いわくつき物件でも売却は可能?いわくつき物件の種類と売る時の注意点を解説

いわくつき物件でも売却は可能?いわくつき物件の種類と売る時の注意点を解説

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いわくつき物件を売却するにはいくつかのハードルをクリアしなければいけません。なぜなら、不動産の中古市場において、いわくつき物件を進んで購入したいと考える買主・借主はほとんど存在しないと考えられるからです。

たとえば、「賃貸に出している所有マンションで入居者が孤独死してしまった」「使い道のない空き地を所有していたのだが過去に近隣で発生した殺人事件が原因で妙な噂を立てられて困っている」など、所有している土地・建物・マンションにネガティブな要因が要因が重なってしまうと、どうしても購入希望者が集まりにくいのが実情でしょう。

そこで、今回は、いわくつき物件の売却方法について紹介します。あわせて、いわくつき物件がどのような不動産を指すのか、また、トラブル要因でしかないいわくつき物件を少しでも高値で効率的に転売するためのコツ・注意点についても解説するので、最後までご一読ください。

目次

いわくつき物件の意味とは?具体的事例の見分け方を紹介

大島てる

いわくつき物件とは、不動産の購入者側が入居・購入を避けたいと考える要素を有する物件のことです。

ただ、いわくつき物件に対する明確な法的定義が存在しないため「どこまでの物件がいわくつき物件に含まれるのか」の線引きは簡単ではないもの。なぜなら、不動産に対して抱く嫌悪感のレベルは人によって異なるものだからです。

したがって、「〇〇だから住みたくないな…」と考えそうな物件、という漠然としたイメージで差し支えありません。いわくつき物件に対して厳密な定義を与えるという形式論には大した意味はなく、「いわくつき物件に該当し得る不動産をどのような方法で効率的に売却するか」という実質論こそが重要だからです。

そこで、まずはどのような不動産がいわくつき物件に該当する可能性が高いのか、今後の売却活動の方針を決めるためにチェックしていきましょう。なお、いわくつき物件は、”事故物件”・”訳あり物件”などと同じニュアンスで使われることも多いです。また、「心理的瑕疵要因を有する物件」と難しく表現されることもあります。

洸太郎
洸太郎

事故物件・いわくつき物件の情報を総まとめにしたサイトとして「大島てる」が有名です。多くの事故物件情報が搭載されているため、一般人でも簡単に検索できる状況になっています。したがって、”大島てる”に掲載されるといわくつき物件であることを隠せないため、慎重に売却活動の方向性を定めなければいけません。なお、”大島てる”に掲載されている物件情報に誤りがある場合には風評被害を受けるリスクが高まるため、すみやかに削除申請などの方法をご検討ください。

いわくつき物件の具体例1:孤独死などの死亡事故が発生した場合

いわくつき物件の代表例として挙げられるのが、物件内で孤独死事案などの死亡事故が発生した場合。たとえば、病気や事故・老衰などが原因で居住者が死亡した後、発見までに一定期間を要したケースなどです。

このような孤独死事案が発生すると、不動産物件内が汚損され、特殊清掃や大規模修繕が必要になります。また、特殊清掃などを実施したとしても物件内の汚損・臭いが残ることもあるでしょう。

一般的な感情として、このような孤独死等の死亡事故事案の履歴がある物件に居住したくないと考えるのは当然のこと。したがって、孤独死事案が発生した場合には、原則としていわくつき物件として扱われることになります。

孤独死の数は年々増加しているので心理的瑕疵要因が軽微・不存在と考えられることもある

ただし、孤独死の数は年々増えているのが実際のところ。近年の高齢化・核家族化・少子化などの進行によってひとり暮らしの人の数が増えているからです。

この状況で、孤独死事案が発生した不動産すべてがいわくつき物件として扱われるとなると、日本中の物件のほとんどが心理的瑕疵要因を抱える訳あり物件だということになりかねません。これでは、円滑な不動産取引に支障が生じるのは明らかです。

ここで確認して欲しいことは、いわくつき物件になるかどうかは「買主側が嫌だと感じるかどうか」がポイントになるということ。孤独死が社会的に珍しいことではないという現状を踏まえるのなら、すべての孤独死事案がいわくつき物件の根拠となる心理的瑕疵要因に該当するとは考えにくいでしょう。

したがって、家族が故人を自宅で看取った場合や死亡後すぐに病院・行政などに引き渡された場合などには、例外的にそもそもいわくつき物件としては扱われない可能性もあります。

参照:(参考)死因別統計データ – 国土交通省

洸太郎
洸太郎

いわくつき物件として扱われるかどうかは、あくまでも個々の当事者間における契約交渉状況次第です。同一状況の孤独死事案でも、買主側がまったく気にしないというのであればいわくつき物件として売却する必要はありません。その一方で、死亡後すぐに居宅内から遺体を搬出したような場合でも、買主側が抵抗感を示せば、その時点で当該契約上はいわくつき物件として扱われざるを得なくなります

いわくつき物件の具体例2:殺人事件などが発生した場合

いわくつき物件の具体例として挙げられるのが、殺人事件・自殺などの凄惨な事案が発生したケースです。このような事案が発生した場合は、どれだけ物件内を大幅にリフォームして痕跡を消したとしても、購入者サイドが抵抗感を示すのは明らかでしょう。

ただし、以下のようなケースでは売却予定物件への悪影響は少ないと考えられるので、いわくつき物件としては扱われない可能性があります。

  • 所有マンション一室の隣の部屋で自殺・他殺が発生した場合
  • 所有マンションの共用部分で事件が発生した場合
  • マンションの専有部分から飛び降り自殺が発生したが、遺体の落下場所は専有部分ではなかった場合

このように、殺人事件等が発生した場合でも、「所有物件の敷地内で事件が発生したのか」「所有物件に対して物理的なダメージを与えたのか」などの事情が総合的に考慮されて、心理的瑕疵要因が存在するか否かが判断されることになります。

ただし、「いわくつき物件と評価されるかは明らかではないから購入者側には隠しておこう」と所有者サイドで勝手に決めるのは危険。なぜなら、後から当該事案について購入者側が知ることになり、「事件のことを知っていれば購入しなかった」と主張されることになると、後述するように契約解除・損害賠償請求などの責任が発生し、面倒な法的紛争に発展するリスクがあるからです。

したがって、このような陰惨な事件が不動産界隈で発生した場合には、念のため事前に購入希望者へすべての事情を伝えたうえで、「当該事案の不動産に対する悪影響は存在しない・軽減されている」と丁寧に説得していくことが重要だと考えられます。

いわくつき物件の具体例3:人が住みたくないと感じる場合

定義が曖昧な以上、いわくつき物件の具体例の範囲は広くなるもの。上述のような人の「死」が絡むもの以外にも、多数のいわくつき物件要因が存在します。

人が「住みたくない」と感じる原因としては、以下のようなケースが挙げられるのが一般的です。

いわくつき物件の具体例1:法律的瑕疵要因が存在するケース
法律上の規制・ルールに反する不動産に対して、不動産市場からネガティブな評価をされるのは当然のこと。建築基準法違反(安全基準違反・建蔽率違反など)、消防法違反(防火・防災設備の設置義務違反)、都市計画法違反(用途変更・増築規制違反など)などが挙げられる。
いわくつき物件の具体例2:環境的瑕疵要因が存在するケース
所有不動産自体が瑕疵を抱えているだけではなく、周辺環境に何かしらの問題が存在する場合も、いわくつき物件として扱われる可能性がある。たとえば、ごみ焼却場・原子力発電所・墓地などが近隣にある場合・悪臭が発生する場合・電車や高速道路などの騒音被害が深刻な場合などでは、一般的な感覚からすると「住みたくない」と感じるのは仕方のないこと。
いわくつき物件の具体例3:心理的瑕疵要因が存在するケース
殺人事件・自殺などの事象以外にも、心理的に抵抗感がある事情を不動産が抱えるケースは少なくない。たとえば、心霊現象が発生する場合・暴力団などの反社会的勢力の事務所が近隣に所在する場合・物件の近くで世間を騒がせた大きな事件が発生した場合などが挙げられる。

いわくつき物件を売却する方法は2つ

いわくつき物件も不動産であることに変わりはありません。売却時に一定の配慮・注意点は存在しますが、通常の不動産売却と同様の方法で手続きが進められます。

いわくつき物件の売却方法は次の2つです。

  1. 不動産仲介業者に売却依頼をする
  2. 不動産買取業者に買取依頼をする

それでは、各売却方法について、それぞれ具体的に見ていきましょう。また、今すぐ売却するのが難しい場合の対処法も参考にしてください。

なお、仲介業者・買取業者の違いについては、以下のリンク先でも詳しく解説しています。いわくつき物件の処遇についてまったくイメージがわかないという人はお役立てください。

不動産の売却は「仲介業者」と「買取業者」どちらが良い?それぞれのメリット・デメリットを解説

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2021年7月30日

いわくつき物件の売却方法1:不動産仲介業者に依頼をする

1つ目のいわくつき物件売却方法は、不動産仲介業者に依頼をするというものです。

不動産仲介業者とは、不動産の売主と買主を繋げる役割を果たす会社のこと。売主からの売却依頼を受けた物件について営業活動などを実施し、不動産市場から購入希望者を探してくるのが仕事です。

ただし、不動産仲介業者に売却依頼をする際には、どのような仲介契約(媒介契約)を締結するかに注意しなければいけません。以下の3種類の仲介契約(媒介契約)が用意されているので、ニーズに適したものを選択しましょう。

専属専任媒介契約
1社の不動産仲介業者としか契約できず、また、直接取引も認められない。いわくつき物件の売却手続きをすべて仲介業者に委ねることになるため、慎重に不動産業者を選ぶ必要がある。その一方で、1週間に1回以上売却活動の進捗について報告してくれるので、業者からの丁寧な対応を期待できる。
専任媒介契約
1社の不動産仲介業者としか契約できないが、直接取引は認められる。所有者自身でも買主を探したいという人におすすめの仲介契約。ただし、いわくつき物件の売却の場合には告知義務・瑕疵担保責任などの点において慎重に手続きを進める必要があるため、所有者自身が主導して売却手続きを進めるのはリスキー。つまり、所有者自身が法的知見を有していない限り、専任媒介契約を締結するメリットは見出しにくい。
一般媒介契約
複数社と契約でき、直接取引も可能な契約手法。できるだけ多くの顧客層をターゲットにしたいという人におすすめ。ただし、各業者が売却活動に力を入れてくれないリスクが高まるため、いわくつき物件のような訳あり物件の場合には逆効果になることも。よほど物件の立地条件・エリア条件などに魅力が備わっており、「放っておいても売れる」状態なら一般媒介契約で充分。

なお、不動産仲介契約の種類については、以下のリンク先でも詳しく解説しています。あわせて参考のうえ、仲介契約締結時にお役立てください。

不動産売却の媒介契約の3つの種類はどれを選ぶべき?「専属」「専任」「一般」それぞれの特徴を徹底解説

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2021年7月30日

いわくつき物件に対してリフォーム工事を実施する

そもそも、不動産仲介業者に依頼したからといって、不動産はかならず売れるとは限りません。特に、いわくつき物件の場合、どうしても不動産市場から敬遠されがちなので、どれだけ業者が営業活動に注力したとしても買主が見つからないおそれがあります。

そこで、いわくつき物件を仲介業者を経由して売却する場合には、リフォーム工事・修繕工事を実施して資産価値を高めてから売却するという方法が効果的です。心理的瑕疵要因の痕跡を消す、また、物件の劣化が激しい箇所を改修して魅力をアップすることができれば、それだけ購入希望者が集まる可能性は高くなるでしょう。

ただし、リフォーム工事・改修工事を実施する場合には、投下コストに留意しなければいけません。なぜなら、リフォーム工事によって高額での成約が実現したとしても、それ以上の投下コストが発生した場合には、手元に残るお金がなくなってしまうからです。

したがって、いわくつき物件売却時にリフォーム工事を実施する場合には、事前に仲介業者の担当者に相談をして、リフォーム工事の要否・改修前後の売却可能性・損益分岐点などについて具体的に話をつめましょう

建物を解体して更地として売却する

いわくつき物件を売却するとき、心理的瑕疵要因のレベルがあまりに深刻だと多少のリフォームを実施したところで購入希望者が集まらないケースも少なくありません。

その場合には、選択肢のひとつとして、建物自体を解体して土地だけで売却するという方法を検討しましょう。土地単体でも資産価値を有する不動産として扱われるため、新築物件用の土地を探している購入希望者層には魅力に映るはずです。

ただし、この方法はマンションの1室のみの区分所有権しか有していない場合には活用できません(マンション全体を解体する権利は認められないから)。また、以下の事情が存在する場合にも解体は不適切だと考えられるので慎重に判断してください。

  • 「解体費用>土地の成約予定価額」になるケース
  • 再建築不可物件(リフォーム工事は可能なので、「古家付き土地」として売却するのが適切)
  • 土地自体にも心理的瑕疵要因が存在する場合

特に重要なのが、土地自体にも心理的瑕疵要因が存在する場合について。たとえば、戸建て内で殺人事件が発生したとき、建物を解体・立て替えたからといって、それだけで心理的瑕疵要因が消滅するわけではありません。つまり、売却活動をする際には、かならず告知義務を遵守しなければいけないということになります。

もっとも、殺人事件が起こった土地ではあるものの、物件自体は解体・建て替えているということから、心理的瑕疵要因のレベルを軽減することは可能です。売却交渉を少しでも有利にするための方策としては適当だといえるでしょう。

洸太郎
洸太郎

再建築不可物件を解体してしまうと、その時点で新たに建物を建設できなくなるため、土地だけで売却することが不可能に近い状態になってしまいます。このように、いわくつき物件を売却するときには、都市計画法・建築基準法などの法規制にも配慮して売却活動を進める必要があるため、かならず不動産業者などの専門的知見を有する人に相談してからにしましょう。なお、再建築不可物件の売却については、以下のリンク先にておすすめの不動産業者を紹介しているので、あわせて参考にしてください。

【全国対応】再建築不可物件を高く売却したい人におすすめの不動産買取業者14選

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2021年8月1日

いわくつき物件の売却方法2:買取業者に依頼をする

2つ目のいわくつき物件売却方法は、買取業者に依頼をするというものです。

不動産買取業者とは、自らが買主となって土地・建物を引き受けてくる業者のこと。不動産の売買契約の当事者にはならず不動産市場から買主を探してくる不動産仲介業者への依頼とは違って、不動産買取業者との間で売買契約を締結できるため、早期の成約・確実な売却が可能となります。

特に、いわくつき物件の場合には、仲介業者に依頼をしたところで簡単に購入希望者が見つかるとは限りません。そのような訳あり物件でも。買取業者ならそのままの状態で引き渡せるため、「早期に売却したい」「別の不動産購入のための頭金を用意したい」などの希望を実現しやすいでしょう。

また、親などが亡くなった後、相続人として取得せざるを得なかった不動産がいわくつき物件だったということもあるはず。相続放棄をしていわくつき物件との関係を断つのも選択肢のひとつですが、他にも承継すべきプラスの財産が多い場合には、相続放棄ができないという事態にもなりかねません。このように、いわば強制的にいわくつき物件の所有を強いられた場合でも、訳あり物件買取業者に依頼をすれば、スムーズに物件を手放すことが可能です。

なお、いわくつき物件などの訳あり物件を専門に取り扱っている不動産買取業者を以下のリンク先で紹介しています。あわせて参考にしてください。

【全国対応】訳あり物件(事故物件)を高く売却したい人におすすめの不動産買取業者15選

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2021年8月1日

【参考】いわくつき物件を今すぐ売るのが難しいなら賃貸するのもあり

ここまで紹介したように、いわくつき物件の売却方法は仲介業者・買取業者の2択です。原則として、以下のメリット・デメリットを比較したうえで、物件の売却方法を選択しなければいけません。

不動産仲介業者に依頼するメリット
・高値で売却できる可能性が高い
・不動産業者からの手厚いサービスを受けられる
・買取保証サービスが付帯されていれば最低限成約は担保される
不動産仲介業者に依頼するデメリット
・仲介手数料が発生する
・いつ売却できるか分からない
・売却できない可能性もゼロではない
契約適合責任(瑕疵担保責任)を問われるリスクがある
不動産買取業者に依頼するメリット
・今すぐに不動産を現金化できる
・不動産の所有コスト・各種責任から解放される
不動産買取業者に依頼するデメリット
・仲介業者に比べて査定額が低額になる

ただ、いわくつき物件を売却するとなると、今すぐ売却を決めるのが難しいということもあるはず。「できるだけ高値で売却したいが、事件から間もない今の段階では売却の見込みが立たない」「買取業者に引き取ってもらうのも悪くないが、査定額に満足できない」など、「心理的瑕疵要因さえなければ高値で売却できるはずなのに」というジレンマを抱えるのは当然のことでしょう。

そこで、おすすめの方法が、いわくつき物件を今すぐ売却するのではなく、いったん賃貸用物件として貸した後、退去のタイミング・事件の風化の頃合いを見計らって高値売却を狙うという方法です。今すぐ売却するわけではないのでまとまったお金を手に入れることはできませんが、中長期的に見たときに、次のメリットを獲得できるでしょう。

  1. 売却よりも賃貸の方が入居者を見つけやすい(数百万・数千万円する売却価格に比べて数万円・数十万円で済む賃料は低額なので)
  2. 一定期間賃貸契約を挟むことによって告知義務の軽減・消滅を狙える(心理的瑕疵要因の風化)
  3. 賃貸物件として貸し出すことによって収益化を図れる
  4. 賃貸中の物件でも売却しようと思えば手放すことができる

いわくつき物件を仲介業者に依頼したまま宙ぶらりんな状態がつづくだけでは管理コストがかさんで損をしつづけるだけ。賃貸に出すことによって賃料という形での収入が見込めますし、告知義務の軽減・消滅によって次に売却するときに買い手がつきやすくなるという効果を得られます。

「今すぐにいわくつき物件を売却したい」という所有者にはおすすめできませんが、長い目でいわくつき物件の売却を検討している人にとっては一考に値する選択肢だといえるでしょう。

いわくつき物件売却時の注意点は4つ

いわくつき物件を売却するときには、「そもそも誰もいわくつき物件を購入したがらない」という大前提を明確に意識することが重要です。

その前提に立てば、いわくつき物件売却時における注意点が見えてくるので、円滑に売却手続きを進めたうえで、「いわくつき物件を早期に売却したい」「いわくつき物件をできるだけ高値で売却したい」などの売主側の希望を反映できるでしょう。

いわくつき物件売却時における注意点は次の4点です。

  1. いわくつき物件の告知義務の有無・範囲に注意する
  2. いわくつき物件の原因になった事件・噂の風化を待つ
  3. いわくつき物件の売却交渉に力を入れる
  4. いわくつき物件売却時に発生する諸コストにも留意する

それでは、いわくつき物件売却時における注意点について、それぞれ具体的に見ていきましょう。

いわくつき物件売却時の注意点1:告知義務の範囲に注意する

いわくつき物件売却時の1つ目の注意点は、告知義務について。

いわくつき物件と呼ばれる原因次第では「心理的瑕疵要因が存在する」と評価されて売主側に告知義務の遵守が求められるので注意が必要です。

不動産売却時における告知義務とは?

そもそも、告知義務とは、事故物件などの心理的瑕疵要因(物件内で殺人事件が発生した・周辺環境に問題がある等)が存在する場合において、契約締結前の段階で買主・借主に対してこれらの情報を伝える義務のことを意味します(宅地建物取引業法第47条1項)。

告知義務が課されているにもかかわらず、これを遵守しなければ、不動産の買主は本来入手できたはずの情報に触れることなく契約を締結するかどうかを決めなければいけないことに。これでは、「当事者間の有効な合意を前提として不動産の売買契約が成立した」と評価することができません。

したがって、契約締結過程における説明義務・情報提供義務・告知義務違反が発生した場合には、契約の解除・無効主張・損害賠償請求などの契約不適合責任・瑕疵担保責任(場合によっては不法行為責任も)に晒されることになります。

いわくつき物件売却時に告知義務は課されるのか?

不動産を売却するときに売主側に告知義務が課されること自体はルールなので動かすことはできませんが、いわくつき物件を売却するときには、そもそも「いわくつき物件であること」が告知義務の対象に含まれるのかについて充分に検討しなければいけません

なぜなら、「いわくつき物件」という用語自体に明確な定義が存在しないため、どこまでの範囲・事情を有するいわくつき物件が告知義務の対象になるのかを明確にする必要があるからです。告知義務の範囲内に含まれるのなら適切に重要事項を提供しなければいけませんし、告知事項ではないのなら情報提供しなくても法的問題を生じるリスクは大幅に軽減されるでしょう。

ところが、不動産をめぐる告知義務の範囲について、明確な法的規制が存在しないのが現状です。事案ごとに「買主側が契約前に知りたいと考えていたか」「買主側の契約締結に至るまでの意思決定を左右するポイントか」が個別具体的に考慮されて当該事項に関する告知義務の有無が決せられるため、売主側としては告知義務の遵守について慎重な姿勢を見せざるを得ません。

したがって、いわくつき物件を売却するときには、どのような事情が原因でいわくつき物件と称されるに至ったかにかかわらず、念のために物件をめぐる経緯・事情を説明したうえで売買契約を締結した方が無難だと考えられます。後から法的紛争に発生するリスクと、いわくつき物件であることを告げて買主が購買意欲を低下させるデメリットとを比較衡量して決してください(当然ながら、明らかに告知義務が課されると考えられる場合には遵守しなければいけません)。

令和3年10月に不動産の告知義務をめぐる新ガイドラインが制定

以上のように、不動産をめぐる告知義務の範囲はケースバイケースで不安定です。これでは、買主側の意思決定だけではなく、売主側の円滑な売却手続きにも支障が出るでしょう。

そこで、このような不安定な告知義務の取り扱い・売主側の立場に鑑みて、令和3年10月に国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課は「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を制定し、過去の裁判例などを参考にして、不動産取引における告知義務について一定の指針を提供しています。

当該ガイドラインにおける告知義務の範囲については、以下をご参照ください。

告知義務が発生する可能性が高い代表例
①取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合
②事件性・周知性・社会に与えた影響等が特に高い場合
③買主・借主から事案の有無について問われた場合
④買主・借主が事案について知っておくべき特段の事情が存在する場合
⑤他殺(殺人・強盗殺人など)
⑥自殺
⑦不慮の事故以外の事故死
⑧火災による死亡
⑨原因が明らかではない死亡
⑩孤独死
⑪原則として告知義務が発生しない自然死・不慮の事故死でも、長期間物件内に遺体が放置された場合
告知義務が発生しない可能性が高い代表例
・取引対象不動産で発生した自然死
・取引対象不動産で発覚した日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)
・賃貸借契約では、上述⑤~⑪に該当する心理的瑕疵要因についても、3年程度経過で告知義務が消滅する
・取引対象不動産の隣接住戸や通常使用しない共用部分で⑤~⑪の事情が発生しても特殊清掃が行われた場合には告知義務は消滅する

引用元:事故物件の売却相場は安い?高く売るためのポイントと売却時の注意点を徹底解説

ただし、この国土交通省のガイドラインには法的拘束力は存在しません。つまり、当該ガイドラインを遵守すればかならず契約不適合責任等の法的責任が免責されるというわけではないということです。

特に、いわくつき物件のような「悪いイメージ」を有する物件の場合には、購入希望者側がその実情について知りたいと考えるのは当然のこと。できるだけ誠意をもって売却活動を進めるようにしてください。

いわくつき物件売却時の注意点2:事件の風化を待つ

いわくつき物件売却時の2つ目の注意点は、事件・事故の風化を待つというものです。

そもそも、いわくつき物件のなかには、告知義務が存在しない可能性が高い不動産が一定数存在します。たとえば、日常生活で起こり得る不慮の事故死が物件内で発生した場合などです。ただ、どうしても近隣住民の噂やネットへの書き込みが原因で悪評がたつのは避けられません。

この場合には、事件が風化して人々の記憶から忘れ去られるまでの一定期間、売却活動を待つのがおすすめ。なぜなら、明らかに告知義務が課されていない状態であればわざわざ購入者側に経緯・事情等を説明する必要はありませんし、さらに、事件が風化すれば購入者側がいわくつき物件の原因事象を気にしなくなる可能性が高いからです。

ただし、いわくつき物件の売却で注意しなければいけないのは、原因不明の心霊現象などが発生するケース。まったくの根拠なく心霊スポットとして扱われているのなら情報発信元に対してネット情報の削除・損害賠償請求などの法的措置に踏み出すことができますが、実際に心霊現象で悩まされることがある場合には、売却活動時における慎重な扱いが求められるでしょう。

不動産仲介業者に売却を依頼するのなら心霊現象を購入者側にどのように伝えるのかを相談してください。また、売却活動時にまで生じるいわくつき物件の煩わしさから早期に解放されたいのなら、訳あり物件買取業者に買取依頼をしてもらうのがおすすめです。

洸太郎
洸太郎

昨今、SNSなどを通じて心霊スポットが取り沙汰され、本来一切心霊現象などが生じない物件であったとしても、「外観がなんとなく怖そう」などという印象論だけで心霊スポットとしての虚構をでっち上げられることがあります。このような場合、少々手間はかかりますが法的措置によって状況を改善することが可能なので、弁護士などの専門家までご相談ください。

いわくつき物件売却時の注意点3:売却交渉に力を入れる

いわくつき物件売却時の3つ目の注意点は、売却交渉に力を入れるというものです。

確かに、いわくつき物件に対しては買い手市場からの厳しい評価を受けざるを得ないでしょう。ただ、居宅内で事故死が発生した場合には特殊清掃・修繕工事などを実施しているはずでしょうし、不可解な噂だけでいわくつき物件とされているケースもあるはず。つまり、客観的な不動産としての資産価値は、いわくつき物件ではない不動産と同列に扱うことも可能だということです。

したがって、いわくつき物件の売却交渉をする場合には、負い目を感じて弱気になるのではなく、強気に交渉を進めることを忘れてはいけません。特に、売却交渉時には以下のポイントに留意するのがおすすめです。

いわくつき物件の売却交渉のコツ1:同種物件の市場価格とバランスをとる
いわくつき物件だからといって、最初から同種物件の市場価格から2割~5割程度減額して売りに出してしまうと、「この物件は何かしらの問題を抱えているのではないか?」と不信感を抱かれるだけ。具体的な減額交渉は実際に購入希望者が現れてから個々に行えば足りる。
いわくつき物件の売却交渉のコツ2:不動産の強みを積極的にアピールする
いわくつき物件とはいえ、何かしらのアピールポイントはあるはず。立地条件・築年数・間取り・周辺環境など、「いわくつき物件」というネガティブ要因をカバーできるだけの強みを積極的に売価に反映させるのがおすすめ。
いわくつき物件の売却交渉のコツ3:内覧・交渉で手を抜かない
購入希望者と実際にやり取りする際には丁寧な対応を心がける。内覧時のホームステージングやハウスクリーニングは当然のこととして、不動産業者の営業担当者にも同席してもらえれば物件の長所について説得力が増す可能性も。また、いわくつき物件だからといって安易に値引き交渉に応じると足元を見られるリスクが高まるので注意が必要。

特殊清掃やリフォーム工事などをしっかりと行っておけば、いわくつき物件だからといって大幅な減額を強いられるということにはならないはず。また、人気のエリアに所在する不動産であれば、ほとんど減額の必要なく売却できる可能性も高いでしょう。

「いわくつき物件だから値引きされて当たり前」という感覚で売りに出すと、実現できたはずの成約価格を自ら放棄することにもなりかねません。不動産仲介業者の担当者としっかりと打ち合わせをしたうえで、いわくつき物件を少しでも高値で売却するための戦略を練るべきでしょう。

いわくつき物件売却時の注意点4:諸コストにも留意する

いわくつき物件売却時の4つ目の注意点は、不動産売却をめぐる諸コストにも配慮するという点が挙げられます。

なぜなら、不動産は所有するだけでもお金がかかるものですし、売却する際にも各種手数料・コストが発生するものだからです。どれだけ高値成約を実現したとしても、高額な諸コストが差し引かれると、結局手元に残るお金は少額(場合によってはマイナス)になりかねません。

いわくつき物件売却時に考慮すべき諸コストとして、次の各項目が挙げられます。

仲介手数料
不動産仲介業者に売却依頼をした場合には、次のように、成約価格に応じて仲介手数料が発生する(「不動産流通について」国土交通省HP)。ただし、訳あり物件買取業者に買取依頼をした場合には仲介手数料は発生しない。

  1. 200万円以下の部分:取引物件価格(税抜)× 5% + 消費税
  2. 200万円~400万円以下の部分:取引物件価格(税抜)× 4% + 消費税
  3. 400万円~の部分:取引物件価格(税抜)× 3% + 消費税
各種税金
譲渡所得税(5年以下の短期所有なら30%・5年を超える長期所有なら15%)・住民税(短期所有なら9%・長期所有なら5%)・印紙税・登録免許税など。
その他取引費用
住宅ローン残債の清算費用・ホームインスペクション費用・内覧時の準備費用など
住宅の管理コスト
不動産を所有しつづける以上、仮に居住していなくても管理コストが発生する。たとえば、固定資産税・毎月の光熱費の基本料金・火災保険・地震保険・住宅ローンの返済などが挙げられる。早期に売却を実現すれば、これらのコスト負担からも解放される。

引用元:欠陥住宅売却時のポイントとは?事例ごとの注意点や業者選びのコツを解説

これらの費用を考慮したとき、いわくつき物件の所有者には次の2つの選択肢が与えられることになります。

  1. 仲介業者への依頼のリスク(売却できない可能性・いつ売れるか分からないという不安・いつまでも所有コストが発生するという負担など)を甘受したうえで、(実現できるか分からない)高値売却の可能性を探る
  2. 多少買取価格が低廉になったとしても、いわくつき物件をそのままの状態で訳あり物件買取業者に売却していろいろな不安から解放される

当然ながら、最終的にどちらの選択肢を採用するかは所有者の判断次第です。

ただ、何の問題も抱えていない不動産でも、一般市場で売却を進めるとなかなか買い手がつかないという状況に追いこまれることは少なくなりません。いわくつき物件の場合には尚更でしょう。

いわくつき物件などを専門に取り扱う不動産業者に買取依頼をすれば、いわくつき物件がどのような状況でもそのままの状態で買い取ってくれます。買取業者側が購入後に転売できるようにリフォーム工事などを実施するため、現在の所有者側は何も気にする必要はありません。

ただし、訳あり物件買取業者への買取依頼では、一般的な市場価格よりも割り引かれる点だけはデメリットです。「一定額割り引かれる」というデメリットと、「今すぐ確実にいわくつき物件を現金化できる」というメリットを比較して、どの選択肢を採用すべきかを検討してください。

なお、以下のリンク先では、いわくつき物件を専門に取り扱っている訳あり物件買取業者15社を紹介しています。複数社に買取依頼を出したうえで、もっとも条件の良い業者をご選択ください。

【全国対応】訳あり物件(事故物件)を高く売却したい人におすすめの不動産買取業者15選

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2021年8月1日

いわくつき物件の売却は訳あり物件買取業者への依頼がおすすめ

いわくつき物件と呼ばれる原因はいろいろです。つまり、売却を検討する際には、個々の物件が抱える課題を丁寧に汲み取って売却活動を進めなければいけません。

もちろん、一般の不動産市場で購入希望者を募ってすぐに買主が見つかることもあるでしょう。特に、物件が備える立地条件などの好材料がそろっている場合には、いわくつき物件であることなど気にせずに購入してくれる人が現れやすいものです。

しかし、多くのいわくつき物件に対する市場からの印象は低評価になるのが通常のところ。普通に売りに出したところで、いつまでも現金化できない負の遺産になることは目に見えています。

したがって、いわくつき物件の売却を検討する際には、訳あり物件買取業者へ依頼するのがおすすめ。リフォームなどの手を加えずに、そのままの状態で買い取ってくれるからです。各社ごとに査定額・サービス内容に差異があるので、できるだけ多数の業者に査定依頼を出して、ご希望条件に適した業者を選択してください。

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ABOUTこの記事をかいた人

30代、フリーランスライター・翻訳家。マイホーム購入のタイミングで不動産に興味をもつ。現在は関西の山奥で田舎暮らしを満喫しながら、めぼしい中古物件をリサーチする毎日。不動産関連の知識を深めながら、国内外問わず良い物件との出会いを待ち望んでいます。