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「再建築不可物件」。普通に生きていれば一度も耳にする事なく人生を終える人もいるでしょう。
再建築不可物件とは、読んだ通りで、「再び建築する事が不可能な物件(土地)」の事を指します。しかし、物件というくらいですから、既にそこに建物が建っている事がほとんどです。なのに、再建築出来ない。何故なの・・・?という気持ちになってしまうのも無理ないでしょう。
ここでは、再建築不可物件を主に扱う不動産買取業者に勤務している筆者が、再建築不可物件について解説していきます。
再建築不可物件ってどんな物件?
まず始めに、再建築不可物件とはどんな物件なのかを解説していきましょう。冒頭で説明した通りで、「再び建築する事が不可能な物件(土地)」の事を指します。
既に土地の上に建物が立っている状態なのに、地震や台風、火事などの災害にあって全壊してしまった場合、その土地には改めて建物を建てる事が出来ません。建物を建てられないとなると、極端に活用方法が限られてしまう上に、土地を所有しているのですから固定資産税の支払い義務は生じます。つまり、所有リスクの高い土地です。
再建築不可物件の条件
まず初めに、具体的に「再建築不可物件」となってしまう条件を確認していきましょう。土地や建物を購入する際、当該物件が「再建築不可」である場合は告知義務が発生します。ですので、知らずに購入してしまったというケースは(ほぼ)ありえないのですが、条件や定義を知っておく事は大切です。
1.接道義務を満たしていない物件

接道義務を満たしていない物件
現行の日本の建築基準法では、「建築物の敷地が道路に2メートル以上接していなければならない」と義務付けられています。(建築基準法第43条)
・建築物の敷地は、原則として4m以上の幅員の道路に2m以上接していなければならない。
・ただし、次の基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものは、上記の接道義務を満たさない敷地にも建築することができる。(施行規則第10条の2の2)
都市計画制度上の「都市計画区域」と「純都市計画区域」でのみ義務付けられている規定です。それ以外の区域では接道義務はありませんが、人が居住可能なエリアはほぼ全て都市計画区域という認識で問題ないでしょう。
この接道義務は何の為にあるのかというと、地震や火事などの災害時の避難経路の確保や、消防車や救急車などの緊急車両が通行する経路を確保する事が目的とされています。もしも道路に全く接していない敷地の場合、その土地に辿り着くためには、他所有者の土地を通行しなければ辿り着けない事になってしまいます。
全て国民の安全を守る為に必要な義務と言えるでしょう。

築年数が古い建物が沢山連なっている地域では「ここ車通れないんじゃないの?」と思ってしまうような道が沢山ありますよね。そんな所で火事が起きてしまったら、消防車が辿り着けず延々と炎が燃え広がっていってしまいます。そう考えると、元々持っていた土地が再建築不可と指定され価値が下がって辛い人もいるとは思いますが、意義のある法改正だと言えるのではないでしょうか。
2.接道している道路が建築基準法上の道路ではない
市街化調整区域や都市計画区域で家を新築する場合、建築許可を得なければなりません。その際に、当該地が「建築基準法上の道路」に接道していなければ、再建築不可物件となります。
では、「建築基準法上の道路」とは何を指しているのでしょうか。
先ほどお伝えした、建築基準法の第42条に、明確に「道路」の定義が定められています。
条文をそのまま読んでも理解するのは難しいと思うので、簡単に意訳して解説しましょう。
建築基準法上では、道路は「道路法上の道路で、幅員4m以上のもの」と定義されています。また、例外として幅員4m以下のものでも、「定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの」については、道路として認めるともしています。(これを但し書き道路と言います)
つまり、接道している道路の幅員が4m以下であり、かつただし道路でもない場合、「建築基準法上の道路に面していない」という事になります。そういった物件(土地)は再建築不可物件となります。
なぜ再建築不可物件が存在するの?
ここまでの解説で、再建築不可物件の定義はご確認頂けたと思います。では、何故そんな物件が存在するのでしょうか?
それは、建築基準法が整備されるよりもずっと前から土地や建物が存在しているからです。
建築基準法が施行されたのは、昭和25年11月23日。「国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低基準を定めた法律」です。ちなみに大正8年に建築基準法の前身である市街地建築物法が施行されています。
それよりもずっと前から日本の人々は土地を所有し、建築物を建て続けてきましたが、当時は救急車や消防車が通行出来る事を前提とせず、人が通れれば問題ないという認識でした。
時代の変化とともに、法律は改正し続けていくものですので、今後も建築基準法は改正されていくでしょう。ですので、現時点では再建築可能物件でも、今後再建築不可物件となる土地が出てくる可能性もある訳です。

再建築可能だった土地が、法の改正によって再建築出来ない土地になってしまう。そんな状況になったらたまったものではありませんが、法治国家である為従わざる得ないんですね。
再建築不可物件はリスクが高く、物件としての価値が下がる
再建築不可物件の概要はここまでで理解出来たと思いますが、ここからは再建築不可物件を所有し続ける事のリスクについて解説していきましょう。
地震や火事、台風などの災害で全壊した場合、新しい建物を建てられない
再建築不可物件は、今までの説明で分かる通り「再建築する事が出来ない土地」です。という事は、地震や火事、台風などの未曽有の災害で建物自体が全壊してしまった場合、新しい建物を建てる事が出来なくなります。
つまり、建物を建てられず、更地の状態で何も出来ない土地を所有し続けるという事になります。固定資産税を払い続ける必要があるという事です。
再建築不可物件は固定資産税評価額が一般の不動産と比べると低くはなりますが、何の活用手段もない土地です。それに固定資産税を払い続けるのも意味のない話です。
大規模なリフォームが出来ない
再建築不可物件は「再び建築する事が出来ない」物件ですが、となると、「リフォームし続けて建物を崩さないようにすればいつまでも維持する事が出来るんじゃないの?」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、再建築不可物件は建築確認申請が通りませんので、大規模なリフォームをする事が出来ません。
建築確認申請が必要となる大規模なリフォームとは以下の通りです。
- 増築(建て増し)
- 現状の建物面積に対して、延べ床面積を増やすリフォーム工事の事。2階建てを3階建てにしたり、敷地内に新たな構造物を新築したりする事も増築です。「10平方メートル未満であれば確認申請は不要」と言われていますが、防火地域、もしくは準防火地域に指定されている地域は必ず建築確認申請が必要です。(東京都内は申請必須です)
- 大規模な修繕、模様替え
- 建築物の主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根または階段)の一種以上を、過半数(1/2)にわたり修繕、模様替えをする場合には建築確認申請が必要です。
となっているので、建物全体の外壁塗装であったり、建物の構造が変わってしまうような組み換え工事をする事が出来ません。
ただ、「大規模な」と書いてある通りですので、小規模なリフォームをする事は出来るという認識は間違っていません。建築確認申請が不要な4号建築物(木造2階建てで延べ面積が500m²以下)や過半数以下の修繕や模様替えはOKという理屈にはなります。

再建築不可物件に居住している人にとっては、完全に住めない状態になってしまったら家を失ってしまう事になります。いつまでもそこに住み続けたいのであれば、小規模なリフォームをコツコツと積み重ねていくのが良いという事にはなりますね。
再建築不可物件は売却するのが困難
ここまでを読んで、再建地不可物件はどんな物件なのか?ある程度は理解出来たと思います。しっかりと理解出来ているのであれば、「再建築不可物件は価値が低い物件なんじゃないの?」と思うはずですが、それは正解です。接道義務を満たしている普通の物件よりも、売却するのが困難なんです。
考えれば分かる事ではあるのですが、改めて、再建築不可物件を売却するのが困難な理由について解説していきましょう。
持ってるだけでリスクなので、買い手が付きにくい
まず第一に、上でも触れている通り、再建築不可物件は所有しているだけである程度のリスクを負っています。
- 万が一、未曽有の大災害が来てしまって建物が倒壊した場合、そこで建物を建てる事が出来ません
- もしも建物に大規模な修繕や模様替えをしたくなっても出来ません
こう言われた物件を、未来を託してマイホームとして購入する人はなかなかいませんよね・・・。ですので、再建築不可物件を売却するのがとても困難と言われています。
それでも、再建築不可物件は接道義務満たしている普通の不動産よりも割安で購入出来ますので、ある程度リスクを考えた上で購入する投資家や不動産買取業者も存在します。賃貸に出す事を前提とした投資目的であったり、後述する「再建築不可物件を建築可能物件に仕上げて」価値を高める業者が存在するのです。
住宅ローンが通りにくい
再建築不可物件は価値が低い上に所有リスクがある為、物件の担保価値が低く、住宅ローンが非常に通りにくいです。
もちろん、金額によってはローンが通る可能性も0ではありませんが、ハイリスクなので金利は高く設定されてしまいますし、頭金も高めに設定される可能性が高いのです。
つまり、再建築不可物件を売却したい時は、現金で購入する事を前提とした価格設定が必要となります。高めに設定した上で、購入希望者が出たとしても、融資を通せなく断念というケースも非常に多いんです。
「再建築不可物件」は「建築可能物件」にする事が出来る
ここまで、再建築不可物件の概要とリスクを解説してきましたが、実は再建築不可物件には物件価値をグーンと高められる可能性を秘めているんです。
それは、「再建築不可物件」は「建築可能物件」にする事が出来るからです。その理由を解説してきましょう。
セットバックして接道の幅員を広くする
先ほど、「建築物の敷地は、原則として4m以上の幅員の道路に2m以上接していなければならない。」と述べました。
これはどちらも満たしていなければならないのですが、2m以上接してはいるが、接道している道路の幅員が4m未満の敷地は良くあります。そういった場合、自分の敷地を提供し、道路とする事を「セットバック(後退)」と言います。
提供とは書いていますが、行政のものになる訳ではなく、あくまで敷地はその土地の所有者のものです。「行政に貸している」っていう感覚が近いです。
セットバックをした分は固定資産税の支払いを免除する事が出来ますが、申請をする必要があります。各市区町村役場で「固定資産税・都市計画税非課税申告書」を記入の上ご提出しましょう。
隣地を購入して建築可能にする
再建築不可物件の中には、360度建物に囲まれている土地があります。(囲まれている方を袋地、囲んでいる方を囲繞地と言います)
周りの囲繞地が接道義務を果たしている場合、その土地を購入してしまえば、袋地が再建可能物件になるんです。
まとめ
ここでは再建築不可物件について詳しく解説してきました。
実需として居住目的で再建築不可物件を購入するという人は少ないと思いますが、当記事で解説している通り、周辺相場よりも割安で物件を購入出来る為、投資用として購入する投資家も増えてきてはいます。リスクがある事は解説している通りなので、上級者向けではありますが、リスクを許容した上で挑戦してみるのは悪くないでしょう。
今から物件を購入する場合、再建築不可物件である説明は必ずされますが、実家を相続していざ売却しようと思った時に初めて再建築不可物件だと気付くケースも多いです。再建築不可物件とはどういうもので、売却する際にはどんな点に気を付ければ良いのか?解説していきましょう。