介業者」と「買取業者」どちらが良い?それぞれのメリット・デメリットを解説

不動産の売却は「仲介業者」と「買取業者」どちらが良い?それぞれのメリット・デメリットを解説

2021年7月30日

信頼できる不動産仲介会社や担当者に出会えたなら「専属専任媒介契約」

色々な不動産会社に回っている際に、「この人になら全てお任せしても良いな」と思えるくらい信頼出来そうな担当者に出会えたのであれば、「専属専任媒介契約」をおすすめします。不動産売却を成功出来るかどうかは、媒介契約を結んだ会社がどれだけ頑張ってくれるのか?真摯に対応してくれるのか?が全てです。

もちろん、全ての不動産会社の営業担当者は表向きには非常に良い顔をしてくるとは思います。その中でも、今後の生活の心配をしてくれたり、そんな説明をしても会社にとってメリットはなくても、売主側が損しないように全てを包み隠さず説明してくれるなど、信頼できる会社がどうかを見極める事の出来るポイントは沢山あると思います。

最終的にはご自身での判断ですが、本当に良いと思える担当者に出会えたのであれば、「専属専任媒介契約」で全てを丸っとお任せしてしまうのが良いと思います。

究極的に言えば、良い不動産業者・担当者に出会えるかどうか

まとめになりますが、究極的に言えば最後は「人と人」です。どんな仲介契約だって、本当に良い不動産業者・担当者に出会う事が出来れば尽力してくれるものです。

依頼者側から見れば、不動産業者は言葉巧みに騙してきそうな印象を持ってしまう事もあるかもしれませんが、本当に良い仕事をしている会社だって沢山あるんです。依頼者側は傲慢な態度を取らず、お願いする立場ですから、「この人の為に頑張ってあげたいな」と不動産業者側に思わせるような行動・振る舞いをするのが、結果的に自分にとって良い結果を生んでくれます。

高額な取引になるので慎重になる気持ちも分かりますが、出来る限りこの視点を忘れずに、不動産業者と付き合ってあげてください。

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ABOUTこの記事をかいた人

29歳、不動産会社勤務。実際に不動産業に触れている内に楽しくなってきて、どんどん不動産の世界を知りたいと思うように。今後持ち家を購入したり、不動産投資をする可能性もあるので、勉強を兼ねて不動産専門のWEBライターをやっています。