※本ページにはプロモーションが含まれています。
「単身で暮らしていた親の孤独死を契機に相続した不動産を売却したい」「賃貸中のマンション入居者が孤独死したので対応に困っている」など、所有物件で発生した孤独死事案はオーナーの頭を悩ませるもの。使い道がなく収益性も期待できない不動産は売却を検討するのが適切ですが、孤独死物件という特殊事情を抱える不動産売却は一般不動産ほど簡単には売却しにくいのが実情です。
ただ、不動産は所有するだけでコスト・責任が発生する厄介なもの。”負の遺産”化する前に早々に手放したいと希望する一方で、資産価値の高い不動産を「できれば高値で売却したい」などと色気を出してしまうのも当然でしょう。
そこで、今回は、孤独死物件の売却方法を5つ解説します。あわせて、孤独死物件売却時の注意点や各売却手法の費用感についても紹介するので、最後までご一読ください。
孤独死物件を高値で売却する方法は5つ
孤独死物件を売却するには、通常の一般不動産売却時とは異なる方法で手続きを進めなければいけません。
特に、不動産物件内の汚損レベルが深刻であるほどそのままの状態では売りにくく、工夫を凝らさなければ「そもそも売却できない」「売却できたとしても大幅に値引きされた成約価格にしかならない」というリスクが生じます。
孤独死物件の汚損状況・築年数などの状態に左右されますが、孤独死物件を少しでも高値で売却するための代表的な手続き方法は次の5点です。
- 特殊清掃は不可欠
- リフォーム工事で汚損の痕跡を断つ
- 解体工事を実施する
- 訳あり物件に強い不動産仲介業者に依頼をする
- 事故物件買取業者に引き取ってもらう
それでは、孤独死物件を高値で売却する5つの方法について、具体的に見ていきましょう。
1:特殊清掃は不可欠
孤独死物件を少しでも高値で売却するなら、特殊清掃作業は不可欠だと考えられます。なぜなら、孤独死事案が発生した現場は遺体の腐乱による腐敗臭が室内に染みついていたり、血液や体液が床・壁に付着してしまっていたりするからです。
たとえば、孤独死事案では遺体の発見まで1カ月以上が経過しているというケースも少なくありません。腐乱死体や害虫・悪臭の痕跡が残る不動産の買い手がつかないのは考えるまでもなく明らかでしょう。
特殊清掃は物件の原状回復が目的の作業
特殊清掃とは、事件・事故・自殺などの変死事案や病死・孤独死の発生によって物件が受けたダメージを原状回復・原状復旧することを目的とした清掃業務のことです。
遺体の搬出は警察が担当してくれますが、室内の汚損処理は所有者側で対応しなければいけないため、特殊清掃業者への依頼が必要となります。
特殊清掃で実施される代表的な作業項目は次の通りです。
- 汚染物の除去
- 害虫の駆除
- 消毒及び除菌作業
- 消臭
どこまでの特殊清掃が必要かは状況によって異なります。孤独死が発生してから短期間で遺体が発見された場合には軽い清掃作業だけで済むこともありますし、逆に、夏場に長期間遺体が放置されたケースでは遺体があった居室以外の部分にも特殊清掃を施す必要があるでしょう。たとえば、マンションの床下コンクリート内部・一戸建ての基礎部分まで汚れが浸透していると消臭作業・コーティング作業だけでも時間を要するものです。
このように、孤独死物件売却手続きのスタートラインに立つために不可欠の特殊清掃の範囲は専門業者でなければ判断できないものですし、遺体発見からできるだけ早いタイミングで実施しなければ汚損レベルが深刻になるリスクも生じます。
円滑な売却手続きに進むためにも、早期に複数業者に見積もり依頼を出して適切な措置を実施してもらいましょう。
故人の物品が放置されているのなら遺品整理も忘れずに
不動産物件内に故人の所有物が遺された状態では孤独死物件を売却することができません。したがって、不動産を売却できる状態にするためには遺品整理作業を進める作業も不可欠です。
特殊清掃業者のなかには遺品整理業務も代行してくれるところがあります。また、高価貴金属やコレクション類を遺品整理業者に買い取ってもらえれば特殊清掃費用を捻出する道筋も立てやすいでしょう。
その一方で、家電類などの大型ゴミ・不用品のなかには処分するだけで一定のコスト負担を強いられるものがある点には注意が必要です。また、室内の汚損レベル次第では人件費がかさむ可能性も否定できません。「できるだけ金銭負担を軽減して特殊清掃・遺品整理を終わらせたい」と考えるのなら、複数業者に事前見積もりを依頼するべきでしょう(もちろん、特殊清掃は専門業者に依頼をして、遺品整理はご自身で対応することも可能です)。
いずれにしても、特殊清掃と同時並行的に遺品整理も実施しなければ孤独死物件の売却手続きが遅れるばかり。できるだけ早期に物件内の遺品を処分して「空き家」の状態を作り出すのがポイントです。

特殊清掃業者・遺品整理業者のなかには、”お祓い・除霊”サービスを実施している業者もあります。各社多様なオプションを用意しているので、詳細は各社にお問い合わせください。
2:リフォーム工事で汚損の痕跡を断つ
孤独死物件の状態次第では、念入りに特殊清掃を実施しても床や壁などに一定の痕跡が残ってしまうケースが少なくありません。
もちろん、私人間の合意が形成すればどのような不動産物件についても売買契約を締結することは可能ですが、常識的に考えて「特殊清掃だけは実施したが室内に孤独死の痕跡・雰囲気が残っている不動産」を購入したいと考える人が現れるとは考えにくいでしょう。
したがって、「特殊清掃・遺品整理を実施しただけでは不動産市場で購入希望者を募るほどの状態には至っていない」と判断される状態なら、リフォーム工事を実施して孤独死案件の痕跡を軽減・消滅させるという方法が有効だと考えられます。
孤独死物件売却時に実施する代表的なリフォーム工事は次の通りです。
- クロスの張り替え
- フローリングの張り替え
- クッションフロアの張り替え
- ドア交換
- 畳の交換
- トイレ・浴室のユニット交換
- 便器設備などの交換
孤独死物件のリフォーム工事の難しさは「修繕工事を実施する範囲」にあります。なぜなら、孤独時物件のリフォーム工事を実施するのは「一般の不動産市場で購入希望者を見つけるレベルの物件状態にするため」という数値化できない曖昧な目的を達成するためのものだからです。
たとえば、マンション室内で孤独死事案が発生し、壁が部分的に血液などで汚れたとしましょう。汚損部分の壁紙さえ張り替えれば”一応は”孤独死事案の痕跡を消滅することができますが、張り替えをしていない部分との違いは残ったままです。つまり、壁紙のなかにも張り替えをした部分・張り替えをしていない部分が生じることになり、いわゆる「事故物件性を窺わせる箇所」が不動産内に残ることになります(実際、「事故物件の見極め方」などのようなコンテンツが広く普及しているため、クロスの違いなどが存在するだけで購入・賃借をためらう人は少なくありません)。
その一方で、不動産物件内全部の壁紙を張り替えるとなるとその分費用が高額になりますし、また、後述のように、全体を張り替えたからといって告知義務が消滅するわけでもない点が懸念材料です。
つまり、一般の不動産市場で孤独死物件を売却しやすくするにはできるだけリフォーム工事を大がかりに実施した方が良いのですが、リフォーム工事の規模が大きくなるほど費用が膨れ上がるうえに、事故物件であること自体は隠蔽できず、結局「売れにくい物件」であることには変わりないというジレンマに陥ってしまうということを意味します。
したがって、孤独死物件を少しでも高値で売却するためには、物件が所在するエリアにおける不動産流通動向のノウハウを有する不動産仲介業者の判断を仰ぐのがおすすめです。売却・宣伝活動を依頼する業者に、実施すべきリフォーム工事の範囲についても相談してみましょう。

不動産売却は運にも左右されるもの。「買主側で大規模修繕を実施する予定だし孤独死物件であることはまったく気にしない」という購入希望者に出会えれば、売主側の負担を最小限にして不動産を引き渡すことも可能です。つまり、ポイントは「売主にとって有利な購入希望者と出会う確率を高めること」。営業力・市場動向に対する洞察力等を備えた不動産業者選びが重要だと考えられます。
3:解体工事を実施する
築年数・立地条件・エリアなどを総合的に考慮したとき、そもそも孤独死事案が発生しなくても不動産市場における需要が低いような物件については、解体工事を実施して更地として売却した方がメリットが大きいケースがあります。
たとえば、田舎でひとり暮らしをしていた高齢の親が孤独死し、築50年以上の木造一軒家が遺されたケースについて考えてみましょう。
この物件を不動産市場で売却するためには、特殊清掃・遺品整理・大規模なリフォーム工事を実施しなければいけません。なぜなら、ただでさえ孤独死物件ということで敬遠されがちな不動産である以上、購入希望者を募るためには物件自体の魅力を高める必要があるからです。しかし、不人気エリアの売却相場は低廉な状況なので投下コスト回収目的で高値を掲げるのは簡単ではありませんし、購入希望者を集めるために希望成約価格を低くすると投下費用を回収できないリスクも生じます。
その一方で、孤独死物件を取り壊して更地として売却するのなら、必要な作業は特殊清掃処理と解体工事だけなので、投下コスト自体を大幅に節約できる可能性が。建物自体を解体して土地だけで売却するなら事故物件性も軽減すると考えられるので、買い手も見つかりやすいでしょう。
もちろん、解体工事をする方が良いのか否かは孤独死物件の状況次第です。物件事情に応じて臨機応変な判断が求められるので、かならず信頼できる専門業者のアドバイスを参考にしてください。

亡くなった親から相続した空き家をそのまま放置することにはデメリットしかありません。固定資産税や各種維持費・何かトラブルが発生したときの法的責任や「特定空き家」に指定された場合のリスクなど、現所有者の負担は月日が経つほど重くなる一方です。解体工事だけではなく、「古家付き土地」として売却するなど意外と選択肢は豊富に用意されているので、素人判断で不動産の処分方法に頭を悩ませるのではなく、不動産業者の知見を拝借することをおすすめします。
4:訳あり物件に強い不動産仲介業者に依頼をする
不動産の売却時には「不動産仲介業者」に依頼をするのが一般的です。そして、孤独死物件の売却を検討するのなら、特に訳あり物件の取り扱いに慣れた不動産仲介業者のサポートを受けることをおすすめします。
不動産仲介業者とは、売主から不動産売却の依頼を受けて購入希望者を見つける仲介業を営む業者のことです。不動産業者自体が契約当事者になるわけではなく、あくまでも買い手を募るために必要な営業・広告活動に注力してくれる点に特徴があります。
不動産仲介業者に依頼をする際には、どのような契約内容を締結するかがポイントです。具体的には、次の3種類の媒介契約が用意されているので、どの契約類型が所有不動産の成約可能性を高めるのかについて慎重な判断を求められます。
- 専属専任媒介契約
- 1社の不動産仲介業者のみと契約できる。直接取引は不可。成約すれば不動産業者が仲介手数料を確実に手にすることができるため、不動産仲介業者側が最も営業活動・広告活動に力を入れてくれる契約類型。ただし、いわゆる「囲い込み」が行われて成約に引き延ばしが行われるリスクがある点に注意が必要。
- 専任媒介契約
- 契約できる不動産仲介業者は1社だけだが、所有者自身で買い手を見つけることは許容される契約類型。自分で購入希望者を見つける自信があるなら専属媒介契約で直接取引の余地を残しておく必要があるが、孤独死物件のような特殊事情を抱えている場合には専属専任媒介契約を締結しておく方が無難。
- 一般媒介契約
- 複数の不動産仲介業者と同時に媒介契約を締結でき、かつ、直接取引も可能な契約類型。一般媒介契約がおすすめの典型パターンは、特別の営業活動を実施しなくても勝手に買い手が見つかるような人気物件を所有しているケース(媒介契約を締結した各社の積極的な営業活動を期待できないため)。孤独死物件のような買い手が集まりにくい不動産についてはおすすめできない。
なお、媒介契約の種類・各契約類型の特徴については以下のリンク先で詳しく解説しています。あわせてご参照ください。
孤独死物件売却希望者の不動産仲介業者選びのポイント
孤独死物件の売却手続きは成約を実現すること自体のハードルが高いので、「成約可能性を高めること」「少しでも有利な条件での売却を実現すること」を同時並行的に考えて業者選びをしなければいけません。
ただ、不動産仲介業者はかなりの数存在するのが実情です。売却を検討している方のなかには、「どの仲介業者に依頼すれば良いか分からない」「業者選びを間違えて損をしたくない」などとお考えの方も少なくないはずです。
そこで、特に孤独死物件の売却を検討している所有者は、次のポイントに注意をしつつ、不動産一括査定サイトを利用して依頼先に目星をつけるのがおすすめだと考えられます。数ある不動産業者のなかから自己所有物件売却に適した業者と出会える可能性が高まるでしょう。
- 訳あり物件の取り扱いの有無
- 訳あり物件売却の実績が豊富か否か
- 業者が得意とするエリア・地域
- リフォーム業者・解体業者・弁護士などの専門家との提携の有無
- 付帯サービスの充実度合い
「大手不動産業者の方が信頼できそう」「地域密着型の方が丁寧に対応してくれるのでは?」など、不動産業者に対して一定のイメージを抱いている方が多いとは思います。
ただ特に、孤独死物件のような成約難易度が高い不動産売却の場合には、「ブランド力」などの曖昧な根拠で業者選びをするのではなく、実績・ノウハウなどの実質面に注目して不動産仲介業者を選ぶべきです。
不動産一括査定サイトを活用すれば孤独死物件売却に精通した不動産業者に出会うことができるので、ぜひ以下のリンク先を参考に、力強いサポートを受けられる不動産業者を見つけましょう。
孤独死物件の売却を不動産仲介業者に依頼するデメリットも理解する
不動産仲介業者に売却依頼を出せば一般不動産市場から購入希望者を募ることができるので、いわゆる「相場感」に沿った値付けでの売却が期待され、「少しでも不動産を高値で売却したい」という希望を実現しやすいというメリットが得られます。
ただ、特に売却希望不動産が孤独死物件の場合には、不動産仲介業者に売却依頼を出すこと自体に次の7つのデメリットがあると注意しなければいけません。
- 一般不動産市場の流通に乗せるためには多額の修繕コスト等を投下しなければいけない
- 買い手が見つかっても売却代金から高額の仲介手数料を支払う必要がある
- どれだけリフォーム工事等を実施しても事故物件であることを隠せない(告知義務が消滅しない)
- 孤独死物件は相場通りの売却が難しい(最低でも2割~3割値引きされる)
- 孤独死物件自体が一般不動産市場で敬遠されるのでそもそも成約できない
- 不動産仲介業者が営業・広告活動に熱心になってくれない
- いつまでも成約が実現しないと所有コスト・所有リスクが発生しつづける
つまり、「不動産仲介業者に依頼をすれば一般市場原理に基づき高値での売却が期待できる」というのは、あくまでも物件自体の魅力が高い人気不動産にだけ通用する理屈だということ。孤独死物件という特殊性を備えた不動産売却については、この理屈が当てはまらない可能性が高いということを意味します。
「少しでも高値で売却したい」という希望を貫き通すのは構いませんが、結果として買い手が見つからず管理コストだけが日々発生しつづけるというのは本末転倒だといえるでしょう。
したがって、「不動産仲介業者に依頼をしても孤独死物件が売却できるか不安」「高値で売却したい気持ちは捨てられないが、できれば早々に孤独死物件を手放してしまいたい」と考えるのなら、次で紹介する「事故物件買取業者に依頼する」という選択肢をご検討ください。
5:事故物件買取業者に引き取ってもらう
「孤独死物件を高値で売却したい」という希望よりも、「孤独死物件をできるだけ早期に手放して所有負担から解放されたい」という考えが優先するオーナーの方は、事故物件買取業者に引き取ってもらうのがおすすめです。
事故物件買取業者とは、孤独死物件などの事故物件を”そのままの状態で”引き取ってくれる不動産買取業者のこと。買取業者自体が売買契約の買主として手続きを進めてくれるので、売主側の負担を大幅に軽減しながら孤独死物件を手放すことができます。
事故物件買取業者に売却依頼をするメリット・デメリットは次の通りです。
- 事故物件買取業者に依頼するメリット
-
- 孤独死物件を現状のまま引き渡せる
- 特殊物件の取り扱いに慣れているのでノウハウが豊富
- 告知義務の遵守による売却手続きへの弊害を回避できる
- 最短即日で孤独死物件の売買契約が成立する(時間の節約)
- 孤独死物件のリフォーム工事等を売主負担で実施せずに済む(手間・労力の節約)
- すぐに不動産を現金化できる
- 仲介手数料が発生しない
- 事故物件買取業者に依頼するデメリット
-
- 相場よりも値引きされた買取価格になるのが一般的
事故物件専門買取業者は、孤独死物件だけではなく、いわくつき物件・瑕疵物件(シロアリ被害・雨漏りなどの物理的瑕疵や環境的瑕疵が存在する不動産)・共有持分権で不動産の処遇について争いがある物件・再建築不可物件・欠陥住宅(建築基準法違反などのトラブルを抱えている不動産)など、あらゆる不動産をそのままの状態で引き取ることが可能です。
たとえば、孤独死物件の売却に備えて調査をしてみたところ、孤独死の痕跡を消すために大規模なリフォーム工事が必要なだけではなく、シロアリ被害が発生しているために支柱などについて大規模修繕工事を実施しなければいけないなど、孤独死事案以外のトラブルを抱えている不動産は少なくありません。
不動産仲介業者に依頼するなら、これらの問題は原則として売主負担で解消したうえで購入希望者を募るという手順を踏む必要がありますが、訳あり物件買取業者に依頼をすればそのままの状態で買い取ってもらうことが可能となります(つまり、買取業者側の負担が重くなるために買取価格がある程度ディスカウントされるという理屈です)。
「事故物件買取業者は安値でしか引き取ってくれないから利用を避けたい」と考える所有者の気持ちも自然なものですが、売却価格が低くなる代わりに、「事故物件買取業者に依頼をすれば時間・コスト・労力などのあらゆる負担から解放される」というメリットが手に入る点を見落とすべきではないでしょう。
次のリンク先では訳あり物件の取り扱い実績がある不動産買取業者を15社紹介しています。ぜひご関心の業者まで詳細をお問い合わせください。
孤独死物件売却時の注意点は4つ
ここまで紹介したように、孤独死物件について事故物件買取業者に引き取り依頼すれば、所有者側の手を煩わせることなく売却手続きを完遂することができます。
その一方で、オーナー側に生じる色々な負担を覚悟したとしても、不動産仲介業者に依頼をして一般不動産市場で購入希望者を募りたいという方も少なくはないはずです。実際、市場からの需要が高い都市部のマンションなどについては、一定の負担は甘受したうえでも不動産市場で売却した方が利益が出るケースもあるでしょう。
そこで、ここからは、孤独死物件の売却を不動産仲介業者に依頼する場合の手続き上の注意点について説明します。具体的に、孤独死物件を売却する際の注意点は次の4点です。
- 告知義務を遵守する
- 費用とのバランスで売却方法を選択する
- 相場通りの成約は難しいことを理解する
- 事故物件の数が増えている実情を踏まえて悲観的になり過ぎない
それでは、孤独死物件を売却するときの4つの注意点について、それぞれ具体的に見ていきましょう。

大前提として、依頼する不動産仲介業者には「孤独死事案が生じた物件であること」をかならず伝えるようにしてください。なぜなら、適切な営業活動が期待できないばかりか、不動産仲介業者が法的責任を追及され(宅建業法違反)、かつ、オーナー側が求償権行使等の方法で損害賠償責任の負担を強いられるリスクも生じるからです。依頼をする以上、オーナー側の味方である不動産仲介業者との信頼関係を毀損する行為はNGだと理解しておきましょう。
1:孤独死物件についての告知義務を遵守する
孤独死物件を売却するときには、告知義務を果たすことがポイントになります。
告知義務とは、「不動産売買契約を締結する前に、売主・貸主が買主・借主に対して物件についての必要な情報を提供しなければいけない」というルールのことです。
ここからは、孤独死物件売却時に告知義務が発生する理由・状況・範囲などについて詳しく説明します。
告知義務が発生する代表的なケース
「告知義務が発生する」ということは、「告知義務の対象になる事実を買主・借主に伝えなければいけない」ということを意味します。
それでは、そもそも孤独死事案は告知義務の対象に含まれるのでしょうか?告知義務の発生する範囲について確認していきましょう。
- 物理的瑕疵
- 不動産に物理的な欠陥が存在するケース。雨漏り・シロアリ被害・地盤沈下・建物基礎や重要支柱の損傷・壁のひび割れ・地中の廃棄物の存在などが物理的瑕疵要因に当たる。
- 法律的瑕疵
- 建築基準法や都市計画法に違反している状態や、法規制が理由で増改築等が実施できないケース。
- 環境的瑕疵
- 建物の立地条件が問題で居住すると健康被害などが発生するケース。たとえば、近くに工場や廃棄物処理施設が所在するために悪臭や騒音被害が生じる・幹線道路や新幹線が近くに所在するために騒音や振動被害が生じる・暴力団施設やパチンコ店が原因で治安が悪いなどが環境的瑕疵要因に含まれる。
- 心理的瑕疵
- 購入者が心理的嫌悪感を生じる事象が存在するケース。たとえば、物件内で人が亡くなった(孤独死・殺人事件・事故死などを含む)・近隣に火葬場が存在するなどが心理的瑕疵要因に該当する。
ここから分かるように、孤独死物件は心理的瑕疵が存在する”心理的瑕疵物件”に該当するので告知義務の対象になるのが原則です。
したがって、孤独死物件を売却する際には、かならず孤独死が発生した事実等について詳細に買主側に伝えるようにしてください。
孤独死物件売却時に告知義務を果たすべき理由
人が死んでいる物件であることを明らかにすると成約可能性が低くなることから、「孤独死が発生したことを伝えると購入希望者側が躊躇する理由になるので伝えたくない」「できれば孤独死事案を隠して有利な条件で売却したい」という気持ちが生じるのは当然でしょう。
しかし、それでも孤独死物件売却時に告知義務を果たさなければいけないのは、次の3つの理由に基づきます。
- 高額資産である不動産の売買契約は当事者間の情報が均一でなければならない
- 買主側が自主的に不動産の情報を収集するのは難易度が高い
- 告知義務を果たさないと売主側が法的責任を追及されるリスクが高まる
特に、孤独死物件の売却を検討しているオーナー側の注意を要するのが3点目の法的責任(契約不適合責任・瑕疵担保責任)についてです。
孤独死物件についての告知義務を果たさなければ、売主サイドは告知義務違反として次の4つのペナルティを強いられます。
- 補修請求:心理的瑕疵要因を払拭するために必要な修繕工事費用等
- 減額請求:心理的瑕疵要因があることを前提とした成約価格との差額の返還請求等
- 契約解除:契約自体が無かったことにされる
- 損害賠償請求:契約するのにかかった費用や解除に伴う費用、慰謝料、引越し費用等
買主からすると、「孤独死物件であることを最初から知っていれば〇〇という条件で不動産を購入することはなかった」と考えるのは当然のこと。
「孤独死物件だと知っていたらもっと低額条件で購入した」「孤独死物件なら購入しなかった」「孤独死物件だと分かって精神的な負担が発生したので慰謝料を請求する」「孤独死物件なら大規模なリフォーム工事を実施したい」など、告知義務を果たさなかった売主は買主の諸要望に応じなければいけなくなります。
これらの契約不適合責任(瑕疵担保責任)が追及されるのは売買契約が成立した後のことです。せっかく孤独死物件の売却が決まったのですから、後から深刻な法的トラブルに巻き込まれるのは避けるべきでしょう。
したがって、孤独死物件を売却する際には、かならず重要事項説明書に心理的瑕疵要因等について記載するなどの方法で告知義務を遵守して、買主側が適切な情報に基づいて売買契約を締結できるような状況を作り出してください。
孤独死物件売却時は告知義務が発生するのが原則
孤独死のように物件内で人が亡くなったケースでは、事件の状況や購入希望者側の受け取り方次第で嫌悪感のレベルには違いが生じるものです。
たとえば、不動産内で凄惨な殺人事件が発生して死体が白骨化するまで放置されたような状況なら心理的瑕疵要因も重大なものだと考えられますし、その一方で、故人が倒れてすぐに発見されて救急搬送後病院で死亡が確認されたようなケースなら、もはや事故物件性自体が疑われるほど心理的瑕疵要因が軽微だとも受け取ることができるでしょう。
つまり、「心理的瑕疵要因が存在すれば告知義務が課される」というルール自体は確かに存在するものの、「どのような事情が告知義務の対象となる心理的瑕疵要因か」については明確な基準が存在しないため、あくまでも個別具体的な事情をベースにして「買主が事前に知っておくべき事情か否か」を判断することになります。
そして、「心理的瑕疵要因が存在する=告知義務が発生する」か否かが個別の事情次第で変わり得るということは、“物件内で人が亡くなっているか否かを重要視する購入希望者”に照準を合わせて常に孤独死物件であることについて告知義務を果たしておく方が無難だということです。
したがって、「告知義務を果たしておけば契約不適合責任追及を回避できたのに」という後悔を生まないためにも、不動産物件内で生じた”人の死”に関する事象は常に購入希望者に伝えておくべきだと考えられます(実際、事故物件売却に係る告知義務の有無については多数の裁判例が存在します。詳細は「事故物件の告知義務をめぐる裁判例を紹介」をご確認ください)。

孤独死が発生した戸建て住宅を解体して更地として売却する場合でも告知義務が生じるというのが実務的な考え方です。ただし、孤独死事案が生じた建物がすでに消滅している点を考慮すると、土地の購入に対して抵抗感を示す買い手は減少するはず。「前の住人が亡くなったので建物を取り壊しました」という点を交渉時のアピールポイントとして活用するのも選択肢のひとつでしょう。
参照:告知義務に関する国土交通省の新ガイドライン
不動産取引の流通性を高めることを目的として、令和3年10月に国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課が「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を作成。これにより、事故物件売却時の告知義務についての具体的指針が明らかになりました。宅地建物取引業者・売主側の告知義務についての具体的な判断根拠として役立ちます。
当該ガイドラインの具体的な内容は次の通りです。なお、あくまでも判断基準の指針を示したものに過ぎず、ガイドラインを遵守したことが契約不適合責任免責の根拠となるわけではない点にはご注意ください。
- 告知義務が発生するケース
-
- 買主・借主が契約締結時に過去の事件等について高い関心を示している
- 事件性・周知性・社会に与えた影響等が特に高い
- 他殺・自殺・火災による死亡・原因不明の死亡・孤独死などが発生した場合(人の死のうち、自然死・不慮の事故死を除く)
- 自然死・不慮の事故死の場合でも、物件内に遺体が長期間放置された場合
- 告知義務が発生しないケース
-
- 自然死・日常生活における不慮の事故死が発生した場合
- 事件から3年以上が経過した不動産の”賃貸借契約”
ガイドラインの示す内容は少々複雑ですが、孤独死物件との関係で言えば、「孤独死物件を売却する際には常に告知義務が発生する」「孤独死物件を賃貸に出す場合には3年以上経過すると告知義務が消滅する」というのが基本的な考え方です。
2:費用とのバランスで孤独死物件の売却方法を選択する
孤独死物件の売却方法を検討する際には、売主サイドが負担する費用を比較するのがポイントです。
ここまで紹介した孤独死物件の売却方法5つについて、それぞれ必要なコスト感を見ていきましょう(以下で紹介するのはあくまでもイメージです。実際の費用は依頼する業者・物件の状況等によって左右される点にご注意ください)。
- 1:特殊清掃の費用
- 費用体系は業者によって異なる(部屋の間取りで決める業者・作業内容ごとに料金を設定している業者・作業人数で費用決定する会社など)。以下で紹介するものは、作業内容別の費用感。
- 床上の清掃:約30,000円~
- 浴室の清掃:約30,000円~
- 消臭剤・除菌剤:約20,000円~
- オゾン脱臭:約30,000円~(1日あたり)
- 畳の撤去:約3,000円×枚数
- 害虫の駆除:約20,000円~
- 汚物の処分:約20,000円~
たとえば、ワンルームなら数万円~10万円程度、戸建て全体に作業が必要なら30万円~60万円というイメージです。※なお、遺品整理や遺品買取サービスで費用を補填することも可能。
- 2:リフォーム工事の費用
-
- クロスの張り替え:1㎡につき1,000円~2,000円
- フローリングの張り替え:1畳につき約2万円~6万円
- クッションフロアの張り替え:1畳につき約1万円~6万円
- ドア交換:1枚につき約3万円~10万円
- 畳の交換:1枚につき約4,000円~3万円
- トイレ・浴室のユニット交換:約40万円~100万円
- 便器設備などの交換:約10万円~30万円
※施工する工事レベルや建材等によって変動あり
- 3:解体工事の費用
-
- 建物自体の解体工事(木造なら1坪3万円~5万円、鉄骨造なら坪単価4万円~6万円、RC造なら坪単価6万円~8万円程度)
- 付帯工事(事前調査費用・アスベスト撤去費用・人件費・車両運搬費等)
- 建物以外の撤去費用(倉庫・塀・庭木・埋蔵物等)
- 廃材処理費用
- 整地費用
- 4:不動産仲介業者への依頼時に発生する費用
-
- 仲介手数料
- 広告費
- 定期的なハウスクリーニング費用
- 内覧対応時に発生する費用
- 売却期間中の固定資産税・光熱費等の維持費
- 登記費用・印紙税・譲渡所得税等
※不動産仲介業者ごとに付帯サービスの内容は異なる。
- 5:事故物件買取業者への依頼時に発生する費用
-
- 登記費用・印紙税・譲渡所得税等
ここから分かるように、事故物件買取業者への依頼時に発生する費用は「不動産売買」に必要な純粋な法定コストのみ。
孤独死物件の売却方法選択時には、以上の投下コストを売却価格で回収できるかがポイントとなります。
たとえば、高値成約が期待しやすい「不動産仲介業者への依頼」という方法を選択すれば、売主が手にするお金は高額になるものの、特殊清掃・リフォーム工事・解体工事・仲介手数料などの支出項目も増えるために、結果としてマイナスになるリスクを避けられません。
これに対して、「事故物件買取業者への依頼」という選択肢を採用すれば、売主に入ってくる金額は少なくなるものの、即時に引渡しが完了するため、支出を大幅に節約することが可能となります。つまり、大きな利益を得るのは難しいかもしれませんが、確実にプラス収支の状態で孤独死物件との縁を切ることができるということです。
もちろん、手続き選択はオーナー側の経済事情も影響します。たとえば、すぐにまとまった現金が必要なら即時買取を実現できる事故物件買取業者への依頼が適切でしょうし、懐に余裕があるので長期所有が負担にならないのなら、好条件を提示してくれる買主と出会うまでのんびり不動産仲介業者への依頼を継続するのも間違いではありません。
いずれにしても、不動産仲介業者・事故物件買取業者を含めて、複数の不動産業者に今後の処遇について見積もり・査定を出してもらうべきでしょう。複数の専門業者の知見を参考にすればある程度の方向性が見えてくるはず。ひとりで悩んでいても埒が明かないので、まずは不動産一括査定サイト等をご活用ください。

不動産の現金化を急がないのであれば、賃貸物件として活用する・駐車場等に転用するという選択肢も有力です。エリアにおける需要次第ですが、幅広い選択肢をもつことが何より重要です。
3:孤独死物件は相場通りの成約が難しいと理解する
孤独死物件を売却するときには、孤独死物件は相場通りの成約が難しいという実情を充分理解しておきましょう。
一般的には、孤独死物件は相場から3割~5割程度下落すると言われています。つまり、事故物件を客観的事情だけをベースに算出した相場通りに売りに出しても成約しにくいということです。
あまりに高値での成約にこだわり過ぎると、いつまでも孤独死物件を売却できずに管理コストだけが月々増えていくだけのマイナス収支がつづくということを意味します。
したがって、孤独死物件を一般の不動産市場で売却する際には、買取業者への依頼も視野に入れつつ、あらかじめ売値の妥協点を決めておくのが無難でしょう。

事故物件性を低下させる手法として、「孤独死事案発生時から時間を置いてから不動産市場で売却する」という方法が提案されることがあります。確かに、「孤独死発生直後」と「孤独死が発生してから5年経過後」では購入希望者側の嫌悪感レベルにも差があるため、比較的値下げ率を軽減して成約をにこぎつけられる可能性は高まるでしょう。ただし、不動産は築年数が経過するほど資産価値が低下する性質があるものだということを忘れてはいけません。事故物件性を軽減できたとしても、物件自体の価値が下落すれば結果として成約価格が落ちるリスクがある点を考慮して売却時期を見定めましょう。
4:事故物件の数は増えているので弱気になる必要はない
「孤独死が発生したから普通に売るのは諦めた方が良いのか…」と悲観し過ぎる必要もありません。なぜなら、日本における事故物件の数は年々増えているため、事故物件自体が珍しい事象ではなくなってきているからです。
たとえば、東京23区内における一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数は次のように推移しています。
平成24年 | 2,733人 |
---|---|
平成25年 | 2,878人 |
平成26年 | 2,891人 |
平成27年 | 3,127人 |
平成28年 | 3,179人 |
平成29年 | 3,333人 |
平成30年 | 3,882人 |
ここから明らかなように、孤独死事案は年々増加傾向です。日本全体における核家族化・高齢社会化などの動向は今後もつづくと考えられるので、売りに出される事故物件の数も比例して増加することになります。
つまり、不動産市場における事故物件の割合が高まるため、事故物件であることの劣位性は相対的に軽減されるということ。「孤独死が発生したから売却できない」という固定観念に支配される必要はありません。
事故物件であること自体から目を背けることはできませんが、「事故物件だから最初から半額程度で売りに出そう」というように過度に提示条件を下げる必要もないことを覚えておきましょう。
孤独死物件の売却は難易度が高い!負担が重いなら訳あり物件買取業者に依頼しよう
タイミング・購入者との出会いなど、運に影響される要素が強いのが不動産売却の難しいところ。そのような状況において、孤独死物件の売却の難易度が高くなるのは自明です。
ただ、注意点を踏まえつつ、信頼できる不動産仲介業者・事故物件買取業者と出会うことができれば、孤独死物件の売却可能性を高めることができます。
数々の懸念材料・不安を抱いている所有者も多いでしょうが、孤独死物件を引き受けてくれる業者はかならず現れるはず。まずは不動産一括査定サイト等を活用して、相性の良い業者を選別することからスタートしてください。
賃貸物件の賃借人が孤独死した場合、特殊清掃等の費用は本人の加入していた保険等・連帯保証人・相続人などに請求することが可能です。また、賃貸人である不動産オーナー側が加入している保証会社・損害保険会社のサービスを利用できるケースもあるのでご確認ください。