築古物件を売却する時の注意点は?ポイントをおさえて高値で売却を目指そう

築古物件を売却する時の注意点は?ポイントをおさえて高値で売却を目指そう

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築古物件の売却を検討している方の多くは「築古物件=売却が困難」と思われているでしょう。実際、新築や築浅物件に比べて築古物件は売却が困難です。買い主からすれば、物件の購入は長くその家と付き合っていくことになるので、先が短い築古物件は敬遠されがちです。

では築古物件は絶対に売却できないのか?と言えば、そうとも言い切れません。築古物件に対しても需要はありますし、注意点や売り出し方、ターゲット層を戦略的に考えていれば、確実な売却は可能です。

そこで今回は、築古物件も売却はできる?押さえておくべき注意点は?と悩まれている方に向けて、築古物件を売却するときの注意点からポイント、設定すべきターゲット層から売り出し方法まで詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

目次

築古物件でも売却は可能?そもそも築古物件の定義は築何年?

いわゆる築古物件と呼ばれる物件は、一般的に築30年以上経過した建物のことを言います。では、築30年以上経過した築古物件は売却できるのか?と悩まれている方も多いでしょう。

まずは、築古物件の定義や築古物件でも売却ができるのか?について詳しくお伝えします。築古物件を所有されている方、築古物件の処分に悩まれている方はぜひ参考にしてください。

築30年以上経過で築古物件と呼ぶのが一般的

築古物件とは「築年数が経過していて古くなった建物」のことを言いますが、築何年経過すれば築古と呼ばれるのか、法律上の明確な定義はありません。

ただ一般的には、築年数が30年を経過すると築古物件と呼ばれるようになります。とは言っても、その物件に関わる人が「築年数が経過して古い物件」と感じれば、築古物件と呼んでも問題ありません。

では、逆に「築浅物件」の定義は何年なのか?についてもついでにお伝えします。じつは、築浅物件についても明確な定義はありません。ただ一般的に築5年以内の建物のことを築浅物件と呼びます。

つまり、築5年以下は築浅物件、築年数30年以上は築古物件と分けることができます。この間の25年間はどちらにも属さないと思っておけば良いでしょう。

【築浅・築古物件の定義】

築年数 状態
1年未満(未入居・未使用) 新築物件
築5年以内 築浅物件
築30年以上 築古物件

築古物件でも需要があるなら売却は可能

建物を売却するとき、その後その物件に住み続ける買い主からすれば、築年数はとても重要なポイントになるでしょう。しかし、その建物や立地に需要があればたとえ築年数が30年以上経過した築古物件でも売却は可能です。

その建物自体に需要がなくても土地に需要があれば、売却も可能ですし、新築そっくりにリフォームを検討されている方なら築年数はさほど気にはしません。ところが、マンションの一室等を売却するときは、状況が変わってきます。

マンションは室内のリフォーム等はできても、その建物を長く利用し続けるための躯体修繕工事が必要です。仮に大規模な修繕工事を行って長く住み続けるとしても、多額の管理費も発生します。おおよそ12年周期で大規模修繕が必要になるマンションは、タイミング次第では3度目4度目の修繕を迎えることになるでしょう。

一般的には、管理費として管理組合が積み立てを行いますが、築年数経過に伴って修繕箇所が増えるため必然的に管理費も高額になります。

一方、戸建て住宅なら建て替えや大規模リフォーム等を前提として築古物件を購入される方が大半です。建物自体に需要がなくても土地に需要があれば建物ごと売却できるでしょう。

そもそも日本の住宅市場は、「クラップ・アンド・ビルド」という文化が非常に強く住宅市場に根付いています。クラップ・アンド・ビルドとは、古くなった建物を取り壊して新たな建物を建築することですが、日本の住宅市場ではこの期間が非常に短いと言われています。

その理由のひとつとして、税法上の耐用年数が大きく関係しています。税法上の耐用年数とは、減価償却資産を計算するときなどに利用される建物の耐用年数を指しますが、事実上、その年数が経過した時点でほぼ価値がなくなると言われているようなものです。

【構造別耐用年数】

構造 耐用年数
木骨モルタル造MS 20年
木造・合成樹脂MS 22年
レンガ・石・ブロック造MS 38年
鉄筋コンクリート(RC)造MS
鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造MS
47年

参考:国税庁|減価償却資産の償却率表

たとえば、木造戸建てやアパート・マンションなら税法上の耐用年数はわずか22年です。いわゆる築古と呼ばれる物件になる前には、耐用年数を迎えてしまうわけです。このような状態になると、税法上の寿命を迎えてしまった物件として、著しく資産価値が減少するため売却は困難になります。

一方で、RC・SRC造(鉄筋コンクリート・鉄骨鉄筋コンクリート)の税法上の耐用年数は47年です。仮に築30年経過した築古物件でも、税法上の資産価値はまだ認められているため、ある意味資産価値を担保されている状態と言えるでしょう。

このことからも、売却を検討している物件の構造は何か、築年数は何年か、そもそもその物件に需要があるのか?が売却できるか否かの大きなポイントになるでしょう。

ちなみに、日本の建物が取り壊されるまでの平均年数はわずか27年です。ほとんどの物件が、築古を迎える前に取り壊されてしまうと言われています。築古物件の状況や需要次第では、売却が困難かもしれないと思っておいたほうが良いでしょう。

【各国の建物使用年数】

使用年数(平均)
日本 27年
アメリカ 67年
イギリス 81年

参考:日本の住宅は何故下がる?スクラップ&ビルドの文化

もちろん、各国によって構造的な割合は大きく異なります。日本では昔ながら木造住宅が多いため、結果的に上記表のようになっています。しかし、クラップ・アンド・ビルドの文化が根付いているのは事実ですし、築古物件を好んで購入しようとしないのが日本人の心理であることは間違いありません。

築年数よりも新耐震基準・旧耐震基準の違いがポイントになり得る

築古物件と一口に言っても、実際の築年数はその建物ごとによって異なります。自分が所有する物件を売却する際に考えるのは、築古か否かよりもその建物が新耐震基準で建てられた建物なのか、旧耐震基準で建てられたのかを知っておかなければいけません。

建築基準法が変わり、新耐震基準での設計を開始されたのが1981年であるため、築40年以上経過している築古物件は、旧耐震基準で建てられている可能性が高いです。

旧耐震基準で建てられた建物であることを理由に、売却が制限されることはありません。しかし、買い主の心情としては当然、新耐震基準で建てられた建物を購入したい、住みたいと考えるのは当然です。

【旧耐震・新耐震基準の違い】
住宅・建築物の耐震化について
出典:国土交通省|住宅・建築物の耐震化について

旧耐震基準 震度5強程度の中規模地震でも倒壊・崩壊しない構造
新耐震基準 震度6〜7程度の大規模地震でも倒壊・崩壊しない構造

上記のように旧耐震基準の建物は、震度5強程度の中規模地震が発生しても倒壊・崩壊しないように設計すれば基準をクリアしていました。しかし、日本国内では最大震度5強を超える地震は頻繁に発生しています。

そこで、新耐震基準では震度6〜7程度の大規模地震が発生しても、倒壊・崩壊しないことが基準として設けられています。つまり、旧耐震基準で建てられた築古物件は、買い主が地震を懸念するため売却が難しい傾向にあるでしょう。必要に応じて耐震工事を行い、売却を目指すことも検討してください。

築古物件を売却するときに抑えておきたい4つの注意点

築古物件を売却するときには、下記4つのことに注意してください。

  • 築古物件は住宅ローン審査に通りにくいため、価格設定には注意する
  • 更地にして売却をしようとすると、すぐに売却できなかったときに固定資産税が高額になるので要注意
  • 1981年以前、旧耐震基準で建てられた建物を売却するときは敬遠されがち。必要に応じて耐震工事も検討が必要
  • 再建築不可物件に指定されている築古物件は売却が非常に困難

次に、築古物件を売却する際に注意すべきことについて、詳しくお伝えします。これから築古物件の売却を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

注意点1:築古物件は住宅ローン審査に通りにくいため高額設定では売却できない

築年数が経過していていわゆる築古物件と呼ばれる建物は、住宅ローン審査に通りにくいため、買い主の資金準備が難しいことも考えられます。たとえ築古物件でも、不動産を購入しようとすれば、数百万円〜数千万円の費用が必要です。

費用の準備や税制面等あらゆる観点から判断しても、通常は住宅ローンを組んで不動産を購入するのが一般的です。ところが、住宅ローン審査はあくまでも融資の一種であるため、貸主が「貸さない」と言えば、借りられないのが通常でしょう。

そして、築古物件の場合は担保価値が少ないため、お金を貸す銀行等が融資を断るケースが多いので注意しなければいけません。銀行は数千万円単位の融資を行うわけですから、当然のリスクヘッジとして抵当権設定を行います。このことは、物件を所有されている方なら当然知っていることでしょう。

しかし、万が一買い主が住宅ローン審査の返済に滞り、抵当権に従って弁済を受けようとしたとき、そもそもその物件が売却できなければ意味がありません。つまり、築古物件で資産価値が非常に少ない物件に対して融資を行うのは、リスクでしかないのです。

どれだけ社会的信用度の高い人であっても、何らかの理由で返済できなくなってしまうことは多々あるでしょう。仮に融資を行うとしても短期間で確実に完済を目指せる金額しか融資をしません。

築古物件を売却するときは「住宅ローン審査が厳しい」ことを念頭に置いておきながら、価格設定を検討してください。資産価値と比較したときに、高額設定だと売却が難しくなるので注意しましょう。

注意点2:更地にしてしまうと固定資産税が高額になるので要注意

戸建ての築古物件を所有されている方は、「更地にして土地のみで売却したほうが早く売れるのではないか?」と考えているかもしれませんが、固定資産税に注意しなければいけません。

戸建て住宅が建っている状態の固定資産税は、「住宅用地の特例の軽減措置」が適用されているため、固定資産税が1/3もしくは1/6に設定されています。つまり、更地にしてしまうと固定資産税が3倍もしくは6倍になるので注意しなければいけません。

【住宅用地の特例の軽減措置】

小規模住宅用地
(200㎡以下)
評価額×1/6
一般住宅用地
(200㎡以上)
評価額×1/3

固定資産税評価の基準日は1月1日であるため、更地にした後しばらく売却できずに新年を迎えてしまうと、今まで以上の固定資産税が請求されてしまいます。仮に1月1日を過ぎて売却ができたとしても、基準日の所有者が固定資産税の納税義務を負うため注意しなければいけません。

築古物件を取り壊して更地での売却を目指すのは、戦略的に見ればとても有効です。しかし、各状況に合わせた正しい判断を求められるので注意してください。

「特定空き家」は軽減措置の特例の対象外

特定空き家とは、そのまま放置をしていると倒壊等の恐れがあったり、不衛生な状態になったりして人や環境に危害を与える恐れのある空き家のことです。特定空き家に指定されてしまうと、固定資産税に関わる住宅用地の特例の軽減措置を受けられなくなってしまいます。

特定空き家に関する法律は2015年に施工された比較的新しい法律であるため、あまり認知されていません。特定空き家は各自治体から指導される対象になり、最終的には強制代執行の対象にもなり得るので注意してください。

空家・空地管理センター特定空き家とは
出典:空家・空地管理センター|空家・空地管理センター特定空き家とは

特定空き家に指定されるほど築年数等が経過し、劣化しているなら早めに更地にして売却を目指してください。

更地にしようが特定空き家に指定されようが、住宅用地の特例の軽減措置は受けられません。周囲のことも考え、正しい判断をするよう心がけてください。

なお、特定空き家にしてされる恐れがある建物の状態は下記の通りです。

  • 倒壊等著しく保安上危険な状態にある建物
  • 衛生上、著しく有害となる恐れがある状態
  • 適切な管理が行われていないことによって、著しく景観を損なわれている状態
  • その他周辺の生活環境の保全に不適切な状態であること

参考:国土交通省|「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(P2)

特定空き家に指定されそうなとき、されたときはできるだけ早く更地にし、売却を目指したほうが良いでしょう。

注意点3:1981年以前に建てられた物件は旧耐震基準で敬遠されがち

旧耐震基準については、先ほど「築年数よりも新耐震基準・旧耐震基準の違いがポイントになり得る」でお伝えした通りです。

買い手側の気持ちとして「家を購入する」というのは、一生そこに住み続けるつもりで購入するわけですから、当然耐震性を気にします。ましてや、日本という国は世界的に見ても非常に地震の多い国です。

地震によって建物が崩壊・倒壊してしまうのは仕方のないことだとしても、自分の命や家族の命を考えると、旧耐震基準であることは懸念材料になり得るでしょう。また、物件を購入するときに利用される方も多いフラット35では、耐震評価基準に適合していないと借り入れができません。

その他、住宅ローン控除を利用できなかったり、地震保険料が高額になったりなど、多くの場面で買い手側が不利益を受けてしまいます。その結果、買い手側は旧耐震基準であることを理由に「購入しない」と言う結論に至ってもおかしくはありません。

注意点4:再建築不可物件は売却が難しい

あなたが所有する築古物件が、再建築不可物件になっているときは、売却をすることが難しいので注意してください。自分がその建物を建築した当初は、建築が許されていたはずです。しかし、30年以上の期間経過とともに、再建築不可物件になってしまうことも珍しくはありません。

再建築不可物件とは?
再建築不可物件とは、一度更地に戻してしまうと改めて建物を建てることができない状態にある土地・物件のことを言います。建築基準法では、災害発生時の消防活動を円滑に行うため、接道義務を設けていますが、再建築不可物件ではこの接道義務の状態を満たせていない状態です。よって、再建築ができない状態になっています。

参考:建築基準法|第43条「建築物又はその敷地と道路又は壁面線との関係等」

再建築不可物件になってしまうと、その物件を購入しても建て直すことができません。ましてや、築古物件の売却を目指すなら、建て替えを検討している買い主も多いのが現実です。よって、再建築不可物件になっている築古物件の売却は非常に困難でしょう。

また、再建築不可物件は担保的価値および、倒壊時に再建築をできないなどの理由から、住宅ローン審査に通りにくいです。物件を購入される方の多くは、住宅ローンを利用しますが、再建築不可物件であることを理由に借り入れができなければ、購入を諦めるしかないでしょう。

ただし、再建築不可物件でも接道義務を満たして建築可能物件にすれば、売却も円滑に行えるようになるでしょう。たとえば、建築基準法の定める道路に面している土地を購入して、売却を目指せば良いです。

築古物件や再建築不可物件であることを理由に売却できない。といったことはないので、その点だけは安心してください。

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2021年7月30日

築古物件を売却する際に抑えておきたい7つのポイント

築30年以上経過している築古物件は、とても大きなハンデを背負って売却を目指していると思ってください。ただ売りに出しても売却は難しいでしょう。

そこで、築古物件を売却する際に押さえておきたい7つのポイントについてもお伝えします。

  • 1:地域ニーズに合ったリフォーム・リノベーションを行う
  • 2:適正価格での売却を目指す
  • 3:1981年以前のマンションは耐震工事を行う
  • 4:戸建て住宅は更地売却も検討
  • 5:築古物件の売却に慣れている不動産会社に相談する
  • 6:インスペクション(建物状況調査)で購入者に安心をあたえる
  • 7:売却理由を聞かれた時は正直に答えることも大切

築30年以上経過している築古物件の売却を目指す際は、ぜひ参考にしてください。

ポイント1:地域ニーズに合ったリフォーム・リノベーションを行う

築30年以上経過している築古物件だと、そのままでは経年劣化等もあるため売却が難しいでしょう。必要に応じて、リフォームやリノベーションも検討し、実際に行った方が確実な売却を目指せます。

ただ、経年劣化によって現れた室内の劣化を修繕するためだけのリフォームをしても、意味がありません。どうせリフォーム・リノベーションをするなら、その地域の特性(ニーズ)に合ったように変えるべきです。

そもそも、築年数が30年以上も経過していれば、開発等によってガラッと街並みが変わっていることも考えられます。新築当時はファミリー層向けだったマンションも、現在では単身者向けの立地になっているかもしれません。もちろん、逆も然りです。

たとえば、ファミリー層に人気の立地に単身者向けのマンションがあっても、なかなか売却はできません。その理由は「そもそもその土地でマンションを探すのはファミリー層だから」です。

30年経過して変わった街並みに合わせたリフォーム・リノベーションを行うことで、築古物件も確実な売却を目指せるようになるでしょう。

なお、もともとファミリー層向けで販売されていたマンションを、単身者向けに変更するのは、大きさ的に問題があると思われがちです。そういったときでも、単身者の特定の人をターゲットにすることで自ずと答えは見えてくるでしょう。

築古物件を売却するときには、アイディアが必要不可欠です。確実に売却するため、少しでも高値で売却するためにも試行錯誤を徹底してください。

リフォームとリノベーションの違いとは?
一般的にリフォームとは「新築の状態に戻すこと」を言います。一方で、リノベーションとは「大幅な改造や利便性の向上等」のことを言います。築30年以上経過した築古物件に対しては、リフォームもリノベーションも有効です。地域ニーズに合わせた取り組みを検討してください。

また、戸建て住宅を売却する際には、あえてそのまま売り出すことも戦略的には有効です。中には「築古物件を購入して、自分好みにリフォームやリノベーションしたい」と思っている方がいるかも知れません。

なお、売却を検討している物件に瑕疵(欠陥)があったときは瑕疵担保責任によって売り主が責任を負います。万が一、物件内に瑕疵が三件されるときは、リフォームや修繕等で改善してから引き渡してください。買い主とのトラブル発展を抑制するために大切です。

ポイント2:適正価格での売却を目指す

築30年以上経過した築古物件を売却するなら、かならず適正価格で売り出すことをおすすめします。周辺相場よりも高ければ、当然購入検討リストにも入りませんし、極端に安くても買い手は疑います。

たとえば、あなたが中古マンションを購入しようとしたとき、周辺相場では2,000万円で売り出されているのに、一戸だけ1,000万円で売り出されていたらどう思うでしょうか。

「事故物件ではないか?」
「曰く付き物件ではないか?」
「何か特別な事情があるのではないか?」

など、疑わしく思ってしまうでしょう。実際、とくに疑わしい事実がなく、「安くても良いから売却したい」「確実な売却を目指したい」と思っていただけでも、結果的にマイナスに働くことも考えられます。

もちろん、逆も然りで築30年以上経過した築古物件が新築物件と同等の売り出し価格で販売されていれば、当然新築を選ばれることでしょう。要するに、高すぎず安すぎずの「適正価格」で売り出すことこそが確実な売却を目指せる大きな要因になり得るでしょう。

ポイント3:1981年以前の建物は耐震工事を行う

本記事前半でもお伝えした通り、1981年以前に建てられた築古物件は、旧耐震基準で建てられているため、大規模地震が発生すると耐えられない恐れがあります。このことを買い手が懸念して、なかなか売却できない可能性もあるでしょう。

では、どうすれば買い手は築古物件を購入してくれるのか?その答えは「買い手に安心感を与えること」です。耐震性に関する安心感を与えるためには、耐震工事がもっとも効果的です。

とは言いつつも、耐震工事を行うことで建物の外観を損なってしまう結果になりかねません。もっと言えば、マンション等の共有所有物である場合は、自分の占有部分のみを工事することは難しいため、マンション全体の工事になります。

そのため、自分1人の意見ではどうにもできないなどの問題が発生します。ここでは、可能な限り耐震工事を行うべき。程度に思っておけば良いです。とにかく、買い手側に安心感をあたえられる材料をできるだけ用意することがもっとも大切でしょう。

ポイント4:戸建て住宅は更地売却も検討

戸建ての築古物件を売却するときは、思い切って更地にして売却を目指すのも有効な戦略です。

その物件に思い入れのある売り主からすれば、「この築古物件にも価値がある」と信じて疑わないかもしれませんが、実際は築古戸建て住宅に価値が発生するケースは稀です。仮に価値がついたとしても、少額であるケースがほとんどです。

中古住宅流通、リフォーム市場の現状
出典:国土交通省|中古住宅流通、リフォーム市場の現状(中古戸建住宅の価格査定の例)

上記の通り、木造戸建ての下落率は著しく、築20年を経過すればその価値は0になるケースがほとんどです。買い主がその築古物件に価値を見出して、「現状で購入したい」と言えば話は別ですが、その土地のみが欲しいと言う購入者からすれば、更地のほうが購入しやすいです。

「その物件に思い入れがあるから解体したくはない。そのまま売りたい」
「解体すれば固定資産税が高額になるからこのまま売却したい」
「売却できるまではその家に住み続けたい」

などのようにさまざまな思想思考があることでしょう。ただひとつ、戦略としては更地にして売却を目指すのも有効。と思っておけば良いでしょう。

ポイント5:築古物件の売却に慣れている不動産会社に相談する

マンションを売却するときに不動産会社に依頼をする方も多いですが、「不動産会社ならすべて一緒」と思っていませんか?不動産を売却する際には、不動産の「売却」に特化した不動産会社を選択するのは当然です。

もっと言えば、中古物件を多く扱っている不動産会社や築古物件の売却実績が豊富な不動産会社に相談することをおすすめします。各不動産会社によっても、得意・不得意があるのは当然です。いくつかの不動産会社に問い合わせをしたうえで、温度感が合う不動産会社に相談されてみてはどうでしょうか。

なお、不動産会社との契約にはいくつかの種類があるため、どの契約で締結するかをしっかり検討しなければいけません。

契約の種類 契約期間 自己発見取引(自分で見つけた相手との取引) 指定流通機関(レインズ)への登録義務
一般媒介契約 制限なし 可能 義務なし
専任媒介契約 3か月以内 可能 契約日から7日以内
専属専任媒介契約 3か月以内 不可能 契約日から5日以内

不動産会社がマンションを売却する際の本気度も一般媒介契約<専任媒介契約<専属専任媒介契約の順で変わります。自由度や縛りも大きいですが、不動産会社の本気度も変わるため、よく検討したうえで媒介契約方法を検討してください。

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2021年7月30日

また、不動産会社に築古物件の売却を相談するときは、通常の売却方法である仲介と不動産会社にその物件を購入してもらう買取の2種類があります。いずれも「物件を売却する」という意味ではまったく同じですが、「誰に売却するのか」が異なります。

仲介では、不動産会社が間に入って買い主を探して、契約締結までの間を取り持ってくれます。売り主であるあなたは不動産会社と一緒に売却活動を行い、実際に売買契約が成立したときは仲介手数料を支払わなければいけません。

一方で、買取は不動産会社にその物件を買い取ってもらうシステムです。最終的には、その物件を購入したいという方に渡ることに変わりはありませんが、買取制度の場合は、買い主が不動産会社になるためすぐにお金を受け取れるのが最大のメリットです。

ただし、通常の売却方法と比較すると売値が約20%少なくなります。たとえば、その築古物件の売却価格相場が1,000万円だとすれば、買取だと800万円前後での取引になるでしょう。

買い主がなかなか見つからずに、管理費等を考えても早めに手放したい。と考えている方は、買取も同時に検討されてみてはどうでしょうか。

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2021年7月30日

ポイント6:インスペクション(建物状況調査)で購入者に安心をあたえる

築30年以上経過している築古物件の購入を検討している購入者からすれば、「築古物件だけど大丈夫かな?」と考えているのは当然です。売り手側としては、少しでも安心感を与えるための努力をしなければいけません。

そこで、売り手はインスペクションによって購入者に安心感をあたえることを強くおすすめします。インスペクションとは、建物の状況調査や住宅診断のことを言います。

建築士等の専門的な資格を持つ第三者の目線から、その建物の状況を審査することによって、お墨付きをもらえるのです。インスペクションを利用することで、買い手は「建築士のお墨付きなら、築古だけど安心ができる」と思い、購入に踏み切るきっかけになり得るでしょう。

自分が買い手の立場になって、少しでも不安を取り除ける方法があるなら、積極的に利用・活用することを検討してください。その結果、築古物件であっても確実な売却を目指せるようになるでしょう。

参考:全日本不動産協会|インスペクションとは?

ポイント7:売却理由を聞かれた時は正直に答えることも大切

築古物件の購入希望者の方の中には、その物件を売り出すことになった理由を尋ねてくる方もいます。

「家を買う」と言うことは、その地域に半永久的に住み続けることになります。買い手側の気持ちとして、隣人との関係や地域特性等、あらゆる心配や不安を抱えているのは当然と言えるでしょう。

とくに築古物件だと「なぜこのタイミングで売りに出すのだろうか?」と変に勘ぐってしまう方も少なくはありません。

「もしかしたら事故物件ではないか?」
「隣人とのトラブルではないか?」
「地域特性的なものなのだろうか?」など、多くのことを考える方もいます。

そういった方達にも安心感をあたえてあげるのは、売り手の当然の義務でしょう。たとえ売却理由がマイナスなことであったとしても、かならず正直に答えてあげてください。

また、売り主は告知義務を負っていることがあるので注意しなければいけません。告知義務とは、買い主が不安を感じてしまうような重大な瑕疵等があるときは、買い主に対して告知をする義務のことを言います。

つまり、「買い主が売却理由を聞いて契約締結に影響をあたえる恐れがあるときは、その事実を告知する義務がある」ということです。

万が一、「ネガティブな情報を伝えてしまうと売却できないのではないか?」と思って、売却理由等を隠していると、その契約を取り消したり損害賠償請求をされたりします。

たとえば、売却を検討している築古物件で殺人事件が発生していたとしましょう。売り手からすれば、この事実を隠しておきたいのが本音です。しかし買い手からすれば、その事実を知っているか否かによって、契約締結の判断に大きな影響をあたえる事実です。

よって、この事実を隠してしまうことによって後に大きなトラブルに発展する恐れがあるため、かならず告知しなければいけません。仮に、売却理由が経済的な理由であっても、できるだけ正直に伝えてあげることで、築古物件の売却が円滑に進むでしょう。

築古物件を売却する際のターゲットはどんな人にすべき?

築古物件は築浅物件や新築物件に比較して、需要が少ない傾向にあります。ある程度売却を目指す客層をイメージし、その客層に合った売却方法を検討しなければ、売れ残り物件になってしまうでしょう。

では、築古物件を売却するときに、どのようなターゲット設定をすれば良いのか?についても簡単にお伝えしようと思います。それぞれ、下記のターゲットごとにお伝えします。

  • 新築戸建てを建築する目的で「土地」を探している人
  • 築古物件を購入してリフォームを検討している人
  • 賃貸物件を想定している人

最後に、築古物件を売却する際のターゲット層についてお伝えします。これからの戦略を練る際の参考にしていただければ幸いです。

新築戸建てを建築するための「土地」を探している人

新築戸建を建築するための「土地」を探している人は、物件の築年数は気にしていません。むしろ、築年数が経過していて古い物件のほうが建物の構造が簡単で、解体費用も安く抑えられるため重宝されるケースも珍しくはありません。

このことからも中には「解体して更地にして売却を目指したほうが良いのか?」と思われる方がいるかもしれません。確かに、買い手側の気持ちになって考えれば、更地のほうが購入しやすいです。

ただ、買い手が見つかっていない状態で更地にしてしまうと、固定資産税が最大6倍になってしまうことは先にお伝えした通りです。やはり、新築戸建てを建築するために土地を探している方をターゲットにするにしても、築古物件は残しておいたほうが良いでしょう。

ちなみに、築古物件の購入希望者が来たときは、解体費用をどちらが負担するのかについてしっかり話し合ってください。買い手側が「解体費用込みの値段かと思っていた」と言う一方で、売り手が「解体費用は別で土地価格の値段だった」という認識の相違によるトラブルが発生します。

建物の規模にもよりますが、解体費用は100万円を超えるのが当たり前です。認識の相違によるトラブル回避や買い手の放出を防ぐためにも、しっかり理解を求める努力もしてください。

築古物件を安く購入してリフォームを検討している方

築古物件を購入してリフォームを検討されている方もいます。最近のリフォーム技術は素晴らしく、新築と同レベルにすることもできるほどです。

実際、建物を取り壊して新たに建て直すよりも、建築費用を安く抑えられるため、低予算で立派な家を購入したい方にはとても重宝されています。新築ほどの自由は効かないですが、ある程度希望通りの間取りの住宅を建てられるため、築古物件の購入希望者は少なくありません。

築古物件を活かしたままリフォームを検討されている方をターゲットにするなら、その物件の良い部分や広さなどをアピールすれば良いでしょう。建て替えを希望している購入希望者とは売却方法が異なるので、そういった部分を意識しながら売却活動に挑んでください。

賃貸物件を想定している人

戸建て・マンション等問わず、賃貸物件として物件を探している方も少なくはありません。とくに最近では、副業として不動産投資を始められる方も多いため、築古物件の需要は年々高くなっている印象です。

賃貸物件として築古物件を購入するメリットは意外と多く、こういった方をターゲットにしたほうが意外と売却できる可能性は高まります。

【築古物件を賃貸物件にするメリット】

  • 利回りが高い
  • 少額資金で始められるため、不動産投資初心者が始めやすい
  • 賃貸物件を探している人は築年数をあまり気にしない
  • 銀行のローンが不動産投資ローンになるため、審査内容が異なり借り入れがしやすい

築古物件を購入して、賃貸物件として貸し出すオーナーは多いです。名の知れた不動産投資家であっても、築古物件をメインにしている方は少なくありません。その理由は上記の通りですが、もっとも注目すべきは利回りの高さです。

不動産投資をされる方は、自分の収益性(利回り)にもっとも注目します。築古物件は、周辺の新築物件や築浅物件と比較して安く購入できるうえに、周辺相場とそこまで大きな開きはない家賃設定が可能であるため、利回りが高くなる傾向にあるのです。

実際、賃貸物件として家賃設定を算出するときは新築か築浅か、築古かによって若干の差はありますが、大きな差はありません。もちろん、設備的な部分で差が発生することはありますが、立地や間取りが同程度であれば大きな開きはないでしょう。

このことを考えると、築古物件の利回りは非常に良く、新築物件と比較しても1.5〜2倍になることも珍しくはありません。

また、賃貸物件に住みたいと考えている方は、築年数よりも家賃や立地、設備等に注目するため、空室対策さえしていれば空室率を抑えられるのも特徴です。もっと言えば、不動産投資をはじめたての資力がない方も、築古物件なら価格が安いため手を出しやすいです。

さらに、築古物件を住宅ローンで普通に売却しようとすれば、資産価値が少ないため融資を渋るのが現実です。しかし、不動産投資ローンはその建物の資産価値もさることながら、もっとも重要視するのは「物件の収益性」です。

築古物件の利回りが高い傾向にあるのは先述のとおりですから、住宅ローンに比べて審査に通りやすく、築古物件を購入しやすい傾向にあるでしょう。

もしあなたが、これから賃貸物件として築古物件を探している方をターゲットにするなら、賃貸用にリフォームして売り出すのも戦略的に有効です。リフォームをしないにしても、賃貸物件にしやすい部分を前面に押し出し、売却活動を進めていけば良いでしょう。

まとめ

今回は、築古物件でも売却はできるのか?売却する際の注意点は?についてお伝えしました。

築古物件は築浅物件や新築物件として、売却しにくいでしょう。しかし、その物件の特性や良いところをアピールし、ターゲットを絞って正しい売り出し方をすれば確実に売却を目指せるでしょう。築古物件であることを理由に諦める必要はありません。

いわゆる築古物件と呼ばれる建物の中には、40年以上前に設計・建築された建物も多く含まれています。このような建物に関しては、旧耐震構造である可能性が高く、売却が難しい傾向にあるでしょう。

必要に応じて耐震工事を行って売り出すなどの対策も検討しなければいけません。売却を検討している築古物件が、戸建て住宅なら物件を売却すると言うよりも、土地を売るつもりで売却活動を行ったほうが良いかもしれません。

戸建て住宅は建築後20年経過すると、その資産価値が0になるケースがほとんどです。とは言っても、更地にして売却をしようとすれば固定資産税が最大で6倍になるので要注意。とのことでした。

「築古物件」と一口に言っても、その物件の特性次第で売り出し方や注意点は大きく異なります。今回お伝えしたことを参考にしながら、築古物件の売却を目指してください。

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