住宅ローンが残っている不動産は売却可能?売却手続きの流れや注意点を分かりやすく解説

住宅ローンが残っている不動産は売却可能?売却手続きの流れや注意点を分かりやすく解説

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住宅ローンが残っている不動産を売却するときには、通常の不動産売却よりも丁寧に手続きを進めなければいけません。

なぜなら、自己資金や売却価格でローン残債を完済できなければローン名義人は高額の返済義務を抱えたままの状態がつづきますし、そもそも不動産に設定された担保権を抹消することができない状態では購入希望者が現れる可能性も極めて低いと考えられるからです。

そこで、今回は、住宅ローンが残っている不動産の売却方法売却手続きにおける注意点などについて総合的に解説します。物件の状況や市場相場次第で売主に与えられる選択肢は大幅に変わってくるので、慎重な判断のもと、ご自身の状況に適した手続きを選択しましょう。

目次

住宅ローンが残っている不動産の売却方法は2つ

住宅ローンが残っている不動産を売却するときには、「売却価格で住宅ローン残債を完済できるか否か」がポイントになります。

なぜなら、住宅ローン残債が残っているということは、不動産に抵当権などの担保権が残った状態だということ。つまり、前の所有者が設定した担保権がいつ実行されるか分からない(前の所有者がいつ住宅ローン残債を滞納するか分からない)ような不動産を購入したいという購入希望者を見つけるのは至難の技だからです。

したがって、住宅ローンが残っている不動産を売却する際には、売却前に将来的な成約価格をチェックしたうえで、アンダーローン・オーバーローンそれぞれの状況に応じて適切な手続きを進めていくことが必要だと考えられます。

ここからは、住宅ローンが残っている不動産を売却する前に実施すべき調査・準備活動、アンダーローン・オーバーローン時の売却活動の進め方について具体的に見ていきましょう。

住宅ローンが残っている不動産を売却する前にやるべきこと

住宅ローンが残っている不動産を売却する場合には、「自分の土地・建物・マンション・戸建て住宅などがいくらで売却できそうなのか」「売却価格で住宅ローン残債を完済できるのか」という点を調査しなければいけません。

まずは住宅ローンがいくら残っているかを確認しよう

大前提として、返済中の住宅ローンがいくら残っているのかを確認する作業が必要です。

売却活動に入る前に、次の方法によって住宅ローン残債総額をご確認ください。

住宅ローン残債のチェック方法
  • 契約時に発行される返済予定表を確認する
  • 毎年郵送される残高証明書を確認する
  • 金融機関の会員専用ページで確認する

次に不動産がいくらで売却できそうか予想を立てよう

つづいて、次の方法で物件がいくらで売却できるのかを調査しましょう。

不動産の売却価格のチェック方法
  • 不動産一括査定サイトの活用
  • 不動産仲介業者に査定依頼を出す

ただし、不動産売却の一般的な流れは「仲介業者への依頼」という方法によって行われるものである点に注意が必要です。というのも、不動産仲介業者は市場から物件の購入希望者を見つけてきてくれるのですが、「不動産がかならず売却できる」「不動産がかならず〇〇万円で売却できる」ということを保証するものではないからです。あくまでも、「今の市場価値を前提にすれば売却市場において△△万円の値付けがされる可能性が高い」ということを示す指標でしかありません。

したがって、所有不動産の売却予想をする際には、できるだけ多数の不動産仲介業者の査定額をチェックするのがポイント。複数業者の机上査定結果を比較することによって、不動産の売却活動が有利になり、また、物件売却の確実性を高めることができます。

そのためには、不動産一括査定サイトなどの便利なツールを活用して、所有者サイドのニーズに即した不動産仲介業者に出会わなければいけません。以下のリンク先で不動産一括査定サイトの選び方やおすすめサイトを紹介しているので、この機会にご活用ください。

おすすめ不動産一括査定サイト31選!何を基準に選ぶべきかを解説します

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2021年12月27日
洸太郎
洸太郎

「不動産が売れるか売れないか分からない不安定な状態に置かれるのは嫌だ」「価格は気にしないから早期に物件を手放したい」という方には、不動産買取業者への依頼がおすすめです。仲介業者とは異なり、買取業者自身が買主になって物件を引き受けてくれるので、最短即日で契約締結に至るケースもあります。ただし、買取業者の査定価格は市場相場から2割~3割値引きされることが多いです。高額での成約を希望する方は信頼できる仲介業者に依頼をして、万全の体制で売却活動に注力しましょう。

住宅ローンが残っている不動産の売却方法1:アンダーローンの場合の流れ

住宅ローンが残っている不動産の売却価格が残債を上回る”アンダーローン”のケースでは、売却手続の流れで注意すべき点はさほど多くはありません。また、売却価格が住宅ローン残債を下回る状態において不足額を預貯金等で一括返済する場合も同様です。

アンダーローンの不動産の売却手続きは次のような流れをたどります。

  1. 不動産仲介業者と媒介契約を締結
  2. 不動産仲介業者が買主を募集
  3. 購入希望者と具体的な売却交渉・売買契約の締結
  4. 抵当権抹消登記手続き
  5. 決済・所有権移転登記手続き・引渡し

不動産仲介業者との間で締結する媒介契約の種類に注意

住宅ローンが残っている不動産を売却する際には仲介業者選びが重要。なぜなら、できるだけ高額での売却を実現してくれる不動産業者に依頼をしなければ”アンダーローン不動産”としての売却活動を進めることができないからです(たとえば、集客力のない不動産業者に依頼してしまうと成約に至らないリスクがあります。また、良い購入者層への営業力がない業者だと市場相場以下での購入希望者しか現れません)。

そこでポイントになるのが、不動産仲介業者とどのような種類の仲介契約を締結するのか、という点。実は、媒介契約には次の3種類の種類があるため、物件の性質によって業者との契約内容を調整することが高値成約のコツとなります。

専属専任媒介契約
  • 不動産業者1社のみと契約を締結(他社への同時依頼・直接取引は禁止)
  • 築古物件や瑕疵不動産など、熱心な営業サポートが必要な物件におすすめの契約類型
  • “囲い込み”のリスクがあるので信頼できる業者選びが重要
専任媒介契約
  • 不動産業者1社のみと契約を締結(他社への同時依頼は禁止。直接取引は可能)
  • 自分のツテを頼って売却活動を並行したい売主におすすめの契約類型
一般媒介契約
  • 複数の不動産業者と同時契約が可能(直接取引も可能)
  • エリア条件が良いなど人気の不動産におすすめの契約類型(勝手に売れるので)

たとえば、都市部の人気物件や公共交通機関へのアクセス良好な不動産であれば、どの不動産仲介業者に依頼をしてもすぐに成約できるケースがほとんど。それならば、一般媒介契約を締結して、複数社が囲っている客層に対して幅広く営業活動を進めるのが売却活動の短縮化に効果的でしょう。

これに対して、築年数が経過している物件など、熱心な売却サポートがなければ成約が難しい不動産については、不動産仲介業者が営業・広告活動に力を入れてくれる専任媒介契約専属専任媒介契約がおすすめです。物件の成約が不動産業者の利益に直結するので、不動産が塩漬け状態にされるリスクを回避できます。

このように、不動産業者選び・締結する契約内容によって成約可能性は変動し得るもの。不動産一括査定サイトなどを活用してできるだけ多数の不動産業者の話を聞きながら、信頼できそうな会社に売却活動を依頼しましょう。

なお、媒介契約の種別については以下のリンク先でも詳しく解説しています。あわせてご一読ください。

不動産売却の媒介契約の3つの種類はどれを選ぶべき?「専属」「専任」「一般」それぞれの特徴を徹底解説

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2021年7月30日

実務上は抵当権抹消手続きと決済は同じタイミングで行うことが多い

理屈だけで考えると、アンダーローンの売却の流れ④⑤は実現不可能なようにも思えます。というのも、抵当権抹消登記手続きは住宅ローン完済後に着手すべきものですが、契約締結・決済・物件の引き渡しは抵当権抹消登記後にするのが本則のはず。つまり、抵当権抹消登記手続きに必要である住宅ローン完済のための売却資金が手に入らないということです。そして、住宅ローンを完済するための売却資金を抵当権抹消手続きのタイミングで得ることができないということは、④⑤の流れをたどることが理屈上不可能だということを意味します。

そこで、アンダーローン状態の住宅ローンが残っている不動産を売却する際には、「④⑤の手続きを同時に行う」という手法が実務上主流です。具体的には、売主・買主・住宅ローンを組んでいる金融機関・司法書士が同席して各種登記手続き・ローン返済の確認をまとめて処理することになります。

このように、住宅ローンが残っている不動産を売却する際には、登記実務によって売却手続き上生じる齟齬を調整しなければいけません。売主個人だけで売却活動をするにはいささかハードルが高いと思われるので、基本的には仲介業者に任せてしまうのが適切です(つまり、信頼できる不動産業者さえ見つかれば、専属媒介契約ではなく専属専任媒介契約を締結してしまった方がスムーズだということ)。

洸太郎
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司法書士への依頼料・仲介手数料を節約したいという売主のなかには売却手続きをすべて売主個人で進めるという場合もあるでしょう。その場合には抵当権抹消登記手続きも売主側で処理する必要があるので「住宅ローン等を完済した(法務局HP)」から登記手続きの申請方法等についてご確認ください(抵当権抹消登記申請書・登記原因証明情報・登記識別情報または登記済証・抵当権者の委任状等が必要となります)。

不動産売却時に発生する費用にも注意しよう

住宅ローンが残っている不動産を売却する際には、不動産売却時に発生する諸経費にも注意しなければいけません。なぜなら、契約書に計上される売却価格だけに注目するとアンダーローン状態だとしても、コスト負担の分だけ売主側の利益が差し引かれるので、結果として手元に残るお金がマイナスになるおそれがあるからです。

不動産売却時に発生するコストは次の通り。仲介業者に依頼をすれば費用や確定申告等の必要性についても事前に丁寧にアドバイスをもらえるので漏れなく確認しておきましょう。

  • 仲介手数料
  • 印紙税
  • 抵当権抹消登記手続き費用
  • 住宅ローンの返済手数料
  • 譲渡所得税・住民税
  • その他費用
仲介手数料

仲介手数料とは、成約時に仲介業者に支払う費用のことです。次のように、成約価格に応じて手数料の上限額が定められています。

  • 売買価格200万円以下:(売却価格 × 5%)+ 消費税10%
  • 売買価格200万円超~400万円以下:(売却価格 × 4% + 2万円)+ 消費税10%
  • 売買価格400万円超~:(売却価格 × 3% + 6万円)+ 消費税10%

仲介手数料は売買契約成立時・決済後の2回に分けて支払うのが一般的。ただし、手付解除・違約解除などに抵触するケースでは売買契約が成立しなくても仲介手数料が発生し得る点に注意が必要です。

印紙税

売買契約書に貼付する収入印紙代金が必要です。契約金額ごとに印紙税が定められており、売却価格が高くなるほど高額の印紙税が発生します。

なお、令和4年3月31日までに作成される不動産売買契約書の印紙税については軽減税率が適用される点にご注意ください(軽減税率の適用が延長される可能性もあります。また、軽減税率の適用対象は売却価格10万円を超えるケースのみです)。

契約金額 本則税率 軽減税率
10万円以下 200円 本則通り
10万円~50万円以下 400円 200円
50万円~100万円以下 1,000円 500円
100万円~500万円以下 2,000円 1,000円
500万円~1,000万円以下 10,000円 5,000円
1,000万円~5,000万円以下 20,000円 10,000円
5,000万円~1億円以下 60,000万円 30,000円

参照:不動産売買契約書の印紙税の軽減措置 – 国税庁HP

抵当権抹消登記手続き費用

抵当権抹消登記手続きでは、不動産1つにつき登録免許税1,000円と司法書士への依頼料が必要です。売却時に不動産を分筆する場合には、分筆数に応じて登録免許税が加算されます。

司法書士事務所によって費用は異なりますが、数千円~2、3万円程度と設定していることがほとんど。なお、個人で抵当権抹消登記手続きを実施する際には登録免許税だけで足ります。

住宅ローンの返済手数料

住宅ローン残債の返済事務手数料が発生します。

金融機関ごとに事務手数料額は異なるので、お手元の契約書をご確認ください。

参考までに、三菱UFJ銀行の期限前完済手数料は次の通りです。

  • インターネット申込み:16,500円
  • テレビ窓口申込み:22,000円
  • 窓口申込み:33,000円
  • 保証会社事務手数料:11,000円

参照:当行住宅ローンをご利用中のお客さま – 三菱UFJ銀行

譲渡所得税・住民税

土地・住宅・マンションなどを売却した際に利益(譲渡所得)が発生した場合には、譲渡所得税・住民税を支払わなければいけません。

売却する不動産の所有年数に応じて次のように税率が定められています(別途、復興特別所得税2.1%の納付義務あり)。

  • 短期譲渡所得(5年以下):譲渡所得税率30%、住民税率9%
  • 長期譲渡所得(5年超):譲渡所得税率15%、住民税率6%

もっとも、譲渡所得税・住民税の算定基礎となる譲渡所得は【収入金額 – (取得費 + 譲渡費用) – 特別控除額】で計算されるもの。ここまで紹介した各種譲渡費用は当然差し引くことができますし、また、「特定のマイホームを買い換えたときの特例」「マイホームを売ったときの特例」「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」などの特別控除制度も多数用意されているので、投資用不動産を売却するようなレアケースを除いて、住宅ローンが残っている不動産を売却する際に譲渡所得税・住民税が発生する可能性は低いと考えられます。

参照:No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき) – 国税庁HP

その他費用

住宅ローンが残っている不動産を売却する際には、効果的な売却活動を進めるための費用が別途発生するケースがあります。

たとえば、購入希望者の内覧対応の際には物件内ができるだけ綺麗な方が印象が良くなるもの。事前にハウスクリーニングを実施するなら清掃費用等が必要です。また、排水管の損傷や壁紙の汚損などの修繕費用がかかる可能性もあります。

売却活動にどこまで力を入れるか次第ですが、依頼をする不動産業者の担当者と都度相談をしながら投下費用の範囲を決定しましょう。

洸太郎
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売却予定物件に大規模な修繕・補修を実施して綺麗な仕上がりにするほど高値成約の可能性は高まります。その一方で、投下コストが重くなるほど経済的なしわ寄せは避けられません。アンダーローン物件の売却時には古家付き土地・リフォーム可物件(場合によっては解体も)などの幅広い選択肢が用意されているので、戦略的に売却活動を進めましょう。

住宅ローンが残っている不動産の売却方法2:オーバーローンの場合の流れ

住宅ローンが残っている不動産の売却価格ではローン残債に足りない”オーバーローン”の状態では、住宅ローンの返済義務が残る点・抵当権付きのままでは売却が難しい点を踏まえると、スムーズに手続きを進めることができません。

ただ、どうしても不動産を売却しなければならない事情があると、なんとしても成約までこぎつけたいところ。そこで、以下の方法でオーバーローン状態の不動産売却に工夫を凝らす必要があります。

  1. 住宅ローン残債を預貯金などで一括返済する
  2. 住み替えローンを利用する
  3. つなぎ融資を活用する
  4. 任意売却を実践する

それでは、オーバーローン不動産の売却方法について、それぞれ具体的に見ていきましょう。

オーバーローンの場合の売却方法1:不足分を預貯金などで一括返済する

まず、住宅ローン残債と売却価格の差額を売主側が自力で資金調達する方法が考えられます。

たとえば、預貯金・親族からの融資・ボーナス・遺産相続などで住宅ローン残債を支払えば、住宅ローン完済済みの不動産としてスムーズな売却活動が可能です。

ただし、不動産売却には一定の売却費用(仲介手数料など)が必要ですし、不動産売却後にも健全な生活をつづけなければいけません。手元の現金をすべて住宅ローン返済に充てるような状況だと不動産売却後の生活が苦しくなるリスクがあるのでご注意ください。

また、親族などからの融資を頼るときには、かならず借用書を作成して法的トラブルが発生しないようにリスクヘッジしておきましょう(もし親族から一定額の「贈与」を受ける場合には贈与税が発生する可能性もあります)。

オーバーローンの場合の売却方法2:住み替えローンを利用する

転勤・結婚・出産・再婚・親との同居などの世帯状況の変化が発生したときに、現在所有しているマイホームから別の物件への転居・買い替えを検討する人もいるでしょう。このようなケースでおすすめの方法が住み替えローンを利用するというものです。

住み替えローンとは、住宅ローン返済中の不動産を売却するときに、売却価格で相殺できない住宅ローン完済不足分と新居の購入資金をまとめて融資を受けられる金融商品のこと。預貯金に手をつけることなく、新物件への住み替えが可能となります。

住み替えローンを活用するメリット・デメリットは次の通りです。

住み替えローンのメリット
  • 住宅ローンが残っている状態でも新居が手に入る
  • 売却と購入を同時にできる
  • 住み替えに必要な費用(仮住まいへの引越代・家賃など)を節約できる
  • 二重ローン(ダブルローン)の返済負担を回避できる
住み替えローンのデメリット
  • 負担する借金増額が高額になるので滞納リスクが増大する
  • 住み替えローンの金利は一般住宅ローンよりも高くなる傾向がある
  • 高額融資になるので審査が厳しい(与信次第では住み替え不可になることも多い)
  • 売却と購入が同時なのでスケジュールがタイト

特に注意を要するのが、売却と購入を同一期日にしなければいけないという点。手続きが簡略化できるというメリットがある反面、「新しい物件を購入する日」「古い物件を手放す日」を一致させるのは難易度が高いので、住み替えが実現しないというケースも少なくありません。

したがって、住み替えローンの利用を検討する際には、金融機関の担当者だけではなく不動産業者の協力が不可欠です。直接取引で売却活動を進めるのは現実的ではないので、かならず信頼できる不動産仲介業者などに相談しましょう。

洸太郎
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住み替えローンを組むときには複数の金融機関のプランを見比べて厳密なマネープランニングをしなければいけません。楽観的な返済計画を組むと滞納が生じて強制執行等のリスクも生じるので、かなり悲観的な返済プランも想定しておくことをおすすめします。

オーバーローンの場合の売却方法3:つなぎ融資を活用する

住み替えローンを利用できないケースの対処法として「つなぎ融資」が挙げられます。

つなぎ融資とは、物件買い替え時に支払う必要がある費用等を補填するための金融商品のこと。基本的には数カ月~1年程度の短期融資を想定しています。

たとえば、旧物件の売却と新物件の購入が同時にならずに住み替えローンを利用できないケース(いわゆる「買い先行」など)、注文住宅のように土地の購入費・着工金・中間金などの費用負担が事前に発生するケースでは、住宅ローンが残っている不動産の売却資金が入ってくる前に金策に迫られるはず。このような場面でつなぎ融資を利用すれば、新居の購入費用を捻出可能となり、また、物件の売却が成立したタイミングでつなぎ融資を完済することができます。

つなぎ融資のメリット・デメリットは次の通りです。

つなぎ融資のメリット
  • 買い先行時の資金不足を回避できる
  • 総量規制の例外として位置付けられる
  • 仮住まいに必要な費用負担を回避できる
  • 「買取保証サービス」がセットの商品が多いので不動産の売却自体は可能になる
  • いわゆる「分割融資」とは異なり無担保で契約できる
つなぎ融資のデメリット
  • 短期的な融資商品なので高利率条件を強いられる(つなぎ融資完済までは利息の支払いを要する)
  • 一般市場での成約が叶わず買取保証サービスでの売却になると市場相場より低廉な価格で手放さざるを得なくなる
  • 住宅ローンとセットの商品が多いので利用できる金融機関が限られている
  • つなぎ融資と新規住宅ローンの2本分の契約手数料・事務処理費用が発生する
  • 住宅ローン控除制度の対象外

オーバーローンの場合の売却方法4:任意売却を実践する

住宅ローンが残っている不動産の売却を検討している人のなかには、怪我や病気で仕事ができなくなった・不況が原因で退職を余儀なくされたなどの事情で住宅ローンを返済できなくなった所有者もいるはずです。

もちろん、住宅ローン以外の借金問題を任意整理で改善する・個人再生の住宅ローン特則を利用してマイホームを手元に残す道を模索するなどの方法も考えられます。ただ、家計状況を踏まえたとき、どうしても住宅ローンの返済継続が難しいという事情を抱えるケースもあるでしょう。

このように、生活維持のために自己破産を選択せざるを得ない人にとっては、マイホームが競売による換価処分を避けられません。もっとも、マイホームが競売手続きにかけられると市場相場よりも大幅に低廉な価格での成約になるのがほとんどなので、売主側にメリットがあるとは考えにくいでしょう。

そこで、自己破産を検討している債務者が住宅ローンが残っている不動産を売却する際には、「任意売却」を利用することをおすすめします。

任意売却とは、競売手続きとは異なり売主側の希望条件を提示して不動産を一般市場で売却する方法。任意売却のメリット・デメリットは次の通りです。

任意売却のメリット
  • 所有者の経済的困窮状況を非公開にして一般市場で売却できる
  • 引越し費用等の負担を回避・軽減できる可能性が高い
  • 持ち出し金(登記費用、マンションの管理費・修繕費、固定資産税、仲介手数料など)を売却資金から捻出できる
  • 転居日や契約条件などについて売主側と交渉しやすい
  • 市場相場通りの売却を実現しやすい
  • 相殺できない住宅ローン残債の分割払い計画を作り直せる
任意売却のデメリット
  • 債権者・連帯保証人の同意がなければ任意売却できない
  • 競売手続きよりも手続き負担が重い
  • 住宅ローン残債を滞納した状態がつづくと信用情報機関に異動情報が登録される(ブラックリスト情報)
洸太郎
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住宅ローンの返済が難しくなったときには、遅延損害金の発生・残債の一括請求などの滞納ペナルティが増大する前に金融機関に相談するのが最優先事項です。滞納理由・今後の再起可能性などを考慮した結果、支払い期限の猶予や分割払い計画の変更を受け入れてくれる可能性があります。滞納が深刻化するとリカバリーが難しくなるので、できるだけ早期に生活再建に向けて動き出しましょう。

住宅ローンが残っている不動産売却の注意点は4つ

ただでさえ高額資産である不動産を売却するのは簡単ではありません。不動産業者選びから購入希望者との交渉、書類の準備などの負担もかかります。

ただ、住宅ローンが残っている不動産を売却する際には、特に次の4点について注意をしなければいけません。なぜなら、住宅ローンが残っている以上は「高額の負債」を背負った状態であるため、この負債の存在を無視することができないからです。

  1. 売却のタイミング(売り先行・買い先行)を慎重に判断する
  2. リースバックという選択肢も視野に入れる(物件に住みつづけたい売主におすすめ)
  3. 離婚や相続時のトラブル要因は予防する
  4. 利用できる税制等はフル活用する

それでは、住宅ローンが残っている不動産売却時の4つの注意点について、それぞれ具体的に見ていきましょう。

住宅ローンが残っている不動産売却の注意点1:売り先行・買い先行を慎重に判断する

住宅ローンが残っている不動産を売却する際には売却時期のタイミングが重要です。

もちろん、売却価格をできるだけ高めるために、物件ニーズが高まる時期を選んだり経済動向を読んだりすることは大前提。そのうえで、特に新しい物件の購入を控えている売主にとっては、売り先行・買い先行が売却手法自体にも影響を与える点を見逃せません。

売り先行:所有不動産を売却した後に新しい物件を購入する
自己資金不足の売主が住宅ローンが残っている不動産を売却する際におすすめの売却の流れ。売却によって調達できた資金を新居の購入費に充てられる点・二重ローンを避けられる点が魅力。ただし、売却活動を進める際に物件に居住している状況が発生するので、内覧対応時の配慮を要する。
買い先行:所有不動産を売却する前に新しい物件を購入する
購入希望者がなかなか見つからないが差し迫って転居を要する場合には買い先行を強いられることも。購入資金不足の所有者はつなぎ融資の活用などで資金調達をすることになる。

不動産売却が厄介なのは、「売却したい」と思ったときに購入希望者が現れるとは限らない点。綿密な売却スケジュールを組んだとしても買主が現れない限りは手続きを進められないので、2つの物件の取り扱いが宙に浮くリスクを避けられません。

だからこそ、信頼できる不動産業者に依頼をして効果的に営業活動を進めてもらう必要が生じます。不動産一括査定サイトなどを活用して、できるだけ多数の不動産業者のなかから相性の良い業者を選びましょう。

住宅ローンが残っている不動産売却の注意点2:売却後も住みつづけたいならリースバック

住宅ローンが残っている不動産の売却を検討している人のなかには、返済状況に問題が生じた結果、売却を余儀なくされるという所有者も少なくはないはず。なかには、「所有権を手放すのは仕方がないとしても、できれば思い入れのあるマイホームには住みつづけたい」と希望するケースもあるでしょう。

このように、「マイホームに住みつづけること」を最優先に考える方には、リースバックという手法がおすすめです。所有物件を売却したうえで、購入者から物件を賃借するという仕組みになっているので、住み慣れた居住環境を維持したまま住宅ローンの返済負担から逃れることができます。

また、リースバック契約には、買い戻し特約を付けることができるケースも。第三者への転売を防いで将来的に家計が落ち着いたタイミングで物件の所有権を取り戻すことができます。つまり、短期的な資金調達の必要に迫られるケース(老後の資金・子どもの教育費・治療費・事業資金の調達)にも対応可能だということです。

リースバックのメリット・デメリットは次の通り。住宅ローンを払えないというシンプルな状況から資金調達というテクニカルな場面にも対応できます。

リースバックのメリット
  • 短期間での資金調達に対応できる(不動産会社・ファイナンス会社の事務処理がはやい)
  • 思い出あふれる物件に住みつづけられる
  • 所有コストから解放される(税金・修繕費・積立金・火災保険料等)
  • 借金せずに資金調達できる
  • 住宅ローンの滞納ペナルティを回避できる
  • 買戻し特約を付けられる
リースバックのデメリット
  • 売却相場より低価格での査定になる傾向が強い
  • 賃貸物件に居住するので賃借人としての善管注意義務等が科される
  • エリアの賃料相場次第ではローン返済より高額のリース料金が生じるリスクあり
  • リースバックを利用できるのはアンダーローンの場合のみ
  • 賃貸借契約の更新拒絶をされると物件からの退去を強いられる
  • 不動産が所有資産ではなくなるので高額融資の際の審査に響く
洸太郎
洸太郎

純粋な資金調達だけを考えるのなら、リバースモーゲージ型住宅ローンという手法も有効な選択肢のひとつです。リバースモーゲージとは、不動産を担保提供して資金調達を行い、借り入れをした当人(及び配偶者)の死亡によって不動産を売却し、その代金で調達資金を返済するという取引手法のこと。メインターゲットは老後の生活資金に不安を抱える高齢者です。毎月の支払いは利息だけなので、老後の生活費の負担を軽減できるでしょう。

住宅ローンが残っている不動産売却の注意点3:離婚や相続時のトラブル要因は予防する

住宅ローンが残っている不動産の売却を検討している方のなかには、離婚や相続が原因で物件を手放すことを検討している人も少なくはないはずです。多数の利害関係人が存在するため、トラブルが深刻化しないようにスムーズに手続きを進めなければいけません。

特に、離婚・相続が絡むケースでは次のポイントへの配慮が不可欠です。別途、以下のリンク先でも詳しく解説しているのでご参照ください。

離婚時の住宅売却の注意点
  • ペアローンの扱い(単独名義への変更、別の連帯保証人の問題など)
  • 売却費用の負担割合
  • 慰謝料や財産分与との調整
相続時の住宅売却の注意点
  • 被相続人の意思を明確にする
  • 遺産分割協議が揉めそうなら弁護士・司法書士などの専門家に相談をする
  • 共有名義関係で複雑な事情が生じた場合には相続放棄でトラブルから逃げるのも選択肢のひとつ
離婚した時に共有名義不動産はどうするべき?共有持分だけを処分する方法まで解説

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2021年12月14日

住宅ローンが残っている不動産売却の注意点4:利用できる税制等は駆使する

不動産の売却を円滑化するために多数の優遇税制等が用意されています。利用できる制度を活用しなければ手元に残るお金が少なくなりかねません。

特に、住宅ローンが残っている不動産を売却するときには、ローン返済資金・買い替え費用などの資金繰りが重要。使えるお金は多い方が良いというのは共通認識のはずです。

たとえば、次のような制度が利用できるので、不動産業者や専門家のアドバイスを参考にできるだけ有利に売却手続きを進めましょう。

他にも、各自治体ごとに物件購入者が利用できる修繕費用などへの助成制度・補助金制度などが多数用意されています。不動産売却交渉時に売主側に有利な条件を引き出す材料にもなるので、お住まいの自治体まで売主サイドでチェックをしたうえで、売却時に買主サイドに情報提供してあげましょう。

住宅ローンが残っている不動産を売却するなら査定額のチェックからスタートしよう

今回紹介したように、住宅ローンが残っている不動産を売却する際には、多角的な視点で自分の状況に適した売却手続きを選択する必要があります。

特に、不動産売却は売主側が思い描いていたプラン通りには手続きが進みにくいもの。「購入希望者が現れるのか」「当事者双方の希望条件が折り合うのか」「住み替えローンなどの審査に通るのか」など、不確定要素が多いからこそ慎重な判断が随所に求められます

このように変動事情が多い不動産売却を成功に導くためには、できるだけ予測可能性を高められるような状況を作り出すのがポイント。そのためには、信頼できる不動産仲介業者への依頼は不可欠です。

不動産一括査定サイトを活用すれば自分のエリアに強い不動産業者・所有者の希望を汲み取ってくれる会社に出会うことができるはず。入念な事前調査が売却成功のカギを握るといっても過言ではないので、できるだけ業者選びに時間をかけて最適なパートナーを選ぶようにしてください

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2021年12月27日

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30代、フリーランスライター・翻訳家。マイホーム購入のタイミングで不動産に興味をもつ。現在は関西の山奥で田舎暮らしを満喫しながら、めぼしい中古物件をリサーチする毎日。不動産関連の知識を深めながら、国内外問わず良い物件との出会いを待ち望んでいます。