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オーナーチェンジ物件(OC物件)は定期的な賃料収入が手に入る点で収益性の高い不動産ですが、その一方で、管理や修繕に手間がかかる・家賃滞納や強制退去トラブルへの対処が面倒・入居者不足による収益性の低下などのリスクが生じるというデメリットを避けられないもの。年齢的な負担も考慮して、賃貸中のマンション・アパート・ハイツなどを手放すことを検討している所有者も少なくはないでしょう。
もっとも、オーナーチェンジ物件は収益性に注目して取引される傾向が強い投資用不動産であるため、通常の不動産を売却するときとは異なる配慮が必要な点に注意が必要です。
そこで、今回は、オーナーチェンジ物件の売却の流れや売却時の注意点についてわかりやすく解説します。あわせて、オーナーチェンジ物件を高値で売却するコツも紹介するので、最後までご一読ください。
目次
オーナーチェンジ物件の売却の流れ
まずは、オーナーチェンジ物件を売却する際の概略的な流れを解説します(不動産の売却では「不動産仲介業者への依頼」によって行うのが主流な取引方法であるため、媒介という手法による売却の流れを前提とします。なお、不動産買取業者に依頼する場合の流れやメリット・デメリットについては後述)。
オーナーチェンジ物件の売却の流れは次の6段階です。
- 不動産仲介業者にオーナーチェンジ物件の査定依頼を出す
- 不動産仲介業者とオーナーチェンジ物件売却について媒介契約を締結する
- オーナーチェンジ物件の購入希望者と売却交渉を進める
- オーナーチェンジ物件の売買契約を締結する
- オーナーチェンジ物件の引渡し・賃貸借契約の承継
- 入居者への情報提供
それでは、オーナーチェンジ物件の売却の流れについて、それぞれ具体的に見ていきましょう。
1:不動産仲介業者にオーナーチェンジ物件の査定依頼を出す
オーナーチェンジ物件売却に向けて最初にするべきことは、売却活動を依頼する不動産仲介業者を見つける作業です。
ただし、オーナーチェンジ物件は一般不動産とは異なり投資対象として扱われることが多いもの。不動産仲介業者にも得意・不得意があるため、投資用不動産の売却ノウハウが豊富な業者を見つけるのがポイントとなります。
したがって、オーナーチェンジ物件売却の依頼先を決める際には、次の3点に注意をしながら業者選びを進めましょう。
- 不動産一括査定サイトを利用する
- 収益物件の売却に強い不動産業者を選ぶ
- 1社だけではなく複数業者の査定依頼を見比べる
なお、おすすめの不動産一括査定サイト31社を以下のリンク先で紹介しています。得意エリアや業者規模・提携業者数などでお好みのサイトを選択できるようになっているので、この機会にご活用ください。
2:不動産仲介業者とオーナーチェンジ物件売却について媒介契約を締結する
オーナーチェンジ物件の売却活動を依頼する不動産仲介業者が見つかったのなら、手続きを具体的に進めるために、不動産仲介業者との間で媒介契約(仲介契約)を締結します。
不動産媒介契約には次の3種類の類型が用意されているので、所有物件の成約可能性が高まる契約内容を選択しましょう。
- 専属専任媒介契約(契約できる業者数:1社 直接取引:不可)
- 専属専任媒介契約は不動産仲介業者1社にすべての売却活動を依頼する方式のこと。業者が仲介手数料を独占できるので営業活動等に力を入れてくれる可能性が高いが、いわゆる「囲い込み」のリスクがある点に注意が必要。所有者自身に投資用不動産売却のノウハウがなく直接取引の可能性がゼロに近いのなら専任媒介契約よりもおすすめ。
- 専任媒介契約(契約できる業者数:1社 直接取引:可)
- 直接取引の余地を残せる点において専属専任媒介契約と違いがある契約類型。オーナー自身で買い取り先を見つけたいのなら専属専任媒介契約よりも適している。
- 一般媒介契約(契約できる業者数:複数社 直接取引:可)
- 複数の不動産業者に同時依頼できる契約類型。各業者の顧客が売却ターゲットになるので物件が数多くの人の目に触れる反面、業者からすると「どれだけ営業・広告に力を入れても他社に成約をとられるリスク(仲介手数料をもらえないリスク)」があるため、熱心な営業活動を期待しにくいというデメリットが生じる。
特に、オーナーチェンジ物件のような投機対象商品の売却活動をスムーズに進めるためには、営業担当者との細やかなコミュニケーションが重要です。なぜなら、成約希望価格の設定・営業戦略・購入希望者との交渉内容など、常に論理的な思考・説明が求められることが多いからです。
したがって、オーナーチェンジ物件を売却する際には、信頼できる不動産仲介業者・営業担当者を丁寧に見定めたうえで、専属専任媒介契約・専任媒介契約のいずれかを選択する方が賢明だと考えられます(だからこそ、一括査定サイトの厳選・机上査定や訪問査定時の営業担当者の雰囲気をチェックするのが重要となります)。
なお、媒介契約の種類については以下のリンク先で詳しく説明しています。あわせてご一読ください。
3:オーナーチェンジ物件の購入希望者と売却交渉を進める
オーナーチェンジ物件の売却依頼を受けた不動産仲介業者は不動産市場から購入希望者を募ります。不動産の購入希望者が現れた場合には、成約に向けて細かい条件を調整・交渉しなければいけません。
そして、オーナーチェンジ物件の売却交渉時には、特に次の2点について注意が必要です。
- レントロールを準備・開示する
- 内覧には柔軟に対応する
オーナーチェンジ物件のレントロールを準備・開示する
自己居住用物件とは異なり、オーナーチェンジ物件では入居者情報が売却条件を大きく左右することになります。
したがって、売却交渉時にはオーナーチェンジ物件のレントロール(Rent roll)を作成して購入希望者に提示しなければいけません。
レントロールとは、物件の賃借状況一覧表のこと。各戸の賃貸借契約内容等についての詳細な情報が記載されているので、購入希望者は不動産の現状・入居状況・収益性・家賃収入の見込みなどをチェックできます。
レントロールの雛型・書式に決まりはありませんが、次のような内容が記載されるのが一般的です。なお、オーナー自身でレントロールを作成することもできますが、管理会社・不動産仲介業者側に依頼をすれば準備してくれるのでご安心ください。
- 物件の間取り・面積・号室
- 物件の用途(住居・事務所・店舗など)
- 賃料・敷金・礼金・共益費・保証金
- 各契約者の氏名や属性(個人・法人など)
- 賃貸借契約の詳細(契約開始日・契約終了日・更新履歴など)
- 面積あたりの単価・賃料合計・平均単価などの収益性項目
- 戸数の稼働率
- 保証会社や管理会社の情報
- 備考(告知義務・定期借家やフリーレントなどの契約形態など)
- その他特記事項(駐車場・インターネット回線・公共料金契約などについて)
レントロールは購入希望者がもっとも重視する内容といっても過言ではありません。
当然のことながら虚偽記載は法的トラブルを招くものなので厳禁ですが、オーナーチェンジ物件の成約可能性を高めるには魅力的なレントロールを作成するのがポイントになるので、この観点を意識して売却準備活動をするのがおすすめです。詳しくは「2:不動産の入居率を高めて投資価値をアピールする」をご参照ください。
オーナーチェンジ物件の内覧には柔軟に対応する
オーナーチェンジ物件の売却交渉時には、「内覧」の難易度が高まる点に注意しなければいけません。なぜなら、不動産オーナーとはいえ賃借人が入居中の室内には勝手に立ち入ることができないからです。
一般の居住用不動産であれば、購入希望者からの内覧希望に対応するのは難しくありません。むしろ、内覧のタイミングでハウスクリーニング・インテリアなどを充実させることによって物件の魅力をアピールできる機会になるので、内覧は成約可能性を高めるための絶好のチャンスとなります。
これに対して、入居者が存在する部屋は賃借人のプライベート空間。つまり、賃借人の許可がなければ内覧に応じることができないということです(もちろん、賃借人に立ち入り同意を求めること自体は禁止されていませんが、賃借人本人とは関係性が低い作業に巻き込まれることに抵抗感を抱く人は少なくないという現実的な問題は覚えておきましょう)。
したがって、オーナーチェンジ物件売却時の内覧対応については、次の3つのポイントを意識しましょう。
- 空室の内覧希望には積極的に応じる
- 入居中の居室のイメージ・雰囲気を伝えるために事前に写真などを準備しておく
- 内装や消耗箇所などの質問にできるだけ正確に答えられるように事前調査を怠らない
投資用不動産を売却する際には、物件自体の客観的な魅力だけではなく「所有者の誠実さ」を伝えることも重要なステップです。
100%の内覧が不可能だからこそ、購入希望者の満足・納得のためには何が必要かを具体的にイメージしましょう。
4:オーナーチェンジ物件の売買契約を締結する
購入希望者と諸条件について合意が形成された場合には、売主・買主間で売買契約を締結します。
不動産の売買契約書に記載される代表的な項目は次の通りです。
- 売買対象不動産の表示
- 売買代金・手付金・支払日・支払い方法
- 所有権移転時期・引渡日
- 公租公課の分担
- ローン特約
- 契約解除に関する事由(手付解除・違約解除・その他債務不履行を含む)
- 物件引渡し前の毀損・滅失に関する危険負担
- 抵当権の抹消に関する条項
- 契約不適合責任に関する事由
- 付帯設備の引渡しについて
- 印紙の貼付
売買契約書は不動産仲介業者(宅地建物取引主任者・司法書士・弁護士等のアドバイス付き)が作成してくれますが、かならず売主自身も内容を精査するようにしてください。
たとえば、売主側の事情で契約を解除・取り消すことになると違約金が発生することもありますし、引渡し前に不動産が損傷した場合に修繕費等を負担しなければいけないこともあります。
「売買契約を締結したから手続きは完了」と安心するのではなく、売買契約の締結によって新たに義務・責任が発生するということを覚えておきましょう。
5:オーナーチェンジ物件の引渡し・賃貸借契約の承継
オーナーチェンジ物件を売却すると、「所有権が売主から買主に移転する」という権利関係の移転と同時に、「物件の賃貸借契約の賃貸人の地位が売主から買主に移転する」という権利・義務関係の承継が行われます(これが、賃貸中の不動産を売却する行為が「オーナーチェンジ(オーナーをチェンジする)」物件と呼ばれる理由です)。
厳密に言えば、売買契約の締結・代金の支払い・所有権の移転・抵当権抹消登記の手続きを経た後、新オーナー名義の所有権移転登記手続きが終了したタイミングで賃貸借契約も当然に移転される(対抗力を備える)という流れです。
オーナーチェンジ物件の売却で賃貸借関係が承継されるのは借地借家法が根拠
賃借人の側からすると、賃貸借契約を締結した相手が勝手に変更されることに不安を覚える人もいるはずです。
ただ、賃貸中の不動産の貸主が変更になった場合に自動で権利・義務関係が承継されることについては、借地借家法という法律に規定があります。
(建物賃貸借の対抗力)
第三十一条 建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。
このように、借地借家法第31条の規定を根拠として、賃貸借契約は旧オーナーから新オーナーに引き継がれることになります。
オーナーチェンジ物件の売却で引き継がれる権利・義務関係
オーナーチェンジ物件を売却すると、旧オーナー(売主)から新オーナー(買主)に次の権利・義務が承継されます。
- オーナーチェンジ物件の売却で貸主が引き継ぐ権利
-
- 賃料を受け取る権利
- 滞納時に利息・遅延損害金等を請求する権利
- 退去時に不動産の引渡しを受ける権利
- 退去時に不動産の原状回復を請求する権利(経年劣化によるものを除く)
- 債務不履行発生時に契約を解除する権利
- オーナーチェンジ物件の売却で貸主が引き継ぐ義務
-
- 契約期間中は不動産を使用させる義務
- 不動産が毀損した場合に修繕等を実施する義務(借主の故意・過失を除く)
- 退去時に敷金を返還する義務
つまり、オーナーチェンジ物件を売却したからといって賃貸借契約の内容が変更されるわけではないということです。新オーナーは従来の賃貸借契約の内容に拘束されるため、賃貸人としての役割を果たす必要があります。
だからこそ、オーナーチェンジ物件の売却時には、現在の賃貸借契約の状況等について買主側に情報を提供する必要があるということです。不動産仲介業者のアドバイスを参考にしながら、買主側の質問などには真摯に答えるようにしてください。
6:オーナーチェンジ物件入居者への情報提供
オーナーチェンジ物件の売却手続きがすべて終了したら、入居者(賃借人)に「賃貸人が変更した」という事実を伝える必要があります。
ほとんどのケースでは管理会社が通知書を郵送するため売主側で特段の事務処理を行う必要はありませんが、大家さん自身が管理業務等をひとりで行っている場合には、次の内容を記載した通知書をすべての賃借人に周知しましょう。
- 賃貸人が変更したこと
- 賃貸人の情報
- 新しい管理会社の情報
- 賃貸借契約の内容の確認
- 賃料の支払い方法(口座情報などの振込先)
オーナーチェンジ物件を高値売却するコツは3つ
投資用不動産として特殊な売却ノウハウが求められるオーナーチェンジ物件ですが、少しでも高値で売却したいと考えるのが売主側の心理のはずです。
オーナーチェンジ物件の高値売却を目指す場合には、次の3つのポイントを押さえましょう。
- 不動産仲介業者の査定額が適正かをチェックする
- 不動産の入居率を高めて投資価値をアピールする
- 集客力のある不動産仲介業者に依頼する
それでは、オーナーチェンジ物件を高値売却する3つのコツについて、それぞれ具体的に見ていきましょう。
1:不動産仲介業者の査定額が適正かをチェックする
オーナーチェンジ物件を高値で売却するためには、複数業者の査定額を見比べたうえで適正な価格を提示してくれた不動産仲介業者を選択するのがポイントです。
そもそも、オーナーチェンジ物件の売却価格を決定するためには一般向け不動産とは異なる評価基準で算定する必要があるということを押さえましょう(なぜなら、不動産を手にする目的は「居住すること」ではなく「家賃収入を手にすること」だからです)。
具体的には、収益物件の売却価格を将来収益に注目して算出する「収益還元法」と呼ばれる計算方式のことで、次の2つの考え方に基づきます。
- 直接還元法
- 直接還元法とは、【一定期間の純利益(総収入から経費を差し引いた金額) ÷ 還元利回り】の公式で投資用不動産の現在価値を見積もる計算方法のこと。たとえば、年間収益500万円、年間総経費が200万円(維持費・固定資産税・空室損失費等)、還元利回り5%のオーナーチェンジ物件の場合には、【(500万円 – 200万円) ÷ 5% = 6,000万円】となる。
- DCF法(Discounted Cash Flow)
- 不動産の保有期間中の総収益と売却益を基準に投資用不動産の現在価値を割り出す計算方法のこと。Discounted Cash Flowとは、「値引きされたキャッシュ・フロー」を意味します。具体的には、「投資期間ごとに得られる想定年間収益」と「不動産を手放すときの想定売却価格」を合算したものがオーナーチェンジ物件の現在価格となる。実際の計算では、空室率・割引率・投資期間をベースに複雑な計算をしなければいけない。不動産投資信託実務ではDCF法が原則ツールとして採用されている。
ただし、直接還元法・DCF法のいずれで投資用不動産の査定額を導き出すとしても、空室損失費や入居率などの不確定要素に対する確度の高い分析が前提となります。
したがって、複数の不動産仲介業者の査定結果を見比べたうえで、もっとも論理的な見積もりを提示してくれる不動産仲介業者を選ぶようにしましょう。

不動産の現在価値を算出する手法は、原価法・取引事例比較法・収益還元法の3種類に大別されます。そして、この3分類のうちの1つである収益還元法が、さらに直接還元法・DCF法に区分されるという位置付けです。オーナーチェンジ物件売却のノウハウ豊富な不動産仲介業者は複数の算定基準・多様な前提条件を組み合わせたうえで自社独自の査定額を導き出すため、各業者の査定結果にバラつきが生じることになります。
高い査定額を出してくれる不動産仲介業者が良いというわけではない
「できるだけ高額の見積もりを提示してくれる不動産仲介業者と契約したい」と売主が考えるのは当然ですが、「高い査定額を提示してくれるから優良業者だ」と安易に判断してはいけません。
なぜなら、論理的な根拠なく高額見積もりを出す不動産仲介業者は悪徳業者のおそれがあるからです。
そもそも、居住用物件をメインに扱う不動産仲介業者の数は多いので、悪質な不動産業者は口コミ・評判などをチェックすることで事前に回避できますし、このような悪質業者は競争原理に基づいて廃業に追いやられます。
これに対して、投資用不動産を扱う業者数自体が相対的に少ないこと・投資用不動産は客観的に適正価格を判断しにくいため業者側の不正がバレにくいことなどから、オーナーチェンジ物件の売却を扱う業者のなかには比較的多くの悪徳業者が存在する点に注意が必要です。
悪質な不動産仲介業者と契約をしてしまうと、営業活動にまったく力を入れてくれない・不当な手数料を搾取される・不必要なリフォーム工事等を強要されるリスクが生じるため、売主側が損害を被りかねません。
したがって、オーナーチェンジ物件の売却依頼先を選ぶときには、見積もり価格だけに注目するのではなく、売主自身でも相場に照らした成約価格を算出・イメージしておくことが重要だと考えられます。
2:不動産の入居率を高めて投資価値をアピールする
オーナーチェンジ物件をできるだけ好条件で売却するためには、購入希望者が注目するレントロールの内容を充実させて投資価値を高めるのが重要です。
具体的には次の対策が考えられるので、売却前から入念に準備を進めましょう。
- 契約更新時に発生する更新料を無料にして入居率を維持する
- 家賃・敷金・礼金などの初期費用を見直して入居者数を増やす
- 駅近・インターネット無料などのアピールポイントで物件を差別化して入居者を募る
- 入居者とのトラブル履歴などを詳細に記載して購入希望者の不安を払拭する
入居率を高めることはオーナーチェンジ物件の利回りを高めることに直結します。
売主側として工夫できるポイントは少なくないので、売却活動をスタートする前に計画的に入居率のアップを目指しましょう。
3:集客力のある不動産仲介業者に依頼する
オーナーチェンジ物件の売却依頼をする不動産仲介業者を選ぶときには、自己居住用物件とは異なる指針を頼る必要があります。
たとえば、あくまでも傾向のひとつではありますが、大手不動産仲介業者は自己居住用物件を中核に業務を組み立てているので、オーナーチェンジ物件の売却依頼を出すのはおすすめできません。
- オーナーチェンジ物件は両手取引が難しいので仲介手数料を得にくい
- オーナーチェンジ物件売却には専門的なノウハウが必要なので営業手法に画一的なルールを定めにくい
- 営業担当者がノルマを達成するには手堅く自己居住用物件を回した方が効率が良い
- オーナーチェンジ物件売却時のローン査定は住宅ローンよりも厳しいので成約可能性が低い
- オーナーチェンジ物件売却時は大手不動産業者との繋がりが希薄な地銀・信用金庫を利用することが多い
不動産のような高額資産を売却するとなると、大手不動産業者のブランド力・信用にすがりたくなる気持ちは当然のことです。
ただ、オーナーチェンジ物件については大手不動産仲介業者が洗練されたノウハウを有しているとは限りませんし、むしろ、地域密着型の中小不動産仲介業者の方がエリアの実態に精通している可能性も否定できません。
したがって、オーナーチェンジ物件の売却依頼をする不動産仲介業者を選ぶ際には、知名度やブランド力を重視するのではなく、各不動産業者のサービス内容を重視して、集客力がある業者を選ぶようにしましょう。
オーナーチェンジ物件売却時の注意点は6つ
ここまで紹介したように、オーナーチェンジ物件の売却は特殊です。
したがって、オーナーチェンジ物件売却時には次の6つの注意点を踏まえて売却活動を進めましょう。
- あくまでも投資用不動産として売却する
- 提示する売り出し価格はバランス感を重視する
- 不動産独自の魅力をアピールする
- 売れ残るリスクを考慮してスケジュールを組む
- 不動産買取業者への依頼も視野に入れる
- 物件売却時に発生する税金にも注意する
それでは、オーナーチェンジ物件売却時の6つの注意点について、それぞれ具体的に見ていきましょう。
1:原則として投資用不動産として売却する
ほとんどのケースにおいて、オーナーチェンジ物件は投資物件として売却しなければいけません。
なぜなら、一般用不動産として売却するには次の2点で無理が生じるからです。
- 物件内に居住者が存在するために内覧対応できない
- 低金利の住宅ローン審査に通りにくい
ただし、マンション一室の区分所有権だけを有しており、かつ、現在入居中の賃借人との賃貸借契約が切れるような例外的な場合には、一般向け不動産として売却することも可能です。
なお、一般的不動産としての売却を検討する場合には、不動産市場における相場から値付けをする・一般市場で売却しやすいようにリフォームや修繕工事を実施するなどの工夫が必要になるので、不動産仲介業者に相談して丁寧な売却活動を心がけましょう。
2:提示するオーナーチェンジ物件の売り出し価格はバランス感を重視する
投資用物件であるオーナーチェンジ物件は収益性が重視されるため、居住用不動産の売却時ほど築年数・駅からの距離・構造・エリアの雰囲気などは考慮されません(考慮されるとしても、入居率などの収益性判断に影響する意味合いに限られます)。
したがって、不動産物件自体がどれだけ一般市場で魅力的であったとしても、居住用不動産として売却するときよりも低廉な価格設定にならざるを得ないという実情を受け入れる必要があります。
たとえば、「近隣の類似物件と似た価格で売却したい」と売主がどれだけ希望したとしても、「オーナーチェンジ物件」というカテゴリーで売却する以上は無関係です。あくまでも、収益性という判断基準が最優先されます。
「駅から近い」「学校から近いからファミリー向けに向いている」などの物件の事情は、あくまでも入居率を高めるという目的のために活用する要素だと覚えておきましょう。
3:オーナーチェンジ物件独自の魅力をアピールする
「オーナーチェンジ物件の成約可能性を左右するのは”収益性”」だということは、一般不動産市場で魅力的ではない物件でも独自条件次第では高値成約が可能だということも意味します。
たとえば、競合物件のないエリアで賃貸入居希望者を独占できるような状況であれば、築古・木造などの条件でも入居率を高めることができるはず。維持費に比べて家賃をアップすることも難しくないため、売主側の工夫次第でどれだけでも収益性を高められるでしょう。つまり、このような物件は「投資用不動産」というカテゴリーで売却するのなら”優良物件”だと考えられます。
また、現在入居率が低く実質利回りが悪い状況でも、近い将来近隣にショッピングモールが誘致される・都市開発計画が進行中などの事情が存在すれば、今後の入居率アップが期待できるでしょう。つまり、現在収益性が低くても成長率を考慮すれば高値成約を期待できるということを意味します。
このように、投資用不動産売却の鍵を握る「収益性」とは、現在の利回りだけではなく数年先までの事情も盛り込める幅の広い概念です。所有物件が抱える特有の事情を上手くアピールできれば、比較的高額での売却も視野に入れることは不可能ではないでしょう。
4:売れ残るリスクを考慮してオーナーチェンジ物件売却のスケジュールを組む
オーナーチェンジ物件は条件に合致する投資家との出会いがなければ成約が実現しないというリスクがあるものです。また、仮に購入希望者が現れたとしても、売主・買主間で条件合意が得られなければ意味がありません。
つまり、オーナーチェンジ物件の投資用不動産については、売れ残るリスクをあらかじめ理解したうえで売却活動のスケジュールを立てておくのがポイントです。
たとえば、建物の修繕や設備品の交換のタイミングは、賃料収入総額を加味したうえで慎重に判断するべきでしょう。
5:買取業者への依頼も視野に入れる
オーナーチェンジ物件の売却を検討している方、特に、すでに数ヶ月間売りに出しているのに購入希望者との交渉の場さえもつことができない場合には、不動産買取業者への依頼を視野に入れることをおすすめします。
そもそも、オーナーチェンジ物件は投資価値によって売れ行きが決まるもの。入居率や数年後の投下費用(修繕コスト等)を考慮すると、一般不動産市場では購入希望者が見つからないということも少なくはありません。
ここまで紹介したように、希望時期に売却が実現しなければ維持費等の負担も発生しますし、売主側の事情次第では「早期の売却実現」が最優先課題になることもあるでしょう。そのときにおすすめの方法が、不動産買取業者への依頼です。
不動産の買取とは、不動産業者自身が買主としてオーナーチェンジ物件を引き受けてくれるという取引手法のこと。仲介業者に依頼をすると一般の購入希望者が見つかるまで不動産の処遇が決まらないという状況に追い込まれますが、不動産買取業者に依頼をすればすぐに売買契約が成立するので、「売却したいのに買主が見つからない」という不条理な事態を回避できます(すぐに現金化できる点も魅力的です)。
ただし、不動産買取業者が提示する査定価格は相場価格よりも割安になるのが一般的(特に、オーナーチェンジ物件の場合には現行利回りベースで査定される点に注意)。「できるだけ高値で売却したい」と希望するオーナーには不向きだという点を押さえておきましょう。
なお、不動産買取業者については以下のリンク先で詳しく解説しています。あわせてご一読ください。

不動産買取業者は、老朽化が進んだ一棟アパートや空室率の高いオーナーチェンジ物件でも買取をしてくれることがほとんどです。ただし、旧耐震基準時代の建物や物件構造が法定耐用年数を超えたものなど、金融機関からの融資が下りないような物件については買い取ってもらえない可能性も。いずれにしても、買取業者に査定依頼を出すこと自体にデメリットはないので、物件の処遇についてお悩みのオーナーはどうぞお気軽にお問い合わせください。
6:オーナーチェンジ物件売却にかかる税金にも注意が必要
オーナーチェンジ物件を売却すると収益が発生しますが、売却益(譲渡所得)に対しては税金が発生するため、確定申告をする必要があります。
【収入金額 – (取得費 + 譲渡費用) – 特別控除額 = 課税譲渡所得金額】
なお、居住用不動産とは異なり、オーナーチェンジ物件ではマイホーム売却に係る3,000万円控除制度などの特則を活用できません。
そして、不動産売却の場合には、次のように不動産の所有期間に応じて譲渡所得税の算定税率が異なる点に注意が必要です。
所有期間 | 譲渡所得税率 | 住民税率 | |
---|---|---|---|
長期譲渡所得 | 5年を超える | 15% | 5% |
短期譲渡所得 | 5年以内 | 30% | 9% |
※なお、令和19年までは”復興特別所得税”として各年分の基準所得税額の2.1%を別途申告・納付
参照:No.3208 長期譲渡所得の税額の計算 – 国税庁HP
参照:No.3211 短期譲渡所得の税額の計算 – 国税庁HP
つまり、オーナーチェンジ物件を売却する際には、取得日から5年以内なら売却益の39%の税金が発生するということ。5年超の所有期間があるケースと比べると、高額の税金を負担しなければいけません。
したがって、税制上の不利益を避けたいのなら、オーナーチェンジ物件をの所有期間が5年を超えたタイミングで売却を検討するのがおすすめです(もちろん、所有期間が伸びるほど物件自体の価値が下落するリスクは避けられませんが、収益性が主に重視される取引なので所有期間の長さは成約条件にマイナスに作用するとは限りません)。
オーナーチェンジ物件の売却は実績豊富な不動産業者に依頼しよう
投機的側面の強いオーナーチェンジ物件を売却するには、信頼できる不動産仲介業者を見つけるのが最優先課題です。
流動的な市場動向に精通した不動産仲介業者に依頼をすれば、オーナーチェンジ物件を取得するメリット(安定した家賃収入を得られる・物件取得時から入居者がいるので空室リスクを回避できるなど)を購入希望者に対して説得的にアピールして成約可能性を高めてくれるでしょう。
もっとも、一般不動産市場から条件に見合った購入希望者を見つけるのは簡単ではなく、運に恵まれなければいつまでも収益物件の所有を強いられるケースも少なくありません。
したがって、オーナーチェンジ物件を手放す予定の所有者は、不動産買取業者への依頼も視野に入れながら柔軟な姿勢で売却手続きを進めるようにしてください。
2020年4月1日の改正民法施行のタイミングで賃貸借契約のルールが見直されました。代表的な変更点は、賃貸物の修繕に関する要件の見直し・賃貸不動産が譲渡された場合のルールの明確化・賃借人の原状回復義務及び収去義務等の明確化・ 敷金に関するルールの明確化の4点です。オーナーチェンジ物件売却時には買主側から法律問題の質問をされるケースも少なくはないので、法的知見にも精通した不動産仲介業者のアドバイスが不可欠だと考えられます。